【右】小林まさみさん
料理研究家。会社勤務を経験後、調理師学校に通い料理の道へ。テレビのフードコーディネーターや料理愛好家・平野レミさんなどの助手を経て独立。実用的でわかりやすいレシピと何度でも食べたくなる家庭的な味に定評があり、テレビや雑誌、料理教室などで活躍中。『血糖値を下げる1か月献立』(Gakken)、『毎日何を作るか、悩む人へ。まさみ式考えない晩ごはん』(オレンジページ)など、著書多数。
■インスタグラム/https://www.instagram.com/kobayashimasami.masaru/
【左】小林まさるさん
1933年生まれ。終戦後15歳で樺太から北海道に引き揚げる。炭鉱の機械エンジニアになり、27歳からは3年間ドイツに赴任した経験を持つ。定年後は息子夫婦と同居。70歳より、義娘(息子の妻)まさみさんの調理アシスタントに。現在は自身もシニア料理研究家としても単独でテレビ、雑誌、書籍などで活躍中。著書に『人生は、棚からぼたもち!』(東洋経済新報社)など。You Tubeの動画配信「小林まさる88チャンネル」では、持ち前の明るいキャラクターが話題を呼んでいる。
■You Tube/https://www.youtube.com/@user-tk9ur8bu8s
OurAge世代の料理研究家と91歳のアシスタント
小林まさみさんは、さまざまなメディアで活躍する人気の料理研究家。シンプルで、ほっとする家庭的なレシピが幅広い年代から人気を集めています。
まさみさんを20年以上「アシスタント」として支えてきたのが義父(夫の父)の小林まさるさん。91歳となった今も現役で、撮影前の買い物から、料理の下ごしらえ、洗い物、掃除といったアシスタント仕事を、すべてこなしています。生き生きと働くまさるさんの姿は、「人生100年時代」といわれる今、お手本にしたい「スーパー高齢者」として、注目の的になっています。
それにしても「義娘が先生で、義父がアシスタント」というのは、一般的にはかなり珍しい組み合わせ。まさるさんはどのような経緯で、まさみさんのアシスタントになったのでしょうか?
必要に迫られて始まった「義娘と義父」の異色コンビ
まさみさんが結婚したのは25歳のとき。結婚を機に、義父まさるさんとの同居生活が始まりました。
「私は結婚後、会社勤めを続けながら、料理研究家を目指して調理師学校に通い始めました。その頃から、お義父さんは『家事は俺がサポートするから、まさみちゃんは自分のやりたいことをやればいい』と応援してくれました」(まさみさん)
その後、まさみさんは会社を辞め、8年間、料理愛好家の平野レミさんなどのアシスタントを務めた後に独立。いよいよ自分の料理本を出すことになりました。ところがこのとき、アシスタントが足りないという事態に。そこで立候補したのがまさるさんでした。
「まさみちゃんが料理研究家になるまでは、その仕事がどんなものか全然知らなかったけれど、これが本当に大変そうだった。夜中まで仕込みをしていたかと思ったら、翌日は早朝から出かける。それで、あるときアシスタントが足りないというので『俺がやるよ』って言ったんだ。野菜を刻んだり、洗い物したりするのは得意だから、任せておけってね」(まさるさん)
↑まさみさんの動きを見て、素早くサポートに入るまさるさん
実はまさるさんは、若い頃から日常的に料理を手がけてきた家事の大ベテラン。一度離婚を経験し、一時はシングルファーザーとして二人のお子さんを育て、毎日の食事作りをしていました。その後、元妻と復縁したものの、妻は体調をくずしがちだったため、料理をはじめとする家事はまさるさんが担当。さらに、57歳で妻を亡くし、その後も同様に暮らしてきたので料理はお手の物でした。
初めて参加した料理の撮影で、まさるさんはみごとなアシストぶりを発揮。それ以降、まさるさんは料理アシスタントとして、まさみさんの仕事を手伝うことになりました。こうして、後にお茶の間の人気者となる名コンビが誕生したのです。
シニア料理研究家としての活動は認知症予防にも
息子の妻が料理研究家になったことから、思いがけず料理の世界に足を踏み入れたまさるさん。その後、まさみさんのアシスタントとして、メディアに登場することが多くなりました。そして、「シニア世代の男性」という風貌からは想像もつかない、テキパキと手際よく料理をこなす姿に多くの人が注目。瞬く間に人気者になっていきました。
今では「シニア料理研究家」としてひとりでも活動。自身のレシピをまとめた書籍を出版したり、テレビや雑誌でレシピを紹介したりしています。
そんなまさるさんが作る料理の魅力は、思い立ったらすぐに作れる手軽さと、「ありそうでなかった」組み合わせや味つけ。こうしたレシピを、まさるさんはどのように生み出しているのでしょうか?
「レシピを考えるときは、まず冷蔵庫を開けて何があるかを確認するところから始まるよ。それで、そこにある材料の中から何を組み合わせて、どう調理するかを考える。同じ材料でも、揚げ物にするのか、炒めようか、さっとゆがいたらどうだろうかとか考える。あとは味つけ。しょうゆ味なのか味噌味なのか、塩・こしょうだったらどうかなとか。どうやっておいしく食べるかを考える。これは、すごく頭を使う作業だから、いい頭の体操になるよ」(まさるさん)
こうして思いついたアイデアやレシピは、どんどんノートに書いていきます。
↑75歳頃から書きためてきたレシピ帳。その日に感じたことを日記風に綴ることも
また、スーパーで食材を見ているときに、ふと、この魚はこんなふうに調理したらおいしいのでは? とひらめくこともあるといいます。寝る前にふっと、作ってみた料理が浮かんでくることも多いので、そんなときはすぐにメモできるよう、レシピ用のノートは枕元に置いています。
納豆と鮭の組み合わせで、タンパク質をたっぷり
今回ご紹介するレシピを担当するのはまさるさん。「納豆、塩鮭、玉ねぎのあえ物」を披露してくれました。お酒が大好きなまさるさんが、酒のつまみとして考えたレシピです。
「冷蔵庫に、朝食用に買ってあった鮭と納豆があったんで、それを使ってさっと、つまみ風の一品を作れないかな、と考えたんだ。鮭の臭みを消すために玉ねぎをちょっと加えたよ」(まさるさん)
おつまみにもご飯のお供にもなる一品。手早く作れるというのもうれしいですね。
タンパク質をダブルで摂取。納豆×玉ねぎで腸活も!
鮭には、老化予防の効果が高い抗酸化成分「アスタキサンチン」が含まれています。また、高齢になってあっさりとした食事を好むようになると、タンパク質が不足しがちですが、鮭と納豆の組み合わせなら、植物性と動物性のタンパク質をダブルで摂取できます。
また、腸の善玉菌のエサになるオリゴ糖を含む玉ねぎを、発酵食の納豆に組み合わせることで、腸活メニューとしても最強です。
納豆、塩鮭、玉ねぎの和えもの
【材料(2人分)】
塩鮭(甘口):1切れ(100g)
小粒納豆:1パック(40g)
紫玉ねぎ(薄切り、水に5分さらし水気をきる):1/7個(30g)
ピーナッツ(粗みじんに切る):10g
A)
しょうゆ:小さじ1
ねりからし:小さじ1
【作り方】
①塩鮭は水気を拭き、魚焼きグリル(両面焼き)に並べ、強火で7分焼く。皮、骨を除き、身を粗くほぐす。
②ボウルにAを入れて混ぜ合わせ、納豆、紫玉ねぎ、①を加えてあえる。器に盛り、ピーナッツをふる。
撮影/砂原 文 取材・文/瀬戸由美子