前回までに、50歳は骨の曲がり角であるさまざまな要因についてみてきました。では、ここからは今から実践しておきたい骨を守る方法についてご紹介します。
強い骨プロジェクト⑬
近い将来、骨の劣化タイプに
合わせた医療が可能に?
私たちは今、骨のためにどんなことに気をつけて、何をしたらいいのでしょうか?
「骨の老化は特に自覚症状はありません。骨密度は閉経前の月経が不順になる頃から低下しはじめます。まずはその前に一度、自分の基準値を知っておくといいでしょう。次に閉経した頃に測り、下がり具合を確認し、その後は定期的に観察していくのがおすすめです」(佐藤先生)
骨密度を測定する方法は、いくつかありますが、最も正確で、確定診断が下せるのが「DXA(デキサ)法(二重エネルギーX線吸収測定法)」です。腰椎や太もも付け根の大腿骨、手首の橈骨遠位端(とうこつえんいたん)で測るのが一般的です。ただし、計測には痛みや骨折などの症状がなければ保険がきかず、実費になります。また、機器が備わっている施設が限られます。
ほかに気軽に受けられるMD法(両手のX線撮影法)、QUS法(超音波法)などがありますが、精度は高くありません。
骨粗しょう症の診断は、20~44歳の平均値「YAM値」と比較します。骨密度がYAM値の80%以上が正常。70~80%なら骨量減少。70%未満、もしくは80%未満でも脆弱性骨折があれば、骨粗しょう症と診断されます。YAM値が70~80%だったら、早めの対処が必要です。
しかしながら、前ページで触れた通り、骨の強度は「骨密度+骨質」です。この「骨質」がどんな状態かを知るためには、血液中のホモシステインか、尿中か血液中のペントシジンを測る「骨質検査」で判定します。実施しているのは、まだほんの一部の医療機関に限られ、骨粗しょう症に対しては保険適用外ですが、これを保険適用で検査できるようになる日は、そう遠くなさそうです。
「そうなれば、低骨密度型か、骨質劣化型かなどのタイプによって、テーラーメイドの医療が可能になります。例えば、骨粗しょう症の治療薬には骨密度を高めるように働くものと、骨質を高めるものがあるので、それを使い分けることができるのです」(斎藤先生)
佐藤公一さん
斎藤 充さん
次ページで、骨密度の検査法をまとめました。
骨密度検査を!
45歳を過ぎたら、一度は骨密度検査を受け、できたら定期的に測定して変化を観察することが大事。検査方法で最も精度が高く、診断に使われるのがDXA(デキサ)法です。
骨密度の検査法
DXA法
2種類の微弱なX線を照射して、骨を通過できなかったX線量から骨密度を測定。治療の診断や骨折リスクの判定に使われます
MD法(両手のX線撮影法)
手のひらとアルミ板をレントゲン撮影して、画像の濃淡で骨密度を算出。ただし、骨粗しょう症の早期発見がしにくいのが欠点
QUS法(超音波法)
かかとの骨に超音波を当て、その減弱や速度を計測して骨量を推定します。手軽ですが誤差が多く、診断には使えず、あくまで目安に
骨粗しょう症の治療薬の比較
骨粗しょう症の治療薬(骨折時にも使われることがある)にはさまざまなタイプがあり、骨の密度と質に対する効き目に得意分野があります。骨の劣化型によって選ぶことが重要といえます。
次回は、骨を丈夫にする生活習慣についてご紹介します。
構成・原文/山村浩子