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教えて、ペインクリニックの富永先生! 減りゆく女性ホルモンを幸せホルモンで補えるってほんと?

富永ペインクリニック院長・富永喜代先生のもとには、さまざまな性の悩み、痛みを抱える女性が訪れるといいます。今回は、40代〜50代の女性が性やパートナーシップを考えるとき、「いちばん大切なことは何か」がテーマ。若い頃のような、「受け身のまま」では難しい。そんなリアルな現実を伺いました。

スパークするけん。やってみなはれ

 

OurAge読者の皆さん、こんにちは。富永ペインクリニック院長、富永喜代でございます。
フェムテックのブームも相まって、ようやく、性にまつわる正しい情報を知ることができるようになった昨今。「フェムゾーンの乾燥、痛み、緩みなんかも気になるけれど、もしかして、まだあきらめなくていいのかも?」

40代〜50代女性たちの間でも、そんなムードが静かに高まってきているように感じ、とてもよきことだなと思っています。

 

さて。性について、多くの情報と選択肢を与えられた私たちですが、ここから次のステップに進むために必要なことは、いったい何でしょうか?

 

 

それは、「わからんかったら、まずはやってみなはれ」ということ。

わからんことはとりあえず試して、経験値を増やしていくしかありませんよね。先日も弊院の看護師から、こんな質問を受けました。

 

「先生。先生のところにはやたらとセルフプレジャーのトイがありますけど、いちばんのおすすめはどれですか?」(仕事柄、各所から、いろいろな新商品が送られてくるのです)

 

雑貨のようなデザインのもの、最新機能がついたもの。さまざまなトイがあふれる中、初心者の方に私がいちばんおすすめしたいものは、

「一般的なハンディマッサージャー」(価格も2000円くらいから)。

特別なショップに行かずとも、誰に見られても恥ずかしい思いをせずに、入手できますよね?

それに何より、本当に肩こり腰痛などのマッサージ機として、どう転んでも使えるじゃないですか。だから、絶対に失敗がない。トイにも初心者用などあるものの、ぶっちゃけ私は「ゴールデンスタンダードから行け!」と言いたい。そして、手に入れた暁には、セルフプレジャーとして使ってみることをぜひ体験していただきたい。振動を当てると、幸せホルモンのドーパミンがパーッと出てきて、脳がスパークするけん、そこで「うわーっ」と、一人感動してほしいんよ!

この費用対効果が2000円くらいからであるならば、あなたには何の損もありませんよ。

減りゆく女性ホルモンを、幸せホルモンで補うことは、医学的にも理にかなっているけん!

 

 

40歳、50歳になっても、「パートナーとのセックスでイッたことがない」っていう相談も、性交痛外来によく届くんよ。

そんなときには、クリトリス吸引型グッズを使うことをおすすめしています。

何といってもクリトリスは、いちばん敏感でイキやすい臓器だから。自分のペースで楽しめるセルフプレジャーなら、セックスと違って相手に気を遣わず、自分を解放できるでしょ。しかも、クリトリス吸引型なら、軽い陰圧で吸われる感覚を自分のペースで味わえるから、オルガスムを感じやすいのよね。

実際、セックスよりマスターベーションのほうがイキやすい、性生活の満足度も上がるという世界調査の報告もあるけんね。(月刊TENGA Vol.1_1「マスターベーション世界調査」より)

 

オルガスムを感じるのは、あなた自身なんだから、イク、イケない、を相手任せにしないでほしい。自分自身がセックスを楽しみ、セルフプレジャーで体を慈しんで、自分自身を大切にすることが、大人の性で最も優先すべきことだから!

 

 

パートナーのためだけに、あなたは生きているわけじゃない

 

まずは自分でやってみる。試してみる。

そうすることで、「自分は何を選んで生きていきたいのか」という、「自分軸」が強化されていきます。

なぜそんなことをお伝えしているのかというと、私は40代〜50代の女性患者さんたちから、考えさせられる体験を聞く機会が非常に多いからです。

 

 

例えば、50代半ばの女性のお話。70歳のパートナーができ、最初のうちはものすごいラブラブだったんですよ。「人生の中で、この人しかいない!という人をとうとう見つけました」と幸せいっぱい。弊院には、「粘液が出なくなってきた」という性交痛のお悩みでいらしたので、腟のケアを始め、めでたく濡れる体となり、彼女は今も性を謳歌している…はずでした、私の中では。

ところが2年ぶりに来院した彼女がとても落胆していて、「どうして男の人って…」と泣いているのです。はい、彼が次の若い女に行ってしまったんですね。

 

「最後の女になりたい」とか、「初めての男になりたい」とか、人間の中には、それぞれの性において、いろんな欲望がありますね。だから彼女が本気になったことはわかるし、「裏切られた」と落ち込む気持ちもよくわかる。けんど。私は伝えましたよ、彼女に。「わかるよ。でもね。あなたはさ、彼のためだけに生きとるんちゃうで?」
彼を愛して、女性としての努力もして、性も取り戻しました(彼女はとても美しい人で、スタイルも抜群なのでした)。ただ、相手には裏切られた。

 

 

でも、また一人になったというそのときに、自分を支えるものは何かというと、「自分」。

自分しかいないんですよ。40代〜50代にもなると、「こんなはずではなかった」という人生の方が多いじゃないですか? 失業したとか、離婚したとか。

それでも人生は続くし、生きていかなければならないんよね。そんなときこそ、「自分」や!

「自分はどうしたいのか」や。

 

 

恋に落ちた相手だけを信じてきたけれど、そのために頑張った自分は、自分を裏切ってはいないんよ。

「あなた美人だから、すぐ次のパートナーができるわよ」というのは、非常に無責任な、表面的な励ましですよね。だから次の相手はできても、できなくても、どっちでもいい。

「もう男は懲り懲り」と思ったのなら、それでもいい。

 

 

大切なことは、選択肢が生まれたこの状況下で、自分のために生きる道を、自分で決めることなんよね(で、その道も、いつでも自由に進路変更していいのです)。

 

 

空気を読まそうとするヤツに、ろくな男はいない

 

私には大学生の娘がいるのですが、「ママって…なんか自由だよね」とか、「っていうか、全然空気を読まないよね?」と、よく言われています。(下の写真は娘がまだ小さかったときのもの)

…まぁ、身近にいるのがこんなパンクな母親なので、娘もかわいそうだなとは思うものの、ここは主義主張を譲るわけにはいかない、と思いました。

「あのな。私が空気読んで、誰かに合わせたとするやろ? でもその誰かははたして、私に何かをしてくれるんか? 何かしてくれるんやったら、うちも少しは空気も読むで。でも何もしてくれへんくせに、“お前はあれするな”“これするな”とか言うヤツは、自分だけが住みやすい世界をつくろうとしてるだけや! そんなヤツのために、あんたも空気を読んだり、気ィ遣ったりしたらあかんで!

あんたは自分がどうしたいか、それだけを考えて生きなさい!」

 

…その勢いにひるんだ娘は、その後私の母に、「お母さんは、昔からあんなふうだったのか」と、謎の確認を入れたようです(笑)。けんど。

「自分のために生きる」という、その姿勢の大切さ。娘にもいずれ、そのことを知るときが訪れることでしょう、と、母は祈るばかりです。

 

 

富永喜代
富永喜代さん
麻酔科医
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富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数28万人、総再生数は6600万回超。SNS総フォロワー数44万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。

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撮影/天日恵美子(先生) 角守裕二(花) 取材・文/井尾淳子

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