友達が遊びに来てくれるのは、豊かな人生
私の母は今、85歳。福岡に一人でいるのですが、おかげさまで元気で、好奇心旺盛な性格は変わらぬまま、日々の暮らしを楽しんでいます。
とはいえ、年齢も年齢ですから、体に不調をきたすときもあります。
先日、母は転んで膝の骨を割り、ケガをしてしまいました。しばらくどこかへ出かけるのは難しい状況でしたが、友達が家に遊びに来てくれたので、療養期間中も楽しく過ごしていたようです。
友達が家に遊びに来てくれる…これ、とても大切なことだと私は思っています。
ちょっとしたお菓子を持ち寄って、おうちでおしゃべり。「私、ケガしちゃったから、うちに遊びに来て」と言える相手がいる人生は、とても豊かです。気兼ねする必要がない相手とのおしゃべりは、認知症予防にもなりますしね(笑)。
家で楽しめれば、外で会うより、お金もそれほどかかりません。年を重ねるとそもそも外に出るのが少しおっくうになるかもしれませんが、自宅でお菓子を作ったり、友達とお茶やお酒を飲んだりできれば、素敵な時間を過ごせるでしょう。
母のところには、10歳以上年下の友達が遊びに来てくれて、泊まっていった日もあったそう。東京にいて、頻繁に行くことができない娘としては、本当にありがたいことです。
おもてなしは人生の種まき
ただそれは、普段から「いらっしゃい、いらっしゃい」と、母が気軽に家に人を招いていたからこそ、できた関係性だと思います。
母も私も人を自宅にお招きして、おもてなしすることが大好き。遠慮なく遊びに来ていただけると、私もとてもうれしいからです。
最近は月に一度、友達が我が家に集まって、おしゃべりに花を咲かせる会を開いています。
我が家はオープンキッチンなので、収納家具を造作して冷蔵庫の扉を貼りつけるなど、最初から冷蔵庫を隠すように計画しました。
調理家電なども、あらかじめ何をどこに入れるか考え、引き出し式の収納棚を作って、すっきりとしたキッチンにしています。
母の家に遊びに来る友達は、いろんな趣味を通じて親しくなった方が多いそうです。仕事で出会う人も大切ですが、共通の趣味を持つ人も大切にしたいですね。
私は単に楽しくておもてなしをしてきましたが、母の今の暮らしを見ていると、楽しみながらずっと続けてきたおもてなしは「種まき」でもあったんだな、と改めて思います。
お友達を招くからといって、大層な準備なんてしなくていいんですよ。家族の食事の延長線上でいい。
私はワインが好きなので、普段の食事にちょっとよいワインをプラスして、テーブルセッティングするくらい。
これは私がテーブルセッティングといった用意をすると、自分自身もリフレッシュできるからやっていますが、料理するのが面倒なら、宅配で何か頼めばいいですし、おもてなしの仕方は人それぞれで、まったくかまわないと思います。
私もワインだけ用意して、ウーバーイーツで頼んだ料理をきれいに盛りつけるだけ、なんて日もありますから(笑)。
自宅でのおもてなしで大切なのは、外では味わえない、ゆったり感、のんびり感。ホームパーティを特別なものと考えず、日常の行事のひとつとして、気軽に開いてみてはいかがでしょうか。
おいしいものを、少しだけ
スタジオと私が呼んでいる、こちらの別宅には、大人数で食事のできる部屋があります。
普段は真ん中に大きなダイニングテーブルを置いていますが、誰かが泊まるとなったら、みんなで「よいしょ」と端に寄せて、雑魚寝ができるスペースに早変わり!
私のお客さまだけでなく、娘たちの友達が複数人、遊びに来ても大丈夫です。雑魚寝でわいわい夜を一緒に過ごすのは、究極のゆったり、のんびり時間。納戸に敷布団など、何人分かのお泊まりセットをしまってあります。
それから、人を招く際にも、自分の時間を楽しむ際にも、近所にあると重宝するのが、よい食材を置いているスーパーマーケットです。
安さを売りにしたスーパーがあったら、もちろん便利ですが、年を重ねると食が細り、食べる量がだんだん少なくなります。
少ししか食べられないなら、やっぱりおいしいものを食べられたらいいですね。大量に買う必要もありませんから、一見、高価に感じても、全体で見れば大きな支出にはならないはず。
誰かが遊びに来るときは、試してみたかったものを一緒に食べるのもおすすめです。
もし、これから引っ越すなら、よいスーパーや商店が近くにあるかどうかも、譲れない立地条件のひとつに加えていただきたいと思います。
福岡県生まれ。高校3年生からカリフォルニアに留学。大学卒業後は広告代理店でCMプロデューサーとして活躍後、料理研究家となる。またデンマーク親善大使に選ばれるなど北欧インテリアに造詣が深く、インテリアコーディネーターやリフォームプランナーとして、多数の家づくりに携わる。料理レシピ本のほか、インテリア本、英語スピーキング教材など著書は50冊以上。2023年、東京国立博物館のアンバサダーに就任。館内のレストラン・カフェ「ゆりの木」の照明ディレクションのサポートを務める。最新刊は『人生を変えるリノベーション』(講談社)。
撮影/藤澤由加 取材・文/中沢明子
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