第二次世界大戦後、吉田茂首相の側近としてマッカーサー元帥との折衝にあたり、日本国憲法の成立にも深くかかわった白洲次郎。その妻として、文学、骨董の世界で名をはせた正子。
この二人が1943年から都会の喧噪を離れて家族と過ごしていたのが、東京都町田市の鶴川にある「武相荘(ぶあいそう)」。当時のままの母屋がミュージアム、工作室がレストラン、 離れがバー、ガレージがカフェとなり一般公開されています。名前の由来は、武蔵野と相模が隣接する場所にあることと、無愛想との語呂合わせだそうです。1月の晴れた日に新鮮な空気を求めて友人と訪れました。小田急線鶴川駅からタクシー、バスも出ていますが、お天気がいいので、15分ほど徒歩で向かいました。
木枠の門を抜けると、木漏れ日をうけた「武相荘」の文字が目に入ります。こちらはもと「工作室」のレストランです。
お昼時だったので、レトロなガラス引き戸脇のテーブルで、ビーフシチューと海老カレーをいただきました。
カレーは白洲家のレシピで。
野菜嫌いだった次郎のため、玉ねぎ、にんじんなどは全て擦りおろし、キャベツは好物だったので千切りで添えるというスタイルです。玉ねぎの甘さとスパイスの風味が味覚を刺激し、マイルドながら印象に残る美味しさでした。スープは根菜の旨味が溶け出しモツなどが入っていて、滋味あふれる味わいです。
ビーフシチューはワインにつけ込んだスネ肉が、ホロリと崩れる柔らかさまでコトコト煮てあります。パンがトーストされているのも、シチューとの相性を考えてこと。スープがしみ込んだ大根が少し和風なのもユニークです。
食事のあとは、バーに移動。次郎が使っていたタイプライター、マッカーサー元帥が座った椅子などが展示されています。英国から輸入したバーカウンターには陶器のビールディスペンサー、ダンディズムがあふれた空間です。次郎が英国留学で身につけたダンディズムを感じながら、20世紀初頭のロンドンにタイムスリップしたかのような雰囲気でグラスを傾けるのは乙なものですね。
こちらは当時の二人の生活をそのまま残したミュージアム。もと農家の土間の部分が洋風の居間になっています。洋酒好きだった次郎、ウィスキーやバーボンのボトルが並んでいます。友人との語らいのひと時を切り取ったかのように、 時がそのまま止まってしまったかのような ディスプレイです。
他にも、囲炉裏がきられた部屋に並ぶ正子が収集した骨董品と着物、書斎など、二人の感性にあふれた生活がうかがえるポイントがたくさんあります。
小旅行気分で、おでかけしてみてはいかがでしょうか。
【武相荘】
東京都町田市能ヶ谷7-3-2
042-735-5732
レストラン&カフェ 11:00~20:30 (LO)
ミュージアム(展示)10:00~17:00 (入館16:30まで)
月曜日休館