血を補いきれいにする黒い食材で作り置きおかず
鏡を見るたびに、白髪の量が増えた、髪にコシがなくなってぺたんとしてしまう、ツヤがなくなったということはありませんか?
「漢方では髪は『血余(けつよ)』といい、栄養や潤いを運ぶ血(けつ)が全身を巡った余りが髪に届くと考えられています。このことから、髪のトラブルは血が不足しているか、流れが悪くなっている状態ととらえます。
またエネルギーを蓄える『腎(じん)』、血を蓄える『肝(かん)』の働きが弱まると、髪のトラブルにつながるといわれています。逆にいうと、髪にはこの腎や肝の状態が反映されます。
例えば、ストレスが多いと血の滞る『血瘀(けつお)』の状態に、暴飲暴食などの不摂生をしていると『湿熱(しつねつ)』という、余分な湿気や熱が停滞する状態になります。髪に必要な栄養が不足している『気血両虚(きけつりょうきょ)」は、胃腸が弱く、消化不良や消化吸収力が弱くてエネルギーを作り出せない状態です。
こうしたことが、白髪や脱毛、髪にツヤやボリュームがなくなるなどのトラブルにつながります」(谷口ももよさん)
生活習慣に問題がある場合は、それを改めることが重要です。その一方で、積極的に食べるといい食材はどんなものがあるのでしょうか?
「髪の健康を保つためには、黒いものがおすすめです。黒ごま、黒豆、黒米、ひじき、昆布、わかめ、黒きくらげなどです。これらはホルモンバランスをつかさどる腎を高め、血を補い、腎液(じんえき)を活性化してくれます。
今回はこの中でも、黒ごまとひじき、黒きくらげといった黒い食材を使った煮物を紹介します。
黒きくらげは常備している家庭は少ないかもしれませんが、ミネラルが豊富で血をきれいにしてくれる、薬膳に欠かせない食材のひとつ。乾燥のものなら保存が利くのでこれを機に常備食材に入れてみてはいかがでしょうか?
これに、血を補い、髪に潤いを与える黒ごまとひじきを合わせます。にんじんは彩りを添えてくれるだけでなく、これらの食材のミネラル分、特に鉄分の吸収を高めてくれる働きもあります」
【薬膳ポイント】
黒きくらげ
キクラゲ科のきのこです。薬膳では血をきれいにする働きがあり、カルシウムや鉄分などミネラルが豊富。貧血や疲れやすい人にもおすすめです。ビタミンを含む食材と合わせると鉄分の吸収率が高まります。味は淡泊で、ほぼ無臭。乾燥のものは水でもどしてから、必ず熱を加えて調理してください。
黒ごま
黒い食材の代表株。腎や肝の機能を高めて、血を補い、ホルモンバランスを整えます。薄毛や白髪の予防、皮膚や頭皮の乾燥を防ぎ、美髪やアンチエイジング効果が期待できます。
【材料 2人分】
黒きくらげ(乾燥):10g
ひじき(乾燥):10g
にんじん:1/2本
ごま油:大さじ1
しょうが(せん切り):小さじ1
しょうゆ:大さじ2
みりん:大さじ2
黒ごま:少々
【作り方】
① 黒きくらげとひじきは水でもどし、水気をきる。黒きくらげとにんじんはせん切りにする。
② フライパンにごま油を熱し、①としょうがを炒め、しょうゆとみりんを加えて、中火~弱火で8分ほど汁気がなくなるまで炒める。
③ 器に盛り、黒ごまをふる。
「出来たての温かい状態でも、冷めて味がしみたものでもおいしいので、少し多めに作って常備菜に。毎日少しずつ食べて、髪によい栄養をコンスタントに補給しましょう。もう1品欲しいときやお弁当にも重宝します」
【教えていただいた方】
国際中医師、国際薬膳調理師、一般社団法人「東洋美食薬膳協会」代表理事、「世界中医薬学会連合会」理事、一般社団法人「日本豆腐マイスター協会」理事。 「健康は日々の食卓から」と「美食同源」をテーマに、身近な食材で簡単でおいしい薬膳レシピを提案。ヘルシーな豆腐や野菜を中心にしたベジ料理にも精通している。料理本のアカデミー賞といわれるグルマン世界料理本大賞にて、2015年『身近な10の食材で始める薬膳ビューティーレシピ』と2017年『べジ薬膳』で健康料理部門グランプリを受賞。日本における薬膳料理研究家の第一人者として、TVや女性誌などのメディアでも幅広く活動中。6冊目の新著『女性の100の不調を整える薬膳と漢方』(エクスナレッジ)が10月15日発売。
撮影/フルフォード海 取材・文/山村浩子
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