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コロナに揺れるNYの合言葉、「ソーシャル・ディスタンシング」とは?

杉本佳子

杉本佳子

杉本佳子
ファッションジャーナリスト兼美容食研究家
1988年よりニューヨーク在住。1989年よりファッションジャーナリストとしてファッション、ファッションビジネス、小売りビジネスについて執筆。2013年より美容食研究家としても活動し始め、ブログ「YOSHIKOlicious Beauty」とインスタグラムを通じて、美肌効果の高い食材をなるべく使い、美味しくて見た目がお洒落な料理紹介している。見た目がきれいだと気分が上がり、食べて美味しいので嬉しくなり、美容と健康にいいのでさらにハッピーになる「3回ハッピーになる料理」がモットー。ファーマーズマーケットなどで買う生命力のあるオーガニックの食材をなるべく使う。食材の意外な組み合わせでも定評がある。

連載「負けない、メゲない。60代「NYでパートナー探し」の道」の関連トピックに特化した発信をThreadsでやっています。興味をもっていただける方は、是非フォローしてくださいね!

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「人と距離をおく生活」を呼びかける「ソーシャル・ディスタンシング」に覆われたNY

 

世界が新型コロナウイルスに脅かされている今、ここニューヨークでも感染者数が連日増え続けています。そこで、今回は「番外編」として、緊急事態宣言下のNYの現在をリポートします。

新型コロナウイルスは、感染していても症状が出ないと言われているため、自分が感染しているかどうかわからないところが厄介ですね。

そうした中で今、アメリカでは、感染を避けるために人と距離を置くという意味の用語、「ソーシャル・ディスタンシング」という言葉が連日飛び交っています。あえて訳すなら「人と距離をおいた社会生活(おつきあい)」、とでもいうべきでしょうか。かつて新型インフルエンザ大流行のときにできた言葉のようです。

 

ニューヨーク市は緊急事態を宣言。感染者のピークは4月末になると予想されています。22日、日曜日の夜8時からは不要不急の外出を控え自宅待機をするように、と州からの行政命令も出ました。

とにかく感染者の拡大を緩やかにしないと医療体制がパンクしてしまうことから、州と市をあげて「ソーシャル・ディスタンシング」を呼びかけています。CDC(アメリカ疾病管理予防センター)は、人との距離を「最低6フィート(182.88センチ)」とることを勧めると、ソーシャル・ディスタンシングの数値の設定までしています。

 

そんなソーシャル・ディスタンシング時代は、ニューヨークの「食」に大きな影響をもたらしています。
18日の水曜日、私は普段からよく行くユニオンスクエアのファーマーズマーケットに行ってみました。人出はいつもと変わりませんでした。

NYでも人気のユニオンスクエア・ファーマーズマーケット。寒い冬も暑い夏も、いつも人でいっぱいです 

 

でもよく見ると、いまだかつて見たことのなかった光景がみられました。買い物に来た人が直接商品を触ることができないように、それぞれのお店が規制をしているのです。

ロープや幕で仕切られたファーマーズマーケットの店たち。こんな姿は初めて見ます。ここだけが収入源、という方もいるらしいので、安全は死活問題です

 

その前の土曜日にファーマーズマーケットに来た時は普段通りでした。実はその時、並べられたりんごや葉野菜などを目にして「今まで通り素手で触ってとっていいのかしら、もしかしたら感染している人が触ったかもしれない可能性があるのに」と、すでに心配に感じました。出店者たちもきっと、そういう危機感に気づいたということなのだろうと思います。

 

 

オーガニックの食料品を多く扱うことで人気のスーパーマーケットチェーンのホールフーズマーケットでは、普段いろいろな総菜をお客さんがトングなどを使って好きなようにとることができるコーナーが一変!すべての総菜が廃止されて、トレイは空っぽです。

 

これでも営業中。バイキングが危険視されている中、仕方ないですね 

 

ベーグルやデニッシュなどのコーナーも、いつもは指定の紙でつかんで紙袋に入れるようになっていましたが、1つ1つ透明ビニール袋に入れられていました。これも今までなかったことです。

日本では普段から見かけますが、「焼きたて」イメージがそがれるビニール入りのパンはNYでは珍しいのです

 

ちなみに、一部のスーパーマーケットは、朝早くにシニア層だけが入れる時間帯を設けるようになりました。シニア層は新型コロナウイルスに感染するリスクが特に高いと言われています。年配者は人ごみに出るだけで怖い、でも食料品を備蓄して外出する機会を減らさないといけないと思っていることでしょう。そんなシニア層が少しでも安心して買い物できるようにという配慮なのです。

 

 

レストランには寒風が。デリバリー等専門店は「コンタクトレス」(非接触)を売りに健闘中

 

一方、レストランとバーは16日夜8時以降、営業停止が命じられました。イートインは禁じられ、テイクアウトとデリバリーのみが認められています。急遽対応せざるを得なくなったレストランは、さまざまに工夫を凝らしています。

 

ハーレムにあるソウルフードで有名なレストラン、シルビアズの前にはこんな看板が

人気の高いサラダ専門店チェーンのスイートグリーン。あらかじめアプリなどでオーダーしたお客さんたちが、ドア越しに受け取る仕組みです。ここでは、お客さんは中に入ることすらできません

 

マクドナルドでは、受け渡しのカウンターまでは入れますが、座席で食べることはできないように規制線が張られています

 

ミッドタウンの韓国料理のレストランでも、奥のカウンターに取りにいくだけで、椅子はすっかり取り除かれていました

 

 

しかし、デリバリーとテイクアウトだけでは、とてもニューヨークの高い家賃や光熱費を払っていくことはできません。ニューヨークの著名なレストランオーナー、ダニー・マイヤーが率いる「グラマシー・タバーン」、「マンハッタ」、「ユニオンスクエアカフェ」など22のレストランを抱える大手レストラングループのユニオンスクエアホスピタリティーグループは、従業員の8割にあたる約2千人を解雇しました。
同社はこれに先立ち、同社従業員のための救済基金を設立し、「グループ内のレストランで使える商品券を買ってください、その売り上げは100%その基金に使います」と呼びかけていましたが、それも焼け石に水ではないかと思います。

 

一方、宅配やピックアップ(テイクアウト)専門に料理を提供してきた会社は、元々それだけで採算がとれる仕組みができているので、一般のレストランより生き残れるチャンスはあるのではないでしょうか。そうした会社から来る宣伝のイーメールで、「今、コンタクトレス・ピックアップ&デリバリーを提供しています」と大きな文字で明記しているものがありました。「コンタクトレス」=「非接触」での、ということですね。マスクと手袋をしたスタッフが配達を担当、家の前に置いたことをお客に電話やテキストで知らせ、お客に面と向かって渡さないといったやり方がとられています。支払いもキャッシュレスが主流。

新型コロナウイルスの感染が続く限り、こうした「ソーシャル・ディスタンシング」の流れは続くと思われます。

 

 

 それでもメゲない私たちは、ZOOMやグーグルハングアウトでバーチャルパーティ!

いつ明けるともわからない緊急事態と「ソーシャルディスタンシング」。でもやっぱり、ずっと人に会わないでいるのは寂しいですよね。そこで、私の身近でも、「バーチャル飲み会」「バーチャル女子会」が流行りつつあります。実は私、3月19日が誕生日なのですが、友人でたまたま17日が誕生日の人と18日が誕生日の人がいたので、3人に共通の友人が「バーチャルでお誕生日会しよう!」と提案してくれて。さっそく18日夜にウェブ会議アプリの「ズーム(ZOOM)」を使ってお誕生日会をしました!

 

それぞれ好きな飲み物を手に手に画面の前に集まれば、まるで一緒にいるみたいに話がはずみます

 

各自飲み物食べ物を用意して、スマホに向かって乾杯! 17日に誕生日だった友人がケーキの残りにキャンドルをたてて、それをみんなでバーチャルで吹き消して(笑)。1時間以上おしゃべりして、楽しかったねー! とみんな満足。私は他にも別の顔ぶれで「バーチャルお茶会」の予定がありますし、当面はこういう社交が続くのかなと思っています。日本でも「オン飲み」というのが流行りつつあるそうですね。

 

記念日やお祝い事も、バーチャルへ。3月末にベビーシャワー(妊婦さんを主役に家族・友人でお祝いするパーティー)を計画していた友人夫妻も、バーチャルなベビーシャワーに切り替えました。グループチャットのできるビデオ通話サービス、「グーグルハングアウト」のリンクがあらかじめ送られてきて、パーティー開始時間にそのリンクをクリックすると参加できる仕組みです。新入社員の歓迎会を在宅勤務している社員たちでバーチャルでやることになったと言っている友人もいます。

 

テレビでも、どなたかが「ソーシャル・ディスタンシングは、ソーシャル・アイソレーション(社交を離れて1人ぼっちでいること)ではない。エモーショナル(感情的)な繋がりが大事」と話していましたが、本当にそうだと思います。社会不安がこれだけ大きい中、1人ぼっちで誰とも会話をしないで閉じこもっていたら、精神的にきつくなってくるでしょう。バーチャルでもおしゃべりし、悩みや心配事を聞いてもらうことで、気分的に少し楽になってくることは間違いないと思います。

 

 

 

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