前回までは、アワエイジ世代に骨折が急増する理由をご紹介してきました。今回からは、骨密度だけではなく、骨質も大切であることをみていきます。
強い骨プロジェクト⑪
骨の強さは骨密度+骨質。
骨の糖化に要注意!
骨の強さを判定する指標として、よく知られているのは骨密度です。骨の中のカルシウムなどのミネラル量を測定する方法で、現在、骨粗しょう症の診断も骨密度で行われています。
「もちろん骨密度は重要ですが、実は骨の強さはそれだけではなく、“骨の質”も関係していることが明らかになっています」(斎藤充先生)
実際に骨密度が正常なのに、レントゲンを撮ったら、骨粗しょう症で骨折していた、薬で骨密度を増やしているのに、骨折を予防できなかった…という例がよくあるというのです。
「骨の質とは骨内のコラーゲンの質のこと。骨の構成成分というと、カルシウムのイメージですが、体積でいうと約50%はコラーゲンでできています」
骨を鉄筋コンクリートの建物にたとえると、コンクリートに相当するのがカルシウムなどのミネラル、鉄筋の役割を果たすのがコラーゲンです。コラーゲン架橋は鉄筋同士をつなぎ止める“梁”に当たります。確かに建物の場合も、コンクリートだけを増やしても、鉄筋がしっかりしていなければ強度は保てません。
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「コラーゲン架橋が規則正しく、しっかりしているものを善玉架橋、一方、無秩序に分子をつないだものが悪玉架橋といいます。善玉架橋は適度な弾力を保ち強度がありますが、悪玉架橋はしなやかさがなく、もろい陶器のような状態です。悪玉架橋の本体は一般的に「後期糖化・酸化生成物=AGE s※」という物質です。名前からわかるように、糖化と酸化が進んだ状態で、さまざまな要因が考えられますが、加齢に伴っても増えてきます。
つまり『悪玉架橋が多い』=『コラーゲンの質が低下』=『骨質の低下』というわけで、こうした骨だと、骨密度が高くても、骨折しやすくなります」
※タンパク質の糖化反応(メイラード反応)によってつくられる生成物
特に動脈硬化や高血圧、糖尿病、心血管障害などがある人に、悪玉架橋が多い骨質の低下の傾向があるといいます。しかし、こうした病気の人だけでなく、閉経後は誰でも骨密度だけでなく、この骨質の低下も進むというので、他人事だと油断して、見逃すわけにはいきません。
正常な骨と糖化した骨
骨を鉄筋コンクリートにたとえると、鉄筋の役割を果たすのがコラーゲン線維です。隣り合う
コラーゲンの分子間をコラーゲン架橋がつなぎ止めているような構造になっています。
正常な骨
正常で質のいい骨はコラーゲン分子の間を、善玉架橋が規則的に並んでいます。これにより、しな
やかで丈夫な骨が形成されます
糖化した骨
コラーゲン分子をつなぐ架橋が、糖化や酸化ストレスにさらされて悪玉化。こうなると善玉架橋が減少し、質の悪い悪玉架橋が増えていきます
次回は、骨質を判断する基準についてご紹介します。
構成・原文/山村浩子