〔月曜日 夜ごはん〕
〔サラダ、さつま揚げの醤油煮、メンマ、ホッケ焼き、もやしとトマトの炒め煮、アジフライ、焼き餃子、サトイモとシイタケのめんつゆ煮〕
「浅草で夫と息子の３人で『田毎』という焼き鳥と釜めしのお店を営んでいます。
48歳のときに結婚し、息子は主人の連れ子です。
50年以上経つお店で、私はそこの女将さんをやっています。
これは夜ごはん。
お店の営業が終わってから自宅で食べるので、食べるのはいつも11時過ぎぐらいになります。
夫が必ず晩酌するので、すぐ出せるものも必ず用意しておき、それをつまんでもらっている間に他の料理をどんどん作っていきます」
〔火曜日 昼ごはん〕
〔おでん、明太子、ポテトコロッケとマカロニサラダ〕
「おでんは調理がラク。
それにお店の仕込みの間に作っておけ、食べたいときにパッと食べられますし。
出汁はお店でも使っているかつおと昆布でとってあります。
写真に撮るのを忘れたのですが、このときはカレイの煮つけも用意しました。
私が魚を好きなので。
写真に写っているごはんは、夫の茶碗です。
夫はとにかくよく食べるので、何品も料理を用意しないといけないんです。
昭和の頑固おやじそのままの人で、『めし、風呂、寝る』。
家のことは、自分が飲むお酒の準備以外、何一つしません。
私はといえば、意外かもしれませんが、食が細いほう。
しかも結婚してから２回胃潰瘍をやり、今は一度の食事でごはんはおにぎり一個分を食べらるかどうかです。
胃潰瘍の原因ですか？
１回目は飲食店という慣れない仕事に就いたころで、そのストレスのせいかな。
そして２回目は……結婚生活によるストレスです（きっぱり）」
〔火曜日 夜ごはん〕
〔ぶりのお刺身、水菜と豆腐のお鍋、さばの塩焼き、おでん、味付けのり、しいたけ昆布、おしんこ〕
「おでんはお昼の残り。
おしんこは、お店で小付けとして出しているものの残りです。
この日はまずぶりのお刺身を出して、その間に夫に晩酌してもらいました。
ぶりは刺身で食べるだけではなくて、鍋に入れれば味変が楽しめるかなとも思って。
出身は鳥取です。
実家では祖父母、両親、私たち子どもの三世代で暮らしていて、食卓にはいつも海の幸が並んでいました。
母の味といえば、思い出すのはお味噌汁かな。
シジミの味噌汁が私のおふくろの味です。
ほかに、カニの味噌汁もおいしかったな。
〝あきんどさん〟って、ご存じですか？
うちの実家がある地域には魚を担いだ行商の人がよく来ていて、その人をあきんどさんと呼んでいました。
みんな、あきんどさんから魚介類を買うんです。
そういう地域だったからか、実家の食卓にはお肉料理って並んだことがなくて、今でもお肉より魚が断然好きです。
でも東京に出てきて、全女（※全日本女子プロレスのこと）の子たちとラーメン屋さんに行き、初めて餃子を食べたときは、おいしくてびっくりしました！
こってりとしていて、ひき肉がホクホクしていて……でも、普段食べていないものをいきなり食べたので、体がびっくりしたんでしょうね。一皿にいくつあったのかな、５個か６個の餃子を全部食べたら、そのあと戻してしまって。
15、6歳で全女に入ったので、振り返ってみると、世間のことを知らないまま育っていったんだと思います。
ビューティ・ペアとしてデビューすることになったきっかけですか？
それは……全女のように歳の近い女の子が集団で暮らしていると、なにかとあります。
ことあるごとに私にきつく当たってくる先輩が、ひとりいまして。
悔しかったので、〝強くなって、リングの上で倒してやる。そうしたら辞めよう。辞めて、やりたかったバレーボールの世界に行こう〟って思って、トレーニングに励んだんです。
そうしたら、その頑張りを見ていた上の人たちから認められて、ビューティ・ペアのひとりに抜擢されました。
あの先輩がいなければ、どうなっていたんでしょうねぇ」
〔水曜日 ごはん〕
〔たまごあんかけうどん〕
「時間がないとき、お昼は外食になること多いです。
この日は、夫と近所の『丸亀製麺』へ。
温かいものを食べたかったので『たまごあんかけうどん』にしました。
そこにたっぷりの天かすとねぎをトッピング。
私はおそばよりうどんが好きですが、夫はそば派。
ちなみに私は言いたいことを我慢して飲み込むタイプで、江戸っ子の夫は思ったことはポンポン口に出すタイプ。
親しき仲にも礼儀ありっていう言葉を知らないの？って思うくらい、遠慮せずに厳しいことを言ってきます。
結婚当初は、そうした好みや性格の違いがあるのがいいのかもと思っていましたが、結婚して17、8年経つ今は……〝結婚とは忍耐、精神の修行〟。
はい、その言葉に尽きます（きっぱり）。
家のことは自分の晩酌のお酒を用意すること以外は何もせず、私には何かと厳しい夫ですが、飼っている茶々丸（５歳のマルチーズとプードルのミックス犬）にはとても甘いんです」
〈ごはんを見せてくれた人・マキ上田さん〉
1959年生まれ。高校を一年目で中退後、全日本女子プロレスに入団し、1976年にジャッキー佐藤と「ビューティ・ペア」を結成。結成初戦のWWWA世界タッグ王座決定戦で勝利し、同王座を獲得。セミロングでプロレスラーとしてはフェミニンな雰囲気のマキ上田とショートカットでボーイッシュなジャッキー佐藤のコンビは、当時〝戦うタカラヅカ〟ともいわれ、アイドル的存在となった。レコードを発売すると『かけめぐる青春』が80万枚のセールスを記録し、試合の観客席は女子中高生で満員に。試合前にリングで熱唱する歌唱タイムでは、ファンからの紙テープや紙吹雪でリングがいっぱいになり、そのすさまじい人気ぶりがテレビで中継されると〝社会現象〟と報じられた。活躍はリングの上だけにとどまらず、主演映画がつくられ、テレビのバラエティ番組にも引っ張り凧となる。1979年日本武道館大会での敗戦により「ビューティ・ペア」は解散、マキ上田も引退するが、当時の熱気と「ビューティ・ペア」の放ったきらめきは業界の伝説として残り続けている。
★今でもファンが訪れる！マキ上田さんが女将をつとめるお店「田毎」
〔住所：東京都台東区浅草3-27-3。電話：03-3874-3253〕
