『マーガレット・ハウエルの「家」』 が出て15年がたちました
『マーガレット・ハウエルの「家」』(集英社)を、書店やマーガレット・ハウエルのショップでご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。もしかしたら、ご自身の本棚に並んでいる方もおられるかも?
2006年に刊行されたこの本は、昨年8月、なんと5年ぶりに重版がかかり10刷になりました。
10刷の奥付です。
マーガレット・ハウエルさんとの出会いは、上司の命令から
1989年、女性誌「LEE」の編集者だった20代の私は、当時の副編集長に命ぜられるままにロンドンのデザイナー、マーガレット・ハウエルさんのご自宅を取材させていただきました。その2日間で私は彼女の着こなしはもとより、暮らしぶり、考え方にすっかり魅了されてしまいました。作るもの、選ぶものへの強い信念、生み出す確固たる世界観…すべてが新鮮で、今考えると、そのとき私は「編集者としての目」を見開かされたように思います。その後17年間、ストーカー編集者と周囲に笑われながらも、マーガレットの「暮らし」や「言葉」を知りたくて数年ごとに取材を依頼。2006年にはミッドセンチュリースタイルの別荘を持った彼女を取材し、その17年間を1冊の本にまとめました。それが『マーガレット・ハウエルの「家」』です。
2000年代後半に、LEEで暮らしや旅など計10冊の書籍を作る機会に恵まれましたが、売れ行きの良い本でも、重版がかかるのはほぼ刊行から2~3年後まで。15年ものロングセラーになったのはこの本だけです。マーガレット・ハウエルの持つ魅力(パワーと言ったほうがしっくりくるかもしれません)が桁違いに大きかったことと、彼女がいち早く気づかせてくれたミッドセンチュリー・デザインの価値が、今も世界で輝き続けている証だと思います。
左が2006年の初版、右が2020年の10刷です。
そっくりで当然だと思われるでしょうが、こんなに版を重ね、月日がたっても変わらぬ用紙で変わらぬ印刷をするのは、印刷所さん、制作部、編集者にとってもなかなか気合いのいることです。とくに帯のグリーンは色も微妙で、前の版に色を合わせていったら、徐々に帯の色がずれてしまったことも。10刷は初版に忠実に戻せたので、当初の雰囲気をお楽しみいただけると思います。
デスクやロッカーから出てきた過去のお宝デザイン
実は、今回マーガレット・ハウエルさんのことを書こうと思ったのは、会社のデスクやロッカーを整理していたら、こんなお宝が出てきたから。
マーガレットが制作した、素晴らしいグラフィックデザインのカレンダーです。その年ごとに、ミッドセンチュリーの建築物だったり、当時のポスターだったり、彫刻家Barbara Hepworth(バーバラ・ヘップワース)の作品集だったり…マーガレットがみんなに知ってほしいと考えるさまざまな分野のブリティッシュデザインが特集されています。
こちらはロンドンのマーガレット・ハウエルのショップでのエキジビションに向けたミニポスター。アーコールの椅子やアングルポイズの照明、スパンハウジング(ミッドセンチュリーにスパンデベロップメント社が開発した集合住宅)など。久々に広げて見ましたが、相変わらずかっこよくて、ほれぼれします。
我が家にもマーガレットが気に入ってショップで扱っていたブリティッシュ・プロダクトがいろいろあります。どれも古びぬ魅力が続きます。
15年後のマーガレット・ハウエルさんの「家」は…
先日、マーガレット・ハウエルのプレスの方から伺ったのですが、昨年2020年はマーガレットが自身のブランドをスタートして50周年だったそう。延期になった記念のイベントが、今年5月に行われる予定だそうですよ。
また、最近のマーガレットですが、70代になった今ももちろんデザインを続けていて、時には娘のミリアムのお子さん、つまりお孫さんふたりを預かることもあるとか!
『マーガレット・ハウエルの「家」』の表紙にもなったミッドセンチュリー建築の別荘は、そのまま大切に住み続けています。
そして! 本の中で紹介し、マーガレットが約30年住んだロンドンの家を、2~3年前に住み替え。現在は新しい家のリノベーションにこだわりを持って取り組んでいるのだそうです。
70代でなおクリエイティブなマーガレット、やっぱりすごいです。
さて、『マーガレット・ハウエルの「家」』を刊行した時、帯のコピーはそれまでの17年間を表したこの言葉にしよう、とすぐに決めました。
みんな、彼女のインテリアスタイルを見てセンスを磨いてきた
それから15年。
今回の 「50代あるある(かもしれない)川柳」 は、マーガレットに出会って32年、私の思いです。
人生は マーガレットが 先生だった
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