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人生100年時代のお手本! 91歳・おばあちゃんカメラマンの毎日が楽しい理由

Moca

Moca

おでかけ女史組メンバー。神奈川県在住。介護福祉士、ケアマネ 、メイク、美容師資格を持つフォトグラファー。おでかけ女史組がきっかけで、フェイシャルトリートメントからメイク、撮影までをトータルで行う(株)Social beauty photoを設立し、シニア女性をキラキラ輝かせるために活動中。

西本喜美子さん。名前を聞いてもピンとこない方も、このユニークな写真を見たらきっと「どこかで見たことある!」となるのではないでしょうか。

 

こちらの写真はすべて自撮り。しかも右の2枚の写真はパソコンソフトを使って自分で編集しています。さらに凄いのは、この自虐的な写真はすべてご自分のアイデアということ。

 

インスタフォロワー22万人を超え、写真展を開催すれば1万人の集客。89歳でAdobe社のアートディレクターを務めたり、副業大賞にも選ばれるなど未だ衰えを知らない91歳のアマチュアカメラマンの喜美子さん。普通の主婦からどのようにして、世界からも注目されるカメラマンとなったのか。

 

私は「おでかけ女史組」でMocaという名前で記事を書かせていただいておりますが、おでかけ女史組メンバーとしての記念すべき最初の記事が西本喜美子さんとの出会いでした。

 

私は、介護福祉士、介護支援専門員というお仕事をしながら、シニア女性に「女性としての喜び」を思い出してもらいたいと、美容師資格を取りヘアメイクもしていました。カメラは趣味でしたが、喜美子さんと出会い彼女と接している中で「自分のやりたいことをやってみよう」と50歳目前で一念発起。シニア女性専門に「ヘアメイクをして笑顔の写真を撮る」という会社を設立してしまいました。だって、彼女よりまだ40歳も若いのだから(笑)

 

普段は全くメイクをされないという喜美子さんですが、今回は、私自らメイクをさせていただき、ライフスタイルやお考えを伺いました。

撮り始めたきっかけは、背中を押してもらったこと

 

72歳のとき、息子さんであるアートディレクターの西本和民さん(注1)の写真講座「遊美塾」(注2)でカメラを始めた喜美子さん。その年齢で新しいことを始めたり、自分の子供や孫くらいの年齢の人たちと一緒に学ぶことに抵抗はなかったのでしょうか。

 

「先生が(喜美子さんは生徒のひとりであるので息子さんのことを先生と呼びます)写真の教室を始めた時にですね、先生のお友達が(遊美塾に通う生徒さん)家に遊びにきたんですよ。『これいいじゃない』なんて口出ししたら『お母さんも一緒にやりましょう』って強引に誘われちゃったのが最初なんです。それからずーっとやってます。ほんと、ありがたかったですよ」

 

自分からやろうなんて思わなかった。強引に連れて行ってもらえたから今こんなにたくさんのお友達が出来た。今は本当にその友人に感謝している。と喜美子さんは話します。

高齢になると新しいことにチャレンジする気力も勇気もなくなってきます。そんなとき背中を押してくれる存在がいたからこそ、今の彼女がいるんですね。

 

ブレイクのきっかけは「宿題」

 

喜美子さんを一躍世に知らしめたのは、ご自身が可燃ごみとして処分されている写真(冒頭・左のもの)。

 

「塾で宿題が出るんですよ。自撮りの宿題。何を撮ろうかなって考えるんですよ。これ、リモコンを握って撮るんですよ。何度も行ったり来たりして確認しながら大変なんですよ。でもアイデアが思いついたら楽しいんですよ」

 

期日のある宿題があるからこそ、日々何を撮ろうかと頭を悩ませたり、撮影する素材を集めたり、毎日が忙しく充実したものになるようです。

「やっと今月の宿題提出が終わったらまた次の宿題」。課せられたこのミッションこそがユニークな発想に繋がっていったのではないでしょうか。

 

さて、この写真が世に出ると、「お年寄りにこんなことをして」と批判の声が上がり、慌てて「自撮りです」という注釈をつけたそう。

そもそも、どうして可燃ごみのような発想が生まれたのだろう、と思いますよね。

 

以前、彼女のご自宅に遊びに行った際に、キッチンの隅に干からびたキュウリが置いてありました。

ゴミかと思っていた私に

「かわいいでしょ。なんだか面白い形でしょ。ちょっとカマキリみたいに見えるよね。これをどうやって撮ろうか考えているのよ」

とニコニコとお話しされたことを思い出します。

 

普通なら見過ごしてしまうもの、不要となったものでも、彼女にはそれを面白がる心があって、作品を作りだすエネルギーがあるのです。

 

彼女はお会いすると至って普通のかわいいおばあちゃんですが、人より少し好奇心が旺盛で、少し真面目じゃないかも(笑)。

91歳になっても、お酒も飲むしたばこも吸います。夜遊びもします。

年齢という枠にとらわれない自由な生活が自由な発想に繋がっているのではないでしょうか。

 

若い友達がいるから楽しい

 

喜美子さんの写真展はどこで開催されても大好評で、昨年末の広島の写真展では過去最高の入場記録を更新したとか。

有名になってしまったがために、次回作を求められたり、もっと面白いものをと期待されることは負担にならないのでしょうか。

 

「毎日やることがたくさんあって疲れるんですよ。それでも写真は凄く楽しいんですよ。最近は近くにあるものを撮ってます。

それに、今年も写真展をやりますけど、色んな所で色んな人に出会えるし、仲間がいるから楽しんでやってます。体はしんどいけど、仲間に会えなくなるからやめたくないんです」

 

何を隠そう、筆者も喜美子さんの友人のひとりです。喜美子さんの友人のほとんどは彼女の半分ほどの年齢。そして喜美子さんが訪れる場所にはいつも大勢の友人が集まります。それは、喜美子さんが有名人だからではなく、喜美子さんが好きだから。愛される秘訣は何でしょう。

「何でしょうねぇ…私は歳とってますけど、やっぱり若い人の仲間に入れて欲しいし、気取ったりできないですからねぇ。ありのまんまでお付き合いさせていただいてます。本当に皆さんに感謝ですねぇ。それしかないです」

 

年齢なんて考えたことないですから

 

喜美子さんの連絡ツールはLINEです。パソコンで自分の撮った画像を編集してしまうくらいだから簡単なものでしょう。とはいえ、パソコンに触りだしたのは73歳から。

その年齢で、パソコン。しかも、特殊な画像編集ソフトを使いこなすのは難しくなかったのでしょうか。

 

「パソコンなんて触ったことも無かったですよ。塾に入って初めて買ったんですよ。先生もお友達も教えてくれますからね。楽しいですよ。新しいことを覚えるのは本当に楽しいです。パソコンは頭が良いから何でもできますし(笑)」

 

それまで触ったことも無いパソコンを73歳から始めてみようという気持ちが凄いとお話しすると、

「なんでですか?楽しいですよ。年齢なんて考えたことないですから。楽しいじゃないですか」とキラキラと子供のような表情で答える喜美子さん。

 

家族の理解とサポートも大切

 

91歳になっても、毎日を楽しく過ごしているのは、家族の理解とサポートのおかげ。

 

先生であり息子さんの和民さんは、貴美子さんの好奇心を尊重すること、可能性を伸ばす手助けをすることを心がけています。

 

「○○歳らしく」とは決して言いません。おばあちゃん扱いはしないのです。

つまり自己責任。「自分のことは自分でする」という視点。近くには住んでいますが、敢えて息子さんと一緒には暮らしていないそうです。

そんな息子さんについて伺ってみました。

 

「講座の時に会いますからね、家にはほとんど来ませんけどね、来る時は簡単に作れそうなものを買ってきてくれますよ。たまーにカレーを作ってくれます。カレーは1人分は難しいですから。美味しいですよ」

 

「耳が遠くなって先生の声が聞こえないから、一番前で聞いてるんです。お喋りしてると怒られるから、話しかけて来る人がいると静かにしましょ。って言うんです(笑)」

 

喜美子さんにとって、息子さんはカメラの先生であるという思いが強いのですね。そして、その先生のおかげで友達がたくさん出来たと心から感謝しているようです。

 

彼女と話していると、私たちが親世代に本来何をしてあげるべきかを考えさせられます。できないことをしてあげるのではなく、何か楽しめる環境を作って、それを続けられるサポートをする のもひとつの方法ではないかと感じました。

3つの条件が整っていれば

 

あちこちで「喜美子さんみたいな、好きなことを楽しむおばあちゃんになりたい」という言葉を耳にします。ご本人は全くそんな気持ちはないのでしょうが、喜美子さんは今や「女性の憧れ」です。

 

最後にそんな喜美子さんから、私たち世代の女性にアドバイスをいただくと…

「歳を考えないことですよ。そして感謝ですね。ありがたいですよ」

「まだまだ生きたい。130歳まで生きたい」と笑顔で答えられます。

 

彼女は決して無理をしているのではなく、その時の自分の環境に応じた楽しみをみつけ、その楽しみを継続するために可能な範囲で自立して過ごしています。

 

和民さんはこうお話しされます。

「母は決して特別ではない。3つの条件があれば、みんなに母のようになれる可能性はある」と。

 

「趣味をもつこと」

「その共通の趣味を持った仲間をつくること」

「発表の場をつくること」

高齢者にはこの3つが必要だと。

 

私はこれに

「自分の年齢は忘れ、やりたいことをする」

を追加したいなと思いました。

 

喜美子さんはおばあちゃんだからこそ注目され、可愛がられるのですが、おばあちゃんらしくないことに取り組んでいるから面白いのです。

 

年齢を重ねることは、何かに取り組むうえでネガティブな材料にはならず、実は若者には絶対に真似できない強みとなるのです。

 

みなさんも、これから年を重ねていく上で、あえて「年齢不相応な何か」を見つけてみませんか?

喜美子さんみたいになれるかも・・・。

 


 

西本喜美子(にしもときみこ)

写真家

生年月日:1928年5月22日

年齢:91歳(2020年2月時点)

出生地:ブラジル

在住地:熊本県熊本市

ブラジル生まれ。8歳で帰国。美容院開業から競輪選手を経て、27歳で結婚し主婦になる。72歳でアートディレクターである長男が主宰する写真塾「遊美塾」の写真講座をきっかけに写真を始める。82歳だった2011年に熊本県立美術館分館で初個展を開催し話題となる。2017年には東京・西新宿の「エプソンイメージングギャラリーエプサイト」で個展「遊ぼかね」も開催。画像処理ソフトを使ったデジタルアート作品や、自撮り写真が話題となり、2019年には通販生活のイメージキャラクターを務め、昨年末全国副業大賞にも選ばれる。

 

(注1) 西本和民

アートディレクター。熊本市出身 金沢美術工芸大学卒業。CDジャケットのデザインや撮影を中心に活動。これまでに担当したアーティストの数はチャゲ&飛鳥、吉川晃司、B’z、アルフィー、相川七瀬などを始め300人を超す。日本で一番レコードジャケットを手掛けた男と呼ばれる。

(注2)遊美塾

西本和民主宰写真教室。東京・名古屋・大阪・広島・福岡・鹿児島・熊本の全国7か所で展開。

 

撮影/西本和民 山田真由美

撮影協力/ザ ストリングス表参道

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