今日は能登のおいしい漬け物床をご紹介します
能登といえば日本海で獲れる豊かな海の幸をはじめ、「おいしいもの」の宝庫として有名ですよね。
ところが2024年の元旦に大地震に見舞われ、食産業も大打撃を受けてしまいました。そして秋には豪雨、冬には大雪。厳しい自然との戦いはまだまだ続いています。
そんな厳しい状況の中、能登の食文化を守ろうと、必死で復興に向けて活動を続けている人たちがたくさんいます。
今日ご紹介する「鳥居醤油店」の3代目店主、鳥居正子さんもその一人です。
鳥居醤油店は大正15年創業。能登半島のちょうど真ん中あたりに位置する石川県七尾市の、一本杉通りと呼ばれる商店街で長年愛されている手作りしょうゆのお店です。
鳥居醤油店ではしょうゆ作りは代々、女性が受け継いでいるとのこと。現在の店主、正子さんは3代目になります。
↑麹室(震災前)にて麹の手入れをする鳥居正子さん(鳥居醤油店HPより)
鳥居醤油店も2024年の震災で建物が大きな被害を受けたといいます。
お店は明治41年に建設された土蔵作りで、国登録有形文化財にも指定されている貴重な建物ですが、地震により建物全体が大きく傾き、蔵の壁は剥がれ落ちました。
また、しょうゆ作りの心臓部である「もろみ蔵」と「麹室」は壊滅的な被害を受けたため、しょうゆの製造はできない状態になってしまいました。正子さんは震災直後、「もうここでしょうゆ作りをするのは難しいのでは…」と、一時は廃業も考えたそうです。
それでも全国各地のお客様から「これからも、あのしょうゆが食べたい」「諦めないで」といった、たくさんの励ましのメッセージをいただいたこと。そして、しょうゆ作りの「命」とも言える「もろみ」を入れてある杉桶には被害がなく、もろみは無事であったことから、「この伝統あるしょうゆ作りの歴史を途絶えさせるわけにはいかない!」と、再開に踏み切ったそうです。
鳥居醤油店は店の奥が作業場で、そこでしょうゆをはじめ味噌や漬物床を作り、販売してきました。しょうゆの原料である大豆、塩、小麦は能登近隣のものを使用。栽培している場所を実際に目で見て確認できるものを使用する、というのが鳥居醤油店のこだわりです。
記事が続きます
製法は昔ながらの手作業。
煎った小麦とゆでた大豆を粉砕したものに、麹菌をふりかけて手で丁寧に混ぜ合わせ、麹室で4日間かけて種麹を育てます。そして種麹を杉桶のもろみに加え、2年間じっくりと発酵・熟成。こうしてできたもろみを「槽(ふね)」と呼ばれる人力の搾り器を使って、ゆっくり時間をかけて絞り、ようやく生しょうゆに。火入れをして完成します。
このような昔ながらの手作業で、丁寧に時間をかけて作られたしょうゆはなんとも風味がよく、全国にファンが多いというのも納得です。
そして、しょうゆを作るときに出た搾り粕を使ったもろみ床に、三河みりんを合わせた「モロトモ漬物床」は、手作りしょうゆ蔵ならではの一品です。
見た目は味噌に似ていますね。封を開けるとふんわりとしょうゆのよい香りが漂います。肉を漬けておいて焼くと柔らかく仕上がります。
私は野菜を漬けるのがお気に入りです。一晩くらい漬けると、しょうゆのほのかな香りとほどよい塩気で、あっさりとしたやさしい風味のお漬物になります。サラダ感覚で野菜をバリバリとたっぷりいただけます。マヨネーズと合わせると、またちょっと違ったまろやかな味になっておいしいです。
今回、大根とにんじんを少し長めに二晩漬け込んでみました。かなり濃いめの味になり、ちょっと古漬けのようでこれもまた美味!
細かく刻んでおにぎりにしてみました。しょうゆの風味がおにぎり全体に広がって、ちょうどよい塩梅になりました。これにお茶をかけて、お茶漬けにしてもおいしそうそうです! ぜひお試しを。