ハンバーグ、エビフライ、グラタン、オムライス…、好きな食べ物を聞かれた時に、このジャンルを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? 今日は子供も大人も大好きな「洋食」のお話です。
そもそも洋食って一体どんな料理?
実は言葉で表そうとすると、とても定義が難しいのが「洋食」という言葉。goo 国語辞書/デジタル大辞泉(小学館)で引いてみると、
西洋風の料理や食事。西洋料理。⇄和食。
とあります。なるほど、確かに和食以外の西洋風の料理一般のことですね。けれども「洋食」と聞いて、漠然と、けれどもしっかり頭に思い浮かべた具体的なメニューがありませんでしたか?
色々と調べてみて、「幕末から明治にかけて海外から伝わった西洋料理をもとに、日本人の口に合うように発展した料理」という定義が一番、しっくりくるような気がしました。
ステーキ、コロッケなど西洋そのままの手法を用いているもの、ご飯を使ったドリアのように日本で生まれたもの、起源もアレンジも様々で、調べれば調べるほど興味深い料理ジャンルですが、確実に言えるのはみんなが好きということ。洋食は家庭で作る料理としてもあまねく広まり、多かれ少なかれあるその記憶が、あらゆる世代の食欲を刺激するのだと思います。
フランス料理と洋食の境界線とは
「難しい枠組みにこだわらず、この店で僕が作る料理、それが洋食、でいいと思っているんです」と言うのは西麻布「洋食ビストロ TŌYAMA」の遠山忠芳エグゼクティブシェフ。
15歳で調理専門学校に進み、ホテルや結婚式場勤務を経て、地元に自身の店を構えるまで、着実にフレンチの料理人としてのキャリアを重ねてきました。一方で、その真面目な性格ゆえ、フランス料理とはこうあるべきと言う考えに囚われて、やや窮屈に感じたこともあったと言います。
その後、縁あって京都で働くことに。任された厨房はフランス料理を出すビストロでしたが、親しみやすい料理をと考えてメニューインしたハンバーグが話題になり、いつしか行列ができるほどの人気を博しました。
「お客さまに喜ばれて、支持されるようになって。フランス料理の線引きはそれほど重要じゃなくなりました。今でも、僕の作る料理を見て、『洋食じゃなくてフレンチじゃない?』とおっしゃる方がいます。でも、どちらでも構わないんです。難しく考えるのをやめたら、自分自身、肩の力がうまく抜けて、料理をするのがもっと楽しくなりました」。
官能的な漆黒のデミグラスソース
11月、西麻布にオープンした「洋食ビストロ TŌYAMA」の厨房で腕を振るう遠山シェフ。料理人として、さらに進化を続けています。
見てください、このデミグラスソース。何しろ、とても黒いのです。
鶏ガラで作ったブイヨン、鶏肉、鳥ガラ、牛筋を加えて煮込み…別に作った基本のエスパニョールソース(フランス料理のソースの基本となるソース)を加えて…大量の玉ねぎを炒めて…赤ワイン、シェリービネガーを加えて…。いやいや、その作り方をここで全部、書くのは無理と言うもの。丁寧に手間をかけて作られるデミグラスソースは、完成までなんと1週間以上かかるのだとか。
黒い見た目に驚いていると、その香りがまず鼻をくすぐります。甘酸っぱい、ふくよかなワインの香りがとても官能的…。舌の上にのせて見ると、深いコクがあって、酸味があって、奥にはほのかに苦味も混じり合い…。私はこれをアテにお酒を飲める気がします。
次回はこの漆黒のデミグラスソースを使った料理を食べられる「洋食ビストロTŌYAMA」について紹介します。どうぞお楽しみに。
*取材時は写真撮影の時のみ、マスクを外して行いました。