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フェムケアの謎!セックスをしない&する機会がない人は、腟萎縮を放置してもいいの?GSM対策についても解説します

腟の萎縮は、「セックスのとき、痛くて挿入できなかった!」という体験があって初めてわかるもの。では、セックスをしていない人はどうすれば? 自分の腟の状態がわからず、放置しているとどんな不具合が起こるの?…etc. 人によってわからないことも多い「フェムケアのそもそも」。富永先生がすっきり、整理&解決してくれました!

セックスをしない&する機会がない人は、
「腟萎縮していても、放置でいいのか?」問題

OurAge読者の皆さん、こんにちは。富永ペインクリニック院長、富永喜代でございます。

 

先日読者の方から、こんなご質問をいただきましたのでご紹介しますね。

「先生のクリニックの患者さんって、“セックスをしたら痛くて挿入できず。腟萎縮を治療をして!”という人たちばかりですよね?

でも私にはパートナーがおらず、長い間セックスレスです。なので自分の腟が萎縮しているのかどうか、知る由もありません。

そういう人はこの先、“下の問題”にどんなことが起こってしまうのでしょう?

私が今からすべきことは何ですか?」

 

 

…なるほど。つまりこの方は、自分はこの先、セックスをするかしないかよくわからないうえに、自分の腟もどうなっているのかよくわからない。

「いったい何にどう備えていれば、将来的な下の問題の不安を払拭できるのか、教えて〜!」ということやね。はい、承知いたしました。

 

確かに私のクリニックに来る患者さんは、自分に何が起きとるのか、わかっている人たちばかり。

でもその手前にいる、ご相談者さんのような人はきっと、潜在的にもたくさんおるのだろうな〜と、改めて思った次第です。

 

そこで今回は、言葉だけが一人歩きをしているフェムケアについて、いったん整理して、皆さんと共有したいと思います。

今現在、あなたはどのゾーンにいるのか。またどのゾーンに入ると予防が必要なのか。自分の状況を知るうえでの、ひとつの目安にしてくださいませね。

 

フェムケアの「そもそも」は、
3つの分野の症状のGSM対策のため

2014年に新たな概念となった「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」という病名は、OurAge読者の皆さんなら、ご存じよね。

これは閉経などにより、女性ホルモンの低下が原因で起こる疾患のこと。

以前は「老人性腟炎」と呼ばれていました(あんまりな病名ですけども…)。

で、このGSMの症状はというと、次の3つに分類されるのです。

 

①おもに泌尿器科系に該当する症状…尿もれ、尿失禁、頻尿など
②おもに婦人科系に該当する症状…外性器のかゆみ、におい、ヒリヒリを伴う灼熱感
③おもに性交痛外来に該当する症状…腟萎縮、性交痛

 

更年期は必ずやってくるけれども、「更年期障害」「更年期症状」が出るのは、女性の2人に1人といわれています。

年を重ねればみんな、腟まわりは劣化&老化していく。そういう中で、GSMにはなっとるんやけんども、症状が出る人は2人に1人。

さらにその中でも、婦人科の領域で症状が出てくるんか、泌尿器科の領域に出てくるんかは、その人の状況次第…というわけ。

 

GSMを細かく分類すると、このようになっとる。

だから「ずっとセックスをしていたい」という人にとっては、③は超重要事項よね。

でも、「私はしたくないので、セックスしません」という人にとっては特に関係ないし、「ケアが大事!」なんてやいやい言われても、別に心に響きませんよね。
けんど。

「③は重要ではない」という人にとっても、①と②は、どんな女性にも起こりうるリスクなんよ。なので、そこを予防するためのフェムケア、というふうに考えていただけるとわかりやすいのではないかしら?
この先、するかしないかわからないセックスを目的にしなくてもいいけれど、①と②のような「下の問題トラブル」から解放されるには、正しい知識でフェムケアをしておくのが大事なんです。はい、ここまで、大丈夫でしょうか?

 

 

腟まわりの保湿マッサージと、
おへそから下の筋肉を鍛える運動を!

さて。じゃあさらに、「日常レベルでは、どんなことに気をつけていたらGSMの予防になるの?」という本題に移りましょうか。

GSMの症状が出る背景には、出産経験の有無、体型や体質の違いもあるんやけんどね。そういった中でもすべての人共通に提唱したいのは、この3つ!

「運動不足を避ける」

「喫煙習慣をやめる」

「腟まわりのマッサージを習慣にする」

 

 

「腟まわりのマッサージ」については、おもに②と③の予防や改善に効果があるので、あとから図解説明を参考にしていただくとして。その前にまず、次のデータを見ていただきたいんよ。

 

 

これはね。私が「第30回日本性機能学会西部総会」で発表した、研究実験の結果なんよ。

 

26〜56歳までの13人の女性に8週間、女性ホルモンであるエストロゲンの有用成分エストラジオールを配合したオイルをデリケートゾーンに塗布して、腟まわりのマッサージを行ってもらったんです。

 

このデータについて、私が「興味深い」と思っているポイントとは何か?

それは、「かゆみやにおい、性交痛は、更年期でエストロゲンの減少が引き金となって起こる症状だから、エストラジオールを配合したオイルマッサージ習慣で減少しているのね。一方で、腟の緩みについては、ほぼ改善していない」というところよ!

つまり、緩みの原因は骨盤底筋力の衰えだから、女性ホルモンを塗布しただけでは改善しない…ということ。どうですか、わかりやすいでしょう?

だから、腟の保湿マッサージと並行して、筋肉のエクササイズも習慣にすることは、40代、50代、そして60代以降の人にも超重要になってくるっちゅうわけなんよ〜。

 

ちなみに喫煙NGのおもな理由は、末梢血管&血流を低下させてしまうから。皮膚粘膜の血流を低下させてしまうので、皮膚粘膜が薄くなるのに拍車をかけてしまうの。ほんでタバコの煙には発がん性物質が約70種も含まれるといわれていて(電子タバコも同様!)、口から吸うものではあるけれど、デリケートゾーンにも因果関係があることは、医学界ではすでに証明されておるんです。

 

だから。運動習慣もなく座り仕事で、日常的にタバコを吸っている人が、「私、尿もれなんてないし!」と言っていたとしても、その暮らしぶりのままでは先々どうなるか、想像がつきますよね?

動かなければ血行も悪くなるし、筋肉はどんどん落ちていく。だから、腟萎縮だけを心配してたって仕方がない。

子宮脱とか膀胱脱になりたくない! あそこが臭くなったりかゆくなったりしたくない!と思うならば!

ウォーキングでもスクワットでもピラティスでもなんでもいいから、おへそから下の筋肉を鍛えることを一日でも早く始めるべし!(あ、膝が痛い人にはスイミングを推奨します)

そして、腟まわりはできるときでいいから、(できれば、顔と同じように毎日だけど)保湿&マッサージをしておくべし!

ご相談者の方も、理解していただけたかしら?

 

「人には言えない悩み」っていうのはね。深刻になってから慌てるのではなく、自分の力で戻ってこられるレベルを日々自分でキープすることが大事なの。

「なんか気になる…」と思ったときが、あなたのキッカケ。

習慣を変えるサインきたー!と、思ってくださいね。

では最後に、ケアの仕方と、マッサージの方法をご紹介しておきます。

腟まわりの保湿マッサージケア

 

大陰唇や小陰唇のマッサージは、お尻側からおへそ側に向かって流します。

なぜなら、フェムゾーンの神経や血管は、後ろから前に向かって走っているからです。

前から後ろにではなく、フェムケア用オイル(できればエストラジオールが配合されたもの)などをつけて、大陰唇はまんべんなく。小陰唇も指で挟んで、後ろから前に。

 

 

腟口と肛門の間、会陰も血流が滞りやすいので、左右に指を動かして、優しくマッサージをしてください。

 

 

腟の萎縮が気になる人は特に、フェムケア用ジェル(できたら乳酸菌配合のもの)やオイル(できたらエストラジオール配合のもの)を腟のまわりに塗ったあと、腟の中まで指を入れて、腟壁の内側を前後左右押してマッサージしてくださいね。

 

腟まわりと下半身を温めるマッサージ

(右)膝から太ももの付け根まで、太ももの内側をギュッと押し上げるように、4本指をそろえて老廃物を流します。

(中)両脚の間から両手を入れ、お尻の下から太ももの付け根に向かって後ろから前へそけい部に沿って、次に太ももの付け根の内側から外側に向かって、ギュッギュッと4本指でマッサージします。左右それぞれやってください。

(左)恥骨からおへそ、脇腹に向かってそれぞれ下から上に、4本指で優しくマッサージします。

 

簡単! 骨盤底筋ケア

1.息を吸いながら腟を引き上げます。一緒にお尻の穴も。

  同時に子宮と腟を一緒に引き上げるイメージで。これを5秒。

2.1を1日合計5分。電車の中でも、家事をしているときでもOK!

座っていても、ベッドの中でもかまいません。

 

 

ぜひ続けてみてくださいね!!

 

 

【教えていただいた方】

富永喜代
富永喜代さん
麻酔科医
公式サイトを見る
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富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。 性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数27万人、総再生数は6000万回超。SNS総フォロワー数42万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。

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撮影/天日恵美子 角守裕二(花) イラスト/内藤しなこ グラフ/小柳東子 取材・文/井尾淳子

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