HAPPY PLUS
https://ourage.jp/odekake_joshigumi/121996/

知られざる奈良の山里、田原を歩く

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

記事一覧を見る

こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。

寺や神社を中心とした旅の情報をお届けしています。

今回は、奈良の茶どころ、田原をご案内します。

奈良に何度も行っている方でも、「田原」という地名を聞いたことがある人は少ないと思います。奈良の市街地からバスで30分ほど、ここには、奈良のほかの地域のように、誰もが知っている有名な寺社や国宝の仏像などはありません。しかし、里山と農村と田園、そして自然だけはたっぷりあります。どこにでもありそうで、実はもう失われつつある、懐かしい日本の原風景。カンヌ映画祭でグランプリを受賞した河瀬直美監督の映画「殯(もがり)の森」の撮影も、この地域で行われたのだそうです。

町の中心となる「田原ふる里ほっとステーション」では、地元の特産品を買うこともできます。

(営業日:1~3月 土、日 ・ 4~12月 水、土、日)

https://tawarayamasato.jimdo.com/

 

 

ほかではあまり見かけない野菜がてんこ盛りで売られています。

中でも気になるのは、驚くほど手ごろなお値段のお茶。種類もずいぶん多いです。「大和茶」という言葉も気になりますね。

茶の産地と言えば、宇治、静岡などを思い浮かべますが、実は奈良県も、全国でも屈指の茶の産地で、奈良県内で生産されたお茶を「大和茶」と呼びます。そのはじまりは1200年以上前。一説には、弘法大師が中国から持ち帰った茶を植えたのが始まりとされていますが、もっと古く、奈良時代から作られていたとも言われます。確かなことはわからないようですが、茶は仏教と関係が深いため、寺の多い奈良でも広まったと考えられています。

大和茶は、主に、標高が高く、冷涼な気候の大和高原と呼ばれる地域で作られています。田原も産地のひとつで、農薬や化学肥料を使わないオーガニックな製品が多いのが特徴です。試飲をさせていただきましたが、ほんのり甘く爽やかで、いやな渋みを感じないお茶でした。

訪れる時期によっては、茶摘みや、簡単な紅茶作りも体験することができます。

 

 

そしてもっと素敵なのは、収穫されたお茶を飲ませていただける、素敵な農園カフェがあることです。

 

 

農園カフェ「遊茶庵」の紹介は、次ページに続きます。

「遊茶庵」は、茶農家の「竹西農園」さん直営。日本茶インストラクターの資格を持つオーナーの竹西多香子さんが、本格的な美味しいお茶を淹れてくれます。

特製のスィーツもあります。

農家レストランでもあり、地元でとれた野菜をふんだんに使ったランチもいただけます。

お庭や田園風景を眺めるための大きな窓もあり、ゆったり流れる里山時間を満喫することができます。

 

遊茶庵

http://www.yamatocha.net

 

 

 

もうひとつ、田原には印象深い農作物があります。

それはリンゴです。

関東以北に住んでいる者にとっては、リンゴ畑はそれほど珍しいものではないのですが、平均気温が高い関西以南では、リンゴを作るのは難しいようです。しかし、冷涼な気候の田原には、奈良県下唯一のリンゴ農園である「窪田りんご農園」があり、地元の方の人気を呼んでいます。10月下旬から11月にかけてはリンゴ狩りを楽しむこともできます。貴重な関西のリンゴは、長野や青森のリンゴとは違う味がするのでしょうか。

 

次ページに続きます。

田原には、いにしえの奈良を感じさせる史跡もあります。

まずは、太安万侶(おおのやすまろ)の墓。古事記を編纂したことで知られる人物です。

しかし、その出生の年代なども不明なため、実在の人物かどうか疑問視されていました。

1979(昭和54)年、この場所にあった茶畑で農作業をしていた方が、偶然、土の中に穴があるのを発見し、そこにあった骨や「太朝臣(おおあそ)」と書かれた板などを調べたところ、太安万侶の墓であることが判明。これは、当時、日本史を揺るがす大事件として報道されました。

その近くには、第49代天皇、光仁天皇の陵もあります。光仁天皇は62歳の時に藤原氏の強い後押しで天皇に即位した、天智天皇の孫に当たる方で、息子には、平安京遷都を行った第50代天皇の桓武天皇がいます。このような重要人物の陵が点在する田原は、奈良時代には、もっと中央の政治や文化とかかわりが深い土地だったのかも知れません。

田原には、無形民俗文化財の祭りも継承されています。

こちらは、一年おきに「田原の祭文踊り」、「おかげ踊り」という行事が行われる今井堂の天満神社です。拝殿には多数の絵馬が奉納され、往時の賑わいを想像することができます。

参道の杉並木にも、いかにも神の棲む場所らしい神聖な空気が漂っています。

山里歩きは、これからの季節がもっとも快適で楽しいです。寺社巡りもよいですが、たまには、こんな少し違う奈良にも出かけてみてください。

 

田原に関する詳細はこちらをごらんください。

https://narashikanko.or.jp/wp-content/themes/nara-portal/pdf/pamphlet_pdf/tawara.pdf

 

今回使用した写真の一部は竹西農園さんからご提供いただきました。

 

 

吉田さらさ

公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

個人Facebook

https://www.facebook.com/yoshidasarasa

イベントのお知らせページ

https://www.facebook.com/yoshidasarasa2

 


おでかけ女史組の正しい楽しみ方
おでかけ女史組 キーメッセージ おでかけ女史組 キーメッセージ
<前の記事

<前の記事
第64回/リピーターにお勧めの金沢とっておきスポット「石川県文化財保存修復工房」

次の記事>

次の記事>
第66回/アートになったドラえもんに会いに行こう

この連載の最新記事

日本の食事の歴史を知る興味深い視点の展覧会「うましうるはし日本の食事(たべごと)」

第219回/日本の食事の歴史を知る興味深い視点の展覧会「うましうるはし日本の食事(たべごと)」

美食家に人気の銀座「すがの」でこの上なく美味しい鴨を堪能する

第218回/美食家に人気の銀座「すがの」でこの上なく美味しい鴨を堪能する

生誕130年記念 北川民次展─メキシコから日本へ メキシコの大地と人々のエネルギーを 描いた日本人画家

第217回/生誕130年記念 北川民次展─メキシコから日本へ メキシコの大地と人々のエネルギーを 描いた日本人画家

この連載をもっと見る

今日の人気記事ランキング

OurAgeスペシャル