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知っておきたい「腟萎縮」と「性交痛」のホント。「する・しない・するかもしれない」すべての人に起こります。

富永喜代先生が院長を務める「富永ペインクリニック」は、その名のとおり「痛み」に特化した治療を行うクリニック。先生の専門のひとつ「性交痛外来」には、「久しぶりにパートナーとセックスをしたところ、痛くてできない!」と駆け込む、50代以降の患者が急増しているといいます。更年期を境に、女性の腟まわりに起こる変化とはいったい?

腟萎縮。それは、すべての女性に起こるんよ

OurAge読者の皆さん、こんにちは。富永ペインクリニック院長、富永喜代でございます。

今回は、「久しくセックスをしていない」という人にこそ知っていてほしい!「性交痛」と「腟萎縮」についてのお話をいたしましょう。

 

性交痛とは、「性交や挿入を伴う性行為のときに感じる痛み」のことで、「更年期以降にセックスをしている女性の2人に1人が感じる痛み」といわれています。これ、知ってました? つまり、(50代以上では)半数以上の女性が性交痛を訴えていることになるわけで、決して珍しいお悩みではございません。

 

「私はもうセックスはしないから、性交痛の話なんて関係ない」と思ったそこのあなた! もちろん「する・しない」は個人の自由意思ですから、それはそれでええんですよ。けんどね。

 

「セックスはしないから」ということは別にしても、更年期以降の女性の腟は、「セックスもせず、ケアもせず、放置のまま」では、「萎縮してしまう」んです! どん!(机を叩きました)この女性の体の大変化については、自分ごとの知識として、ぜひ知っておいていただきたいのですよ。

腟萎縮は、閉経前後、女性ホルモンであるエストロゲンの減少によって、腟の粘膜が薄くなり、乾燥することで起こります。そうすると、性交痛のほかにも、かゆみ、下着などのこすれによる痛みが出たりします。症状が進めば細菌も繁殖しやすくなり、腟炎を起こしてしまうリスクも高まってしまうのです。

 

だから、フェムゾーンケアは、必須。逆に言えば、顔と同じようにちゃんと毎日ケアをしていれば、この腟萎縮からくるトラブルは、かなり防げるっていうことなんです!

このケア方法については、後半で語りますね。

 

 

 

性交痛外来に駆け込む女性、増えています

今現在、「セックスはしていない」という方の中には、「パートナーがいない」とか、「離婚をした」とか、人それぞれ、さまざまな理由があることでしょう。そして、「(セックスを)したくない」のではなくて、今はしていないけれども、「パートナーができたら、セックスを再開したい」と思っている方もおられると思います(当然、そのことを「いい年をしてはしたない」なんて思う必要はまるでないことは、この連載をお読みの方なら、おわかりですよね?)。
そこで、このデータを見てください。

 

 

「先生、久しぶりにしたら、ものすごく痛くて! 助けてください!」

先日も、そう言って弊院に駆け込んできた患者さんがおられました。腟が萎縮すれば、セックスをしたときに性交痛が起こるのは、当然のこと。

でも、紹介したデータのように、そのこと自体を知らない人が女性では7割。男性では8割。さらに、ぼんやりと「女性はいつまでもセックスができると思っていた」という人は、女性は65%、男性は74%もいるというこの現実よ。つまり、日本の40代50代の人たちの性の知識は、ほぼアップデートされとらん! ということなんよ。

 

だから、久しぶりのセックスをしたら激痛が走って、「何これ!?」となったとき、私のような専門医がいることすら知らん人は、どうなると思いますか?

 

「きっと、私の体がダメなんだ」「私が悪いんだ」と、自分を責めた挙げ句、新しい恋をあきらめてしまう。実は前述の患者さんも、「50代のとき、うまくセックスができなかったことで関係が気まずくなって、彼氏と別れてしまった」という苦い経験を持つ60代の女性でした。つまり、「次はもう別れたくない。先生、何とかしてください!」ということだったのです。

 

ご本人いわく、「最初は、頑張ったらなんとか入ったんです」とのこと。だから余計に、「最初入ったから、いけるやん」「頑張れば、徐々に(腟の中は)広がるやん」と思ったんやね。で、「何回もトライはした」。けんど「どんどん痛くなるばかり」。
いったい、彼女の体に何が起こったのか。

 

それは、こういうこと。萎縮している腟に対して無理やり男性器を挿入し、しかも後のケアもしないでいたことで、腟に傷ができてしまったんやね。傷というのは、回復する際に縮こまることがあるので、さらに萎縮が進んでしまい、ますます「入らなくなる」「入れると痛い」という、悪循環になった…ということなんです。

 

「(セックスは)間が空いてるけど…」という人。

大丈夫です。

そこで、「ずっとしてないと、そんなふうになっちゃうんだ」「年をとると、もうセックスはできないんだ」と絶望せんとってくださいね。
まず言いたいのは、「(私のような)専門医にかかることで、性交痛は治ります」ということ。

 

先の患者さんにも行った治療をご紹介すると、弊院では、女性ホルモンと腟乳酸菌のWのマッサージ効果で、性交痛の治療をしています。

 

女性ホルモン(エストラジオール)が配合されたオイルを、下半身全体に塗り広げながらマッサージする+腟乳酸菌配合ジェル(下の写真参照)をつけた指を腟に入れて、「ふー」っと息を吐きながら腟壁のマッサージをするというセルフケアの指導を行います。腟内を押し広げるためには、これを毎日続けていただく必要があるので、自宅でもご自分で続けてもらうように指導しています。

 

先の腟の乾燥にも、お風呂上がりの清潔な状態で腟まわりにこれを塗って、優しく傷つけないようにマッサージするといいんですよ。

 

右)女性ホルモンのエストロゲンの有用成分エストラジオールを薬機法規定容量最高上限まで高配合した、デリケートモアモイスト ゴールドエッセンス¥16,500・ 中)腟の乾燥を改善。右の半量のエストラジオールを配合。デリケートモイスト シルバーエッセンス¥13,200・ 左)腟乳酸菌配合デリケートゾーン専用の、エストラジェル¥8,800/富永ペインクリニック(Dr.ESTRA)

 

腟の奥のほうが萎縮している方は、腟を拡張する「腟ダイレーター」という医療器具を使用する場合も。また、セルフプレジャーアイテムブランドirohaさんなどから発売されている、挿入型トイもおすすめしています。

MIKAZUKIは細めの挿入型トイなので、少しずつ入れていって腟の中を広げていく訓練におすすめなんよ。フィット MIKAZUKI ¥12,500/iroha

 

 

性交痛外来に来られたさまざまな患者さんも、こういった処方をおよそ1カ月続けた後、特別な状況がない限りは、皆さん改善されています。しかも、「先生、性交痛が治っただけじゃなくて、前よりも濡れるようになりました!」「おかげさまで、セックスの回数も増えました!」という、ナイトライフの喜びの声もたくさんいただいています(ホンマ、よかったですわ♡)。

 

かつては、腟萎縮が起きていても、性交痛に苦しんでいても、何がなんだかわからずに、「私のせいです。さようなら」と、涙の別れを経験した人もきっとたくさんいらしたのでしょう。けんど。今の時代はもう、そんな演歌の世界のような選択をしなくてもええんですよ。でもそのためには、大人の女性として、正しい性の知識を持っていることが欠かせません!

 

セックスをしていても、していなくても。また、いつかまたセックスをしたいと願う人も。自分の腟が今、萎縮傾向にあるのかどうか、一度専門医でチェックしてもらうのはいかがでしょうか? それは、自分から、「自分らしい性の幸せ」を、能動的につかまえに行くことでもあるんよ。大人のオンナは、時に能動的であるべし。私はそう思います。

 

 

【教えていただいた方】

富永喜代
富永喜代さん
麻酔科医
公式サイトを見る
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富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。 性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数27万人、総再生数は6000万回超。SNS総フォロワー数42万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。

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撮影/天日恵美子 角守裕二(花) 取材・文/井尾淳子

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