脳を元気にする「ブレインフード」徹底研究
認知症患者が激増している今、健康寿命を延ばすには、まず、脳の元気を保つこと!
それが、毎日口にするもので変わってくるとしたら、その食材と食べ方を、ぜひ知りたいもの。
実は身近にあるブレインフードに注目して、毎日の食卓の工夫からできることを、探してみました!
ここでは、2回に分けて脳を元気に保つための食事について、心療内科医で医学博士の姫野友美先生にお話をうかがいました。
若々しい頭と心を保つカギは脂質&タンパク質
脳を元気にする食事とは?
脳機能の低下は、OurAge世代の私たちの悩みのひとつ。
でも、それは「年のせい」だけではありません。食事が大きくかかわっています。
もう一度食生活を見直して、元気な脳を取り戻しましょう!
今回は、若々しく元気な脳を保つために必要なことについて教えていただきます。
DHAが脳細胞を柔らかく!
適度なコレステロールも必要
昔から、思考が柔軟な人を、「頭が柔らかい」と表現しますが、実際に活発に動く脳は柔らかいのだとか。
「思考する際、人間は脳内に張り巡らされた神経細胞同士で神経伝達物質を受け渡し、情報を伝えています(図1)。そして、神経伝達物質を受け取る受容体が確実にキャッチできるようにするには、自由に動ける柔らかい細胞膜が必要です」と姫野友美先生。
脳細胞の柔らかさはおもに、含まれる脂質の種類で決まります。DHAなどの不飽和脂肪酸が多く含まれていると、脳細胞が柔らかくなります。
「細胞膜を構成するリン脂質には、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸が結合しています。飽和脂肪酸は直線状のため、これが多いとリン脂質が隙間なく詰め込まれた状態に。そうなると受容体が自由に動けず、神経伝達物質を素早く確実にキャッチできません(図2)。また、コレステロールはリン脂質の間でクッションの役割をし、受容体の柔軟な動きを助けます。ですから、コレステロールも脳に必要です」
DHAには神経細胞の分化を促し、増やす働きもあります。
神経伝達物質や受容体の
材料になるタンパク質
脳細胞の柔軟さにかかわる脂質は、脳の構成要素の約50%。続いて約40%を占めるのがタンパク質です。タンパク質は脳内で情報の受け渡しに使われる神経伝達物質や受容体の材料になります。
「脳には1000億〜2000億個の神経細胞があり、さまざまな情報が電気信号となって駆け巡ります。そして、神経細胞同士のつなぎ目『シナプス』では、電気信号が神経伝達物質となり次の細胞に渡されます」
タンパク質不足により、神経伝達物質が減ると神経細胞間の情報の受け渡しがうまくいかず、思考が働かない状態に。また、やる気や幸福感に関与する神経伝達物質が不足すると心理面に悪影響を及ぼします。
脳の働きをサポートする
ビタミン&ミネラル
神経伝達物質の材料となるタンパク質ですが、脳活動に利用するには、これらを合成したり、効果的に働くのをサポートしたりする微量栄養素が不可欠です。ビタミンB群をはじめとするビタミン類や鉄、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを意識してとる必要があります。
血糖値の乱高下は
脳を疲労させる
糖質のとりすぎで血糖値が急上昇すると、血糖値を下げる働きを持つインスリンが大量分泌され、今度は逆に低血糖に。脳のエネルギーは切れ、眠気、集中力低下、疲労感を招きます。糖質は「脳の唯一のエネルギー源」ではありません。脂質を代謝したあとにできる副産物「ケトン体」も利用されます。
次回は、脳を元気にするために姫野先生が推奨する7つの食事ルールをご紹介します。
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/瀬戸由美子