ニューヨークのファーマーズマーケットには、色とりどりの
ニンジン
が大きな葉っぱつきで売られています。オーソドックスなオレンジに加え、パープル、イエロー、そして白が揃う時期。どっさり積まれていると、なかなか壮観です。ファーマーズマーケットで売られているニンジンは細いものが多く、太さや長さも不揃い。でもニンジン特有の香り、コクのある甘み、野性味がより強く、私はこの細いタイプのニンジンの方が美味しいと思っています。
「レインボーキャロット」として、異なる色やちょっとグラデーションが入った色が束ねられて売られていることもあります。なんだかお洒落ですよね! 日本でも、ファーマーズマーケットや「道の駅」のような、産地での直売所などでは、こうした変わった種類のニンジンを見かけることが多いようです。
山盛りで、すごい迫力! でも、一本一本はスマートで表情のある、ファーマーズマーケットのニンジンたち
とはいえ、日本で多く売られている太いニンジンも、NYでもよく見かけます。こちらも最近では甘味が増して美味しくなっているものが多いようです。ご存知のように、ニンジンは、ビタミンAとベータカロテンを特に多く含んでいます。ベータカロテンは体内でビタミンAに変換し、皮膚と粘膜を健康に保ったり、免疫力を強化したりしてくれる重要な栄養素。葉っぱは、根っこの部分よりさらに栄養を多く含んでいますので、葉付きのニンジンが手に入ったら、是非葉っぱも無駄なく使いたいですね。
春夏のニンジンも美味しいですが、秋~冬に向けて再びの旬を迎えるニンジンは、味も濃く甘味も乗って美味しいもの。ただ、ニンジンというと、「栄養が豊富なのはわかっているけどなんとなく地味。煮物などの彩りや付け合わせ向き」と、どちらかといえば脇役食材、というイメージがあるかもしれません。でも、ニンジンもお洒落に使うことは十分可能! 中でも今回は、ほぼ野菜だけで美味しく食べられるメニューを考えてみました。NYでは大人気、最近は日本でも人気の「ヴィーガン料理」(動物性食品を一切含まない料理)としても利用可能なレシピ3つを、ご紹介しますね。
野菜だけのうま味とコクが美味しいニンジンのスープ
ニンジンが旬のうちに是非つくりたいものの1つは、ニンジンのスープです。写真のものは、ニンジンに生姜、玉ねぎ、リンゴ、カボチャ、そして根パセリを加えました。カボチャも秋から冬にかけてが旬。ニンジンの味を邪魔しない程度に加えると、より美味しくなり、どろっとしたテクスチャーも出しやすい感じがします。根パセリはニューヨークでもちょっと珍しいのですが、パースニップに似た白い根っこがついているパセリです。その根っこの部分を加えましたが、手に入らなければセロリ、あるいはエシャロットもいいと思います。
私はなるべく市販のブイヨンの類を使わないで、自然の食材だけで味を出そうとしているのですが、今回は野菜だけでうま味とコクを出すことにこだわってみました。いくつかの野菜と調味料、ハーブを使うことで、いい味を出すことが可能です。
香味野菜とスパイスが決め手の、ブイヨンを使わず野菜のうま味を味わうスープ。ぜひ、試してみて
まずは刻んだ生姜と玉ねぎをオリーブオイルで炒め、玉ねぎが透き通るようになったらカットした他の野菜とリンゴを加えてさらに炒め、ひたひたの水を加えて煮込みます。使ったハーブと調味料はベイリーブス、タイム、塩、黒胡椒。柔らかくなったら火を止めて荒熱をさまし、ブレンダーでどろどろにします。どろどろにする時はあまりみじん切りにしなくていいので、作業が楽な点が嬉しいですね。このスープは温かくても冷たくても美味しくいただけますが、温かくするなら鍋に戻して温めます。お皿に盛ってからニンジンの葉っぱをちょこんと飾りましたが、ニンジンの葉っぱがなければ、代わりにパセリをお勧めします。胡椒を控えめにしたら、お子さんでも食べられるのではないでしょうか。
ニンジンのローストもお勧めです。ローストすることで甘みが一層増します。1センチ角くらいに切ったニンジンに塩胡椒とオリーブオイルをまぶし、175度に熱したオーブンで25分くらい、柔らかくなるまでローストします。色の異なるニンジンを一緒にローストすると、おしゃれ感が増しますね。何かの付け合わせでも美味しくいただけますが、そのままお皿に載せて、こんなお洒落な1品料理にしてはいかがでしょう?
お皿に敷いたのは、ヨーグルト。最近行ったギリシャ料理のレストランで、タコとひよこ豆のサラダの下にヨーグルトとオリーブオイルがこのように敷かれて出てきてとても美味しかったので、そのアイデアを応用してみました。お皿の上にヨーグルトを広げ、その上にオリーブオイルをのばし、ニンジンを感じよく盛り付けます。最後に、細かく刻んだニンジンの葉っぱを散らしました。これももちろん、刻んだパセリで代用できます。ヨーグルトとオリーブオイルと一緒にいただくニンジンのローストは、今までのローストとはひと味違う美味しさ。
ここではグリークヨーグルトを使いましたが、豆乳やココナッツミルクなどをベースにしたヴィーガンヨーグルト(植物性材料のみで作られたヨーグルト)を使えば、このルックスをヴィーガンでつくることも可能です。
水分が多いヨーグルトだと水っぽくなるので、ゆるめの場合は軽く水切りして使うとスッキリした仕上がりに
生のニンジンは固いイメージですが、火を使わないで柔らかく食べることもできます。スライサーで帯状にスライスしたニンジンをボウルに入れ、塩を軽くふります。5分後には食べやすい柔らかさになっていますので、水でさっと洗い流してザルにとります。この塩をまぶす時間が10分になるともっとしんなりするのですが、ちょっと塩気が強くなる気がします。水でさっと洗い流すことで少し塩気は薄まりますが、塩分取り過ぎにも気を付けつつ、塩加減はお好みで調整してください。ニンジンの水気をペーパータオルでとり、ボウルに入れて、オリーブオイル、ワインビネガー、黒胡椒、オーガニックのレーズン、カシューナッツ、ニンジンの葉っぱ少々を加えました。ここでも、ニンジンの葉っぱの代わりにパセリを使ってもOKです。ニンジンの葉っぱはかき揚げにしたり、刻んでキャロットケーキに混ぜたりしたことがありますが、それも美味しかったので、機会があったらお試しくださいね。
リボン状のひらひらしたニンジンは歯ごたえも柔らか。千切りにした「キャロットラペ」より、やさしい仕上がりに