突然ですが、みなさんに質問です。
お金持ちもそうでない人も、平等に与えられているものがあります。それは何だと思いますか?
答えは、「時間」です。
どんな人にも平等に一日として24時間が与えられていますよね。
その時間をどう使うかで、お金の貯まり方が全然違ってきます。
「お金はあるけれど時間が足りない」という人は、家事などはいっそのこと割り切ってアウトソーシングする。そしてその分、バリバリ仕事をして稼ぐ、といったことができます。
一方「お金はあまりかけられないけれど、時間ならある人」は、時間を使って自分自身が動くというわけです。
OurAge読者の年代ともなると〝親の介護〟という問題が身近かと思います。
親がまだ元気で介護状態になるまでに時間があるのであれば、その間にいろいろな情報を集め、介護費用をできるだけおさえられる方法を模索しておけます。
でも、何も準備していないのに突然親が介護状態になったら……もはや調べる時間がないので、割高なサービスでも依頼せざるを得なくなるケースもあるでしょう
こんな風に、常にお金と時間はシーソーゲーム。
みなに平等に与えられた時間の中で何ができるのか、を考えて行動するのはすごく大切なんです。
◆投資に回せるお金が少ないなら時間を使うしかありません
お金と時間の関係は、投資でも同じことが言えます。
何年も前から、あちこちで「投資をしないと将来大変!」ということを聞きますよね。それを受けて、「私も投資を始めてみよう!」と行動を起こす人もいるかもしれません。
ところが、いざ投資を始めようと思っても、肝心の資金力がなくて、投資しても大した利益にならずがっかり…ということもありがちです。
確かにまとまったお金があれば、運用してうまくいった場合の利益も大きくなります。
例えば1億円を投資に回すことができるとします。
アメリカの研究では、年間の生活費の25倍の投資資産を年4%で運用すれば、資産は底をつかないという「4%ルール」があり、これで運用すれば、元金を減らさずに年400万円を得られます(税引き後は320万円)。
これなら投資の利益だけで生きていけるかもしれません。
でも、1億円の余裕資金がある人なんて、そうそういないですよね。
そこでどうするか。
まとまったお金がない人は、「時間」を味方につけて、できるだけ早い時期から長い時間をかけ積み立てて、分散投資をしていくんです。
統計的に、価格変動する収益性商品は運用する期間が長いほど、損しにくいもの。
たとえ一時的に相場が下落してマイナスになったとしても、そこから取り戻せる時間があります。
もしかしたら、金融機関の人に「50代で投資を始めるのは遅いですよ」と言われた経験がある人もいるかもしれません。
でも、よく考えてみてください。
頑張って老後資金で必要と言われる2000万円を定年までに貯めたとします。
だからといって、「貯められてよかった!」で終わりではありません。
リタイア後も今のようにゼロ金利のままだとすれば、銀行に預けていてもお金が増えることはないのです。
仮に2000万円を65歳から月10万円ずつ取り崩して生活費を補填いくとすると、約16.6年しかもちません。
男性の平均寿命が約80歳、女性の平均寿命が約87歳ということを考えると、女性はやや足りないですよね。
それなら、今からでも運用して資産を増やしていき、使うときも運用しながら取り崩していけば「資産寿命」は延びます。
老後資金は、「とりあえず貯めればOK」ではありません。
積み立て方も大事ですが、取り崩し方も大事だということを覚えておきましょう。
◆投資初心者は王道の「NISA」と「iDeCo」からスタートを
今から投資を始めたいけれど何をしたらいいかわからない、という人はNISAやiDeCoをやるのがおすすめです。
なぜかというと、どちらも税制優遇があるからです。
まず始めたいのがNISAです。
NISAとは、株式や投資信託の売却益や配当金などが一定額まで非課税になる「少額投資非課税制度」のことです。
これまでは一般NISAとつみたてNISAの2つがありました。
前者は、投資期限が2028年までで非課税で保有できる期間は最長5年間。年間の上限額は120万円で、非課税で保有できる投資総額は最大600万円です。
一方、後者は投資期限が2042年までで非課税で保有できる期間は最長20年間。年間の上限額は40万円で、非課税で保有できる投資総額は最大800万円です。
いずれも、時限措置で、資産の購入額に上限が設けられており、どちらか1つしか選ぶことができませんでした。
それが、2022年12月16日に決定した2023年度の与党税制改正大綱では大幅な見直しが行われ、これらを一本化。
長期の積み立てを目的として投資信託だけを購入対象とする「つみたて投資枠」と、上場企業の株式などを購入できる「成長投資枠」が設けられます。
年間の上限額も最大360万円に拡充。非課税で保有できる投資総額は1800万円(株式などは1200万円以内)です。
そして、制度は恒久的なものとして、非課税で保有できる期間も無期限となるなど使い勝手も向上します。
新制度は2024年1月からスタートしますので、これまでなかなか始められなかった人もチャレンジする良い機会です。
また、夫の扶養を外れて働いている人なら、iDeCoもプラスするといいですね。
iDeCoは掛け金が全額所得控除になるので、所得税と住民税が軽減されます。
また、受け取る際にも公的年金等控除や退職所得控除などの適用を受けられるので、有利です。
どちらも年間の上限額が決まっているので、早く始めるほどトータルでの優遇額が大きくなっていきます。
ただし、できるだけ早い時期に投資を始めることは大事ですが、最近は注意すべきことがあります。
それは、うまい話にのってはいけないということ。
「自分は絶対騙されないから大丈夫」
そう思っている方がほとんどだと思います。
でも、最近は手口が巧妙化していて、びっくりします。
私は消費生活専門相談員の資格も持っていますが、それでも常に「もしかしたら自分だって騙されてしまうかも」という気持ちを持っています。
うまい話には絶対裏があるのでのってはいけない、ということは、みなさんも十分わかっていると思いますが、常に「いつ自分も引っかかるかわからない」という危機意識を持ちましょう。
◆〝王道の投資〟の次にやることとは?
すでにNISAもiDeCoもやっている人が、さらに次の投資をしたい、ということであれば、投資信託や株式等の積み立てもしていきましょう。
税制優遇はありませんが、先に述べたように長期で少額から積立てをすることでリスクを軽減できるし、ドル・コスト平均法(※価格が変動する商品に対して「常に一定金額を、定期的」に購入する方法のこと。投資金額を一定にすることで、価格が低いときには購入量(口数)が多く、価格が高いときには購入量(口数)が少なくなるので、平均購入単価を抑えることが期待できるというもの)の恩恵も受けられます。
会社員で勤務先に社内預金財形貯蓄の制度があるのであれば、こちらも奨励金や税制優遇が受けられるものがあるので始めるのもいいですね。
「勤務先に財形貯蓄制度がない」「会社勤めではない」という方で時間がある方なら、ポイ活をする手もあります。
今や、ポイ活は一つの収入源と言ってもいいくらい、工夫次第で結構なポイントを貯めることができます。
代表格ともいえるのが「楽天経済圏」。なかには驚くほどのポイントを毎月貯めている人もいます。
あとは、すき間時間を有効活用するのも立派な投資です。
今はスマホで手軽にすき間時間に副業ができます。
投資は失敗があるけれど、アプリに登録してすき間時間に何かするのなら、損することはないですよね。
働くというと、バリバリ働くキャリアウーマンみたいなイメージがあるかもしれませんが、そうとは限りません。
料理が得意、お菓子作りが得意、という人はそのスキルを生かせることをするとか、自分が持っている力を生かしてできることをやってみましょう。
◆「早起き」、それこそ投資してみたい人におすすめです
ここからは、この回最後のアドバイスをしたいと思います。
NISAから得意分野を生かした副業まで、さまざまな投資をしていくうえで大切なことはなんでしょうか。
それは早起きです。
「朝活」ともいわれていますが、早起きをすることで自分の時間を確保できたり、心の余裕が生まれたりします。
朝早くは頭がすっきりしているので、適切な判断ができ、仕事や作業の効率があがります。
夜は疲れてるし、睡眠不足だと判断力も鈍って考えがまとまらなくなりますよね。
我が家は家族みんなが早起きで、私は仕事、娘は勉強、夫はスマホ、みたいに時間を有効活用していますよ。
いろいろなご相談にのっていて思うのは、お金が貯まらない人ほど、言い訳が多く、実際の行動にうつせていないということ。
投資をしてみたい、お金を増やしたいという気持ちがあるのであれば、まずは朝活をして、時間を味方につけていきませんか?
本日はここまで。
次回は「お金の使い方にはメリハリが大事」についてお話します。
【教えていただいた方】
1969年生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年に日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得、98年に独立系FPとして転身。現在は、各種セミナーや講演、執筆、個人相談など幅広く活躍。CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格取得。「がんとくらしを考える会」理事、城西国際大学経営情報学部非常勤講師なども務める。著書に『がんとお金の真実(リアル)』『親の介護は9割逃げよ』『病気にかかるお金がわかる本』(共著)『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』『終活1年目の教科書』など多数。
取材・文/倉澤真由美、写真/山田真由美