万葉の里・高岡で古代に思いをはせながら昆布締めをいただきました
私が講師として参加している「熱中小学校」のプロジェクトで富山県の高岡市に行ってきました。
熱中小学校とは「もう一度7歳の目で世界を」をテーマにさまざまな活動を行う、大人の学びの場。各地域(国内19か所、海外1か所)で、地域に根差した、地方創生に寄与する活動を行っています。
2019年からは、万葉弁当を作るプロジェクトが高岡で始まり、私はレシピを考案と調理を担当。コロナ禍で中断していましたが、今年は久々に、高岡熱中寺子屋7周年イベントで、関係者100人に、万葉集にちなんだ食材を使った「万葉弁当」を出しました。
高岡は万葉の里と言われ、日本最古の歌集『万葉集』の代表的歌人・大伴家持が国守として5年間在任し、数多くの歌をこの地でも残しました。高岡に赴任していた期間に詠まれたものが、223首あるそうです。
毎年10月に、古城公園の濠に設けられた特設水上舞台にて、応募した2,000人を超える人々が、万葉集全20巻4,516首を三昼夜かけて歌い継きます。今年は私も、朗唱に参加してきました。
衣装を借りることも可能。私も万葉人の衣装を着て参加しました
さて、富山県と言えば、魚がおいしいことで有名ですよね、ブリ、白エビ、ホタルイカなど。季節のお寿司を楽しみました。そして、富山県で多く出会った料理が「昆布締め」。タイやヒラメなどの白身魚を締めたものが有名だと思いますが、そのほか、野菜や豆腐なども昆布締めにするそうです。
こちらが、高岡で地元のみなさんと一緒に作った昆布締め。ほんのりとした昆布の香りと旨味が素材に移っていて、しみじみとするおいしさでした。
エリンギ、ほうれんそう、豆腐、もみじ型で抜いたにんじんなどを、昆布に挟んで締めました
富山県は昆布の消費量が多く、昆布を使った料理多いということですが、みなさんご存じでしょうか。
私は意外だなと思いました。というのも、昆布の産地といえば、すぐに思いつくのは北海道。調べてみると、やはり国内の昆布の「生産量」は、北海道が約9割を占めているようです。ところが、昆布の「消費量」となると、富山県が全国でもトップクラスなのだとか。そこで、その理由を地元の人に聞いてみると、古くからの、北海道と富山の交流が関わっていることがわかりました。
昆布の採集は、江戸時代に入って盛んになったということですが、当時、北海道と日本海沿岸の地を、北前船と呼ばれる船が行き来していました。北前船によって、北海道で収穫された昆布が日本海の沿岸の地に運ばれ、北陸からは米を中心に、酒、しょうゆ、薬が北海道へと運ばれていたそうです。
そして、明治以降、富山県から全国各地に移住する人や出稼ぎに行く人が増えましたが、その行き先は北海道が多かったとのこと。昆布の産地として有名な羅臼町の住民の7~8割が富山県出身者だったそうです。北海道に移り住んだ人々が、故郷の富山の家族や親戚に昆布を送ることが多かったことから、富山県民が昆布に親しんでいったと思われます。北前船が運んできた北海道の昆布と、富山湾で捕れる魚を組み合わせて一品、といったところでしょうか。
特に有名なのは、白身魚の昆布締め。昆布で締めることで、魚に昆布の旨味が移しながら熟成。弾力が出ます。また、魚の余分な水分を吸収し、日持ちを良くするという効果もあります。冷蔵庫がなかった時代、生魚の保存方法として多く用いられていたようです。
高岡では、昆布締めをハレの日によく作るそうです。昆布の上にのせたまま食卓へ。東京に帰ってきて、豆腐とエリンギで再現してみましたので、ご紹介します。
エリンギと木綿豆腐の昆布締め
【材料】(作りやすい分量)
エリンギ 1~2本
木綿豆腐 1/4丁
昆布(10×10cm)4枚
酢 適量
【作り方】
①酢を昆布の片面に塗る。酢を塗った面に、ゆでて薄くスライスしたエリンギを敷き詰める。
②①の上にもう一枚、昆布をのせる。
③昆布と中身がしっかりくっつくようにラップの上から押さえ、軽く重石をして、冷蔵庫で一晩寝かせる。
④豆腐も薄くスライスし、エリンギ同様、①~③の手順で締める。
お好みの具材を使って、いろいろな昆布締めを楽しんでみてくださいね。