肉があまり食べられない人は、まず消化が楽な肉を少しずつ増やしていく
加齢とともに肉があまり食べられなくなったという人は少なくないと思いますが、少しでも食べられるようにしていくにはどうしたらよいのでしょうか?
「もちろん、魚や卵など、ほかの動物性タンパク質をとればOKです。ただし、前回お話ししたように、魚は調理の手間がかかるうえ、可食部が少ないのでとれるタンパク質量が少ないのが難点。
ですから、肉をしっかり食べられるようにしていくのが理想的です。
この連載でこれまでにお伝えしてきたように、そもそも肉を食べられないという人の多くは、肉を食べると胃もたれなどの不快症状が出るからだと思います。
これはもともとタンパク質の摂取が足りないせいで、タンパク質を消化吸収するための消化酵素や胆汁酸が減ってしまっていることが大きな原因です。
それを解消するために、少しずつタンパク質の摂取量を増やしていくことが大事。
そのためにも肉を食べられるようになるコツをご紹介したいと思います」(金津里佳さん)
そのコツとは?
「まず、おすすめしたいのは、ひき肉です。ひき肉は消化が楽なので、40代、50代で肉をたくさん食べられないという人でも無理なくとることができます。
麻婆豆腐やハンバーグ、ガパオライスなど、ひき肉を使う料理はいろいろあるので、好きなメニューで取り入れてみてください。
慣れてきたら、ハンバーグのサイズを少しずつ大きくするなど、使うひき肉の量を増やしていきましょう。
タンパク質の摂取量が増えていくことで消化酵素と胆汁酸が増えていき、食べられる量が増えていきます」
「また、さらに消化をよくするために、梅干しやレモン果汁など酸っぱいものを一緒にとるのもおすすめ。
酸を含むものは胃酸の分泌を促すので、肉と一緒にとると消化を助けてくれます。
そのほかでは、消化酵素が多く含まれる生の大根も肉の消化を助けてくれます。
例えば、ハンバーグに大根おろしとポン酢をかけて食べるのは消化がよくなるとてもよい組み合わせです。
こうした方法で、ひき肉料理がしっかりとれるようになってきたら、ステーキなどの塊肉にチャレンジするといいと思います」
どうしても胃もたれするという人は、消化酵素のサプリの利用を
では、それでもやっぱり胃もたれしてしまうという場合は?
「胃もたれなどの不快症状が出て、どうしても肉を食べられないという人は、食前に消化酵素をサプリメントでとるといいと思います。
自前の消化酵素の不足分を外から補うことで消化が助けられ、不快症状が出にくくなるので、肉が食べられるようになっていきます。
その結果、タンパク質から作られる自前の消化酵素が増えていき、肉が食べられるようになるので、そうしたらサプリメントで補わなくてもOK。
個人差はありますが、3カ月から半年ほどで消化酵素のサプリメントが不要になることが多いです。 ただし、サプリメントは質が悪いものも多いので、質がよいものを選ぶことが大事。
栄養指導を行っているクリニックなどで、臨床経験のある医師や管理栄養士の指導のもと、サプリメントを選ぶのがおすすめ。
または、胃もたれしやすい人は消化器内科を受診すると、医薬品の消化酵素を処方してもらえることがあるので、それを服用するのもよいと思います。
そんな方法でとりあえずはタンパク質をしっかり消化吸収できる状態に整えることが大事です」
もともと食事量が少ない人は、食事の最初にタンパク質をとって
ちなみに、肉を食べても不快症状は出ないけれど、もともと食べられる食事量が少ないという場合はどうすればいい?
「その場合は、食事の最初に肉や魚、卵、大豆製品などを気持ちよくお腹いっぱいになるまで食べてください。
野菜や汁物は、タンパク質のおかずでお腹がいっぱいになったあとに食べましょう。
女性は特に、肉より野菜をたくさん食べるほうが体にいいと思っている人が多いですが、タンパク質食材をとることのほうが大事。
野菜は、タンパク質食材を食べてから、可能な範囲で食べれば大丈夫です。
そしてご飯などの糖質はいちばん最後にしましょう。
そのような食べ方で、食事のタンパク質の割合を増やすことで、次第に食べられる肉の量も増えていきますよ」
“年だから肉を食べられなくなった”などと諦めず、上記のような方法をぜひ試してみて。
【教えていただいた方】
医療法人美健会 ルネスクリニック東京・管理栄養士。北陸学院大学短期大学部食物栄養学科卒業。産科婦人科、人工透析科、栄養療法を主とする自由診療クリニックでの勤務を経て、2019年より現職。「人の身体はみな同じではない」をつねに意識し、日々の栄養カウンセリングに臨む。「食事は治療」との信念から一生続く食事という行為を根本治療ととらえ、論拠が納得できる正しい情報を届けたいという思いから、書籍などで情報を発信。著書に『9割が間違っている「たんぱく質」の摂り方』(青春出版社)がある。 金津さんphoto/久富健太郎
写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂