前編では、最後の稼ぎ時の50代をムダにしないためにも健康が大切なこと、健康でいることでコストカットができることを紹介しました。
後編では、保険の見直しなど長生きリスク(老後、資金が枯渇すること)への備えについてお話します。
前編で「50 代は大きくシフトチェンジをするべきとき」ともお伝えしましたが、これは若い頃のファッションやメイクのまま年を重ねていくと時代遅れになってしまうように 、お金の面でも一度見直すべき時が来ているということ。
現役時代が長くなってきているということは、これまでは 60 歳でリタイアできていたのに、これから 65 歳や 70 歳まで働かないとやっていけないということ。
今は晩婚、晩産の人も多いので、住宅購入や出産など人生のイベントが後ろ倒しになっていることも。
そうす ると、アラフィフも「住宅ローンの返済が 75 歳まである」「子どもがまだ大学生でお金がかかる」という状態になり、 60 歳でリタイアなんて夢のまた夢という感じに。
もうちょっと長く働かなければいけないなら、その分万が一の場合など給付金、保険金が受けられる期間をのばすなど、 保険や備えが十分かどうかというのは見直した方がいいですね。
今の50 代は若い時に入った保険をそのままにしてしまっているパターンもよく見かけます。
でも、時代とともに医療も変化しています。昔の保険だと手術給付金や入院給付金が出るものの 、通院にお金が出ないものがほとんど。でも今は入院期間が短くなって、通院治療が多くなって きています。
昔の保険のままでは、 せっかく入っているのに思ったほど保障が受けられないこともあるんです 。 そのため、今入っている保険には自分に必要な保障があるかどうかをチェックして、見直すことが大切です。
といっても、必ずしも 新しい保険に替えなければいけないわけではありません。
今入っている保険をベースに、 不要な保障を外したり 、必要な保障を上乗せしたりするイメージで大丈夫 。ひとまず点検するだけでも全然違いますよ 。
◆若い頃の保険のままでいたら肝心な時に損をする!?
セミナーなどでこういった保険の話をすると、パッと手が上がって「先生のおすすめの保険商品を教えてください」という質問をされる方がいます。
その気持ちはよくわかりますが、保険商品はすべての人にオールマイティなものはないんです。
その人その人の保障ニーズに合うものを探していくことが大切です。
保障ニーズとはどういうことかというと、例えばがん保険の場合、日頃から運動習慣があり、食事や生活習慣に気を配って、検診もきちんと受けている人がいるとします。
それならば、たとえがんになっても早く見つかる可能性が高く、適切な治療を受ければ、治療にそれほどお金もかかりません。
そういう人には、がん保険に入るとしても、最低限の保障で掛け金も割安なものでいいと思います。
一方、ヘビースモーカーで、病院が大嫌いで何年も検診を受けていない、という人の場合は、万一がんが見つかったら進行している状態である可能性が高いですよね。
そうすると治療費がかかるし、再発リスクも高いので、フルスペックで何度でも再発したら給付金がたっぷり出るものをおすすめします。
そうお話しすると「なるほど、そう考えるんだ」と納得されます。
自分が健康に対して、どういう風に考えているタイプか、どんな保障が必要かよく考えましょう。
あとは、公的制度がどれだけ使えるのかも知っておくことが大切です。
会社員なのか、公務員なのか、自営業なのか、扶養内の主婦なのかによっても、公的保証が厚いか薄いかが違ってきます。
大企業にお勤めで組合健保に加入していて、付加給付も手厚いのであれば、保障も最低限で割安なものでいい、となる場合もあります。
◆“会社員であること”は貴重!
自分が加入している社会保険はすみずみまでチェックを
自分が加入している公的制度によってどんな保障があるかについては、自分で保険の種類ごとに一つ一つ調べていくしかありません。
例えば会社員であれば、下記のような社会保険に加入しています。
・医療保険
・介護保険
・年金保険
・雇用保険
・労災保険
それぞれ管轄が違うので、面倒と感じるかもしれませんが、どんな保障があるのか、その保障を受けるにはどんな条件があるのかを知るのはとても大事なこと。
例えば医療保険なら、会社の健康保険組合のホームページだったり、福利厚生のしおりだったりがあると思うので、それを見てチェックします。
自分が加入しているものによって、給付金の額やもらえる条件が全然違うので、ほんのちょっとの差で損をした、ということがないようにしたいですね。
以前、相談を受けていた患者さんの同僚の方で、休み時間などにいつも会社の就業規則と福利厚生のしおりを熟読している方がいたそうです。
自分が病気になる前はすごいなと思っただけだったそう。
でも、いざ自分が病気になったら会社を何日休めるかとか、有給休暇をもらえる権利として何年以上働いているとか、細かい規定があることに驚いたそう。
そして「あの同僚がやっていたくらいやらないとダメなんだ、見習わなくちゃ」と思ったそうです。
また、50代に差し掛かり、ちょっとしんどいから仕事を辞めようか…と考える方もいるかもしれませんが、ちょっと待って!
辞める前によく考えておいたほうがいいです。
私がおすすめしているのは、会社を辞める前に人間ドックなどで体のすみずみまで調べておくこと。
例えば病気やケガで一定の障害状態になったとき、初診日が在職中で要件を満たせば、障害基礎年金に加えて障害厚生年金をもらうことができます。
初診日が在職中かどうかで金額が全然違うのです。
民間の保険は入らなければいけないものではありませんが、入るなら今の自分の状態によって必要な保障が変わってくるので、それをを定期的に見直しをしていくことが大切です。
自分ではいまいちよくわからない、判断がつかない、ということであれば、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもいいと思います。
多少相談料がかかったとしても、自分に不必要な商品を選んだり惑わされたりするよりは、よっぽどいいと思いますよ。
必要な備えをしつつ、保険のコストダウンをしたり稼ぎ時を逃したりしないためにも、健康維持は不可欠。
健康の価値は、試算すると5000万円の価値があるとも言われています。
今からでも毎日体重を測って、万病の元である肥満に注意し、健康寿命を延ばしていきましょう。
本日はここまで。
次回もお楽しみに!
【教えていただいた方】
1969年生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年に日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得、98年に独立系FPとして転身。現在は、各種セミナーや講演、執筆、個人相談など幅広く活躍。CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格取得。「がんとくらしを考える会」理事、城西国際大学経営情報学部非常勤講師なども務める。著書に『がんとお金の真実(リアル)』『親の介護は9割逃げよ』『病気にかかるお金がわかる本』(共著)『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』『終活1年目の教科書』など多数。
取材・文/倉澤真由美、写真/山田真由美