ロックダウン解除間近のNYで、レベルアップする個人&店舗のコロナ対策
コロナ禍に覆われたNYからのレポート、最新の第三弾をお送りします。
全土でロックダウンが行われていたアメリカですが、5月に入って徐々に自宅待機命令が解除され始めました。ニューヨーク州でも北部の方は解除されましたが、マンハッタンは今も自宅待機が続いています。単独での散歩やエクササイズは認められているのですが、飲食店の食事はいまだテイクアウトやデリバリーしか認められず、徒歩圏以外に出かけることもほぼできません。
ニューヨーカーはコロナの恐怖を抱えながら、こんな息詰まる日常を二ヶ月半も過ごしていたことになります。
その反動もあり、気温が上がるにつれて外に出る人が増えています。レストランやカフェの中には、店の外にテーブルを出すところが出てきました。16日に営業再開したこのカフェ、店内での飲食は今も禁止で、宅配とお持ち帰りのみ受け付けているのですが、店の外のテーブルで食べられるようにしています。少しでも売り上げを増やしたいという考えなのでしょう。
まだ人出の少ない街角は、寂しい様子。一方で、予防を考えるとホッとする思いも。でも、経営が厳しいお店の立場になるとそれも辛い。気持ちがさまざまに揺れます
あまりにも久しぶりでしたので、私もアーモンドクリーム入りクロワッサンとコーヒーを中で買って、外でいただきました。当たり前にできていたことが2ヶ月以上できなかったので、新鮮で有難い気持ちになりました。
美味しいクロワッサンと淹れたてのフレーバーコーヒー。コロナ前は、日々何気なく手にしていましたが、 今久しぶりにいただくと、ありがたさが胸にしみます
カフェのガラス窓には、コロナ対策で「消毒済」の証明書が貼られていました。店内での飲食はできませんが、パン、ドリンク、軽食を買うことはできるので、「安心して入ってください」のメッセージも添えられています。
カフェの入口には日付が明記された消毒証明書が貼られ、清潔さをアピール。オーダー後は店外で待つ仕組み。店内に入れる人数を制限するお店も多くなりました。こうした配慮があると、利用する人にとって安心なのは確かです
お店の人によると、当面10日に1回、業者に消毒してもらうそうですが、来店者数が増えてきたら週1回にしないといけないとのこと。そして、この専門業者に頼むと1回の消毒に750ドル(約8万円)かかるそうです! 「高いから交渉したよ」と言っていましたが、大変な負担ですよね。
店内のトイレは、お客の店内滞留禁止に加え、消毒をより増やさないといけないからという理由で使用不可です。トイレが使えないと、気楽に食べたり飲んだりできません。以前のように外食できる日が1日も早く戻ってきてほしいです。
こちらの酒屋さんでは、ドアと店内のカウンターに「この店は毎日厳しく消毒しています」という表示が貼られていました。張り紙を見る限り、専門の業者を雇っているわけではないようです。まだどの店もこうした表示をしているわけではありませんが、これからあちこちでこういう「消毒済」の表示が増えていくことが予想されます。
お店を営む方々の努力がにじむ、店頭の掲示。これが、コロナ時代のニューノーマルになるのでしょうか?
消費者も、販売店も、工夫をこらしてナイスに「自衛」をアップデート
コロナウィルスは目の粘膜からも感染すると言われていますので、私は家を1歩でも出る時はマスクとサングラスをしてきたのですが(4月の報告参照)、サングラスですと野菜や果物の色を確認しづらかったり、細かい文字を読みにくかったりするので、フェイスシールドを購入しました。この方が断然見やすいです。街中で医療従事者以外の人がフェイスシールドをつけている姿は、まだ「何度か見かけたことがある」程度ですが、状況が状況だからか、違和感は感じられません。
輪郭のなめらかな曲線がエレガントなフェイスシールド。 前回の報告記事の際、街中で見かけたフェイスシールド利用の女性が違和感なく日常に溶け込んでいたのを見て、勇気を得て採用しました
このフェイスシールドはブルックリン・テキスタイルズという会社が扱っている商品で、ペンシルバニアで生産されています。手ごろな値段の上に、アメリカ国内なら2~3日で送料無料で届き、その都度消毒すれば複数回使えるのが有難いです。このフェイスシールドはとてもシンプルですが、今後はブランドのロゴ入りや、マスクとセットでつけるようにデザインされたフェイスシールドが、新しいファッションアイテムとして出てくるかもしれませんね。
ちなみにマスクは、アメリカで手ぬぐいを売っているお友達が手づくりされた手ぬぐい製。手ぬぐいは乾きやすい上、肌触りもいいので重宝しています。
ニューヨークでの新しい変化といえば、エコバッグに対する考え方の変化もあります。コロナ前は、プラスチックごみを減らすためにエコバッグを持参することがいいことという考えが広まっていました。しかしコロナが広まるにつれて、感染防止の点ではお客にマイバッグをもってこられるのは望ましくないかもしれないという見方が出てきました。
スーパーマーケットチェーンのトレーダージョーズは「マイバッグを禁止している」と聞き、徒歩圏内にトレーダージョーズがあるお友達に頼んで送っていただいた看板の写真がこちら。「商品はうちのバッグに入れます」と、お客にバッグをもってこないでほしいことをさりげなく呼びかけています。私がよく行くオーガニック中心のスーパーマーケット、ホールフーズマーケットは、今の所マイバッグの持ち込みは自由。でも、以前はレジの人がマイバッグに詰めてくれましたが、コロナが広まってからレジの人はお客が持ち込んだ袋に手を触れなくなりました。
購入した商品は従業員が店の袋に入れます、マスクは必ず着用してくださいの看板。接触を最低限に留めようとしています
共に生き延びるため、社会を明るくするアクションも次々と。今必要なのは「希望」の共有
ニューヨークではまだしばらく、不自由な生活が続きます。精神的限界に近づき、憂さ晴らしをしたい人が多いのでしょう。気温の上がった先週末は、テイクアウトのドリンクを片手にバーやレストランの前にたむろして談笑する人たちの様子が、テレビのニュースで何度も報道されました。市側は、ソーシャルディスタンスをとれていないレストランやバーは処罰の対象にすると言っています。
レストラン側も生き残るために必死です。グラマシー・タバーンやユニオンスクエア・カフェなどを展開するユニオンスクエア・ホスピタリティー・グループは、従業員の救済基金集めと称して、ネットでサイレントオークションを開催しました。「ダニー・マイヤー(同グループの創業者で、レストラン・ビジネス界の大物)とZOOMでカクテルを飲む」「NBAオールスターゲームのVIPチケット」「ジョージ・ルーカスのサイン入りスターウォーズグッズ」など49点がセリにかけられ、16万4460ドル(約1800万)が集まったとのことです。現在はオークションは終了し、従業員のためのオンライン寄付を募っています。
2017年に国際的レストランランキング協会から1位に選ばれた、高級レストランの「イレブン・マジソン・パーク」は、アメリカンエクスプレスから資金を得て、非営利団体のリシンク・フードNYCと組み、閉店中のレストランで調理した料理を食べ物に困っているニューヨーカーに届ける活動を始めました。他にも、非営利団体と組んで同様の活動をしているレストランがあります。単独では生き残れないかもしれませんが、コラボレーションを通じて生き残る可能性が出てくるかもしれません。
ニューヨークのレストランで働くシェフたちが集まって、基金集めのために発行された電子版の料理本もあります。その名は「Serving New York」。前書きによりますと、ニューヨーク州には約3万件のレストランがあり、100万人近い人が働いていて、その大方がコロナによって失業中だそうです。その多くは、商業活動が再開されても復職できないだろうとされています。45のレシピが詰まったこの本の利益はその方々のサポートに使われます。
NYの飲食店の情報共有やイベントを手掛けていた会社が、今回のレストランの店内営業中止を受けて、お店や従業員などへの支援を開始。この本もそうした活動の一部で、ほかにも店舗のグッズ販売などをしています。本は電子書籍なので、日本からでも購入できます。(英語のみ)
本書から、NYでは高級フレンチレストラン、「ダニエル」のシェフによるマドレーヌのレシピに添えられた写真。思わず笑みがこぼれ、手が伸びそうになりました。カクテルもカラフルで美味しそうなものがあります。全125ページにわたる本です
チーズ屋さんでレストランも構えるビーチャーズ・ハンドメイドチーズでは、空き巣防止のために取り付けられた板に地元のアーティストが壁画を描いたことが、テレビのニュースで紹介されていました。殺風景な板張りばかりでは気がめいってしまいますが、こんな明るい気持ちになれるようなアートを地元のアーティストとコラボして通りがかりの人に見せられるようにすることは、とっても素敵なアイデアですね!
暗く閉じられた街に、明るい彩りを。店もアーティストも楽ではない状況の中で、ポジティブな動きが周囲にも元気を与えてくれます
「情けは人の為ならず」と言いますが、人の役に立てていると思えることは活力となり、苦しくても希望を与えてくれるのではないでしょうか。私も希望を忘れず、レストランに出かけられる日が戻ってきたとき、馴染みのレストランが1つでも多く営業を再開できているようにと願ってやみません。