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畑史上、最高に悲しい出来事

加藤紀子

加藤紀子

1973年1月30日、三重県鈴鹿市生まれ。

92年に歌手としてデビュー。幅広いメディアで大活躍するさなか、2000年より芸能界を休業し、パリへ語学留学。2002年に帰国し、芸能活動を再開。以降、テレビ、ラジオ、エッセイ執筆など多方面で活躍。2013年にTOKYO No.1 SOUL SETの川辺ヒロシ氏と結婚。

現在、TBS『ふるさとの未来』(水曜深夜0時58分~)にレギュラー出演中。YouTube「加藤紀子畑チャンネル」https://www.youtube.com/c/katonorikoも配信中。

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この一年という時間は、とにかく経験したことのない気持ちを抱くことの連続で、今日笑えるありがたさ、大好きな人の顔が見られる嬉しさなど、これまで当たり前に思いがちだったことがいかに大切なものだったかを、今一度思い出す機会ともなったような気がしました。

そして私にとっては畑に行き、種をまき、苗を植え、日に日に姿を変えて育っていく野菜を見ることは、単純に収穫した野菜を食べる楽しみだけでなく、明日に続く希望という名の作業(大げさですかね?)なのかも・・なんて考えるようにも。

 

そんな中で起きた、少し長めのお話です。

 

いつになったらどうなるかの出口が一つも見えない中で、「今日できることを!」と、時間を埋めるように種まきした春。

帽子にサングラス、そこに加わったマスクにより、いつにも増して汗にまみれ、作業後すぐ銭湯に駆け込んた夏。

長雨が続き、蒔いた種が何度も流された秋。

お正月のお節用にと植えた“金時人参”やお鍋にと楽しみに育ててきた大根やネギなどが、ようやくの形に整ってきた先日、12月の始まり。

 

畑に着き、畑メイトさんが到着するまでの間、いつも通り、まずはぐるりと一周パトロール。

「今日は空芯菜をさよならして(片付け)、霜が降りる前に生姜や里芋類を収穫して、ブロッコリー、春菊、小松菜、水菜も抜こうかな・・」

それぞれの成長&収穫具合を確認。

寒さが増したことにより、タア菜や白菜や山東菜(さんとうな)など、冬野菜たちがイキイキとして見える一方、これまで感じたことのない、畑から漂うなんとも言えない違和感が。

モグラがミミズを追いかけて作った山とか、どこからか現れるも全く動じない猫とか、「タヌキ!」と呼ぶと振り返るタヌキとの遭遇とか、どこかクスっと笑える感じの違和感ではなく、何かザラリと不快な気持ちを抱く、違和感。

(作業場に現れた一匹のタヌキ。落ち葉をのんびり食べてました)

 

不自然に折れて落ちている唐辛子があれば、あちこちに散らばる数枚ものキャベツの葉、ネギってもっと並んでなかったっけな・・。

別の日に畑メイトさんが一人、作業に来ていたとしても、彼女はとても丁寧で優しく野菜に触れる人で、こんな雑な状態で帰るなんて考えられないし、好き勝手に収穫する人ではない・・と思っていたところに畑メイトさん到着、このざわつきをどう伝えようか・・・と思っていたら、畑のかあさま登場。

 

私たちの顔を見るなり「いやー、参っちゃってー」と、大声で畑の端から歩いてくるかあさまのただならぬ勢いに、近づいて話を聞いてみると・・・

 

「昨日、○○って街の人たちが30人ぐらい、体験収穫に来たんだよね。

ブロッコリーはここ、キャベツはここ、白菜はこちらですなんて、説明しながら収穫してもらってたんだけど、話聞かない人たちがいて・・・実は、のりちゃんたちの野菜も勝手に抜いちゃったんだよねー、ごめんねー・・・」

 

「!!!」と驚きながらも、ああ・・と納得。

私が抱いた違和感は、誰か知らない人が分からないまま自由に歩き、触れ回ったっぽい感じで、「お片づけって何ですかー?」とも言わんばかりの無邪気さがあちこち広がる、これまでこの農園で一度も見たことのない、散らかった光景だったから。

 

休ませている土の上には足跡が残り、支柱は意味のない場所に放置、「親子で来ている子供たちが、好き勝手に野菜の間も走っちゃって」と、とても疲れた表情のかあさま。

「ブロッコリーは株を切ってねと伝えたのに、根っこごと引き抜いちゃう人がいたり(そうなると次の収穫が出来なくなります)、出荷用の生姜を自由に持っていかれたりね・・」

 

かあさまを始めとする畑ファミリーのその日のご心労を思うと、何かお手伝いできたのではないか?と申し訳ない気持ちをを抱きながらも、起きてしまったことは仕方なく、胸のざわつきが解決しただけでも良かったと気を取り直して、再び自分たちの畑で作業開始。

 

芋の種芋は芋!

種芋から子いも、孫いも・・とまるで家族のように増えていく姿を楽しみに、暖かな4月のある日に植えてから8か月、待ちに待って掘り起こしてみると・・・

こんなにも美しいピンク色登場で微笑ませてくれました!

同時に抜いた里芋、菊芋も、ひと冬分たんまりの収穫に喜んだり。

 

「今年のお節はどうするの?ヤツガシラ(里芋の親玉みたいな大きな芋)炊く?」なんて、いつものように畑メイトさんと話をしながら、お節料理のマストアイテム金時人参の成長を見に行ってみると、この間まで綺麗に並んでいたはずの人参の列に穴が。

金時人参、オレンジ、パープル、ホワイト、イエローと並ぶ列の中でも、金時人参コーナーの空洞いっぱい・・。

 

お節にね、入れたかったの、金時人参。

外側と真ん中と色が違って、型抜きして煮物なんかに添えると、映えるの、金時人参。

たっぷり育てよう!と今年は多めに植えたの、金時人参・・・。

 

数ヶ月かけて育てた子たちがさよならの挨拶もなく、消えてしまった寂しさは胸が裂けるような痛みで(これがまたちょうどいいサイズに育ってる最中)、「参ったね」と笑っていても、心の中は涙ザアザア。

さらには空いた穴の近くには「なんだ、まだ小さいじゃん!」と抜いてみたら小指ほどのサイズだったイエロー人参数本が置き去りに・・。

その上もっと悲しいのは「葉っぱは要らないから切って捨ててこー!」

残された人参の上にバッサバッサ捨てられていたこと・・。

 

違うの違うの、葉っぱも栄養があって美味しいんですよ。

人参と一緒にじっくりグリルしても美味しいし、ナムルにしたっていけますよ。

なぜに無残に置き去りに〜(さよならするならせめてお家で・・)。

 

 

カブも、大根も、ネギも、ハバネロにもセイグッバイ(涙)。

野菜好きに悪い人はいないと信じ、美味しく食べてもらっていることを願うしかありませんが、今回の経験は、当たり前のように育てていた野菜への想いや愛おしさに、今一度、気づかせてくれる出来事だったのかもしれません。

 

2021年がどんな世界になるのか全く予測出来ませんが、少しでも穏やかで健やかに、そしてまた楽しく平和に野菜と戯れていけたら・・、そう願います。

 

この一年もお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

来年もまた楽しんで頂けるよう、精一杯頑張ります!

 

良いお年をお迎えくださいませ!

 

 

加藤紀子

YouTube 「加藤紀子畑チャンネル」 https://www.youtube.com/c/katonoriko

公式ブログ 「加藤によだれ」 https://ameblo.jp/katonoriko/

「加藤紀子のエスプリ カフェ プラス」 http://www.ellebeau.com/electore-journal/n_kato/

 

 

 

 

 

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