「健康管理士」として個々の健康寿命を延ばし、医療費の削減にも貢献!
生活習慣病やその予備軍の増加が懸念され、増加し続ける医療費を削減するための対策が必要とされる昨今。健康管理や予防医学の必要性が注目を集めています。
そんな中、健康管理に関する知識の普及と意識の向上を目指す活動を行うのが健康管理士です。
資格の正式な名称は「健康管理士一般指導員」
創設からおよそ30年。その間の合格者は7万5000名以上。「特定非営利活動法人 日本成人病予防協会」の講座を受講し、試験に合格することで取得できます。
健康管理士は、企業や医療福祉施設、学校、教育の場などで働く人を中心に、心と体の両面から健康維持に関して、充実したアドバイスができるようになりたいという人が目指しています。また、自分自身や家族の健康管理のため、あるいは地域ボランティアとして子どもの食育や高齢者の健康維持活動のために、といった目的でチャレンジする人も多くいます。
「健康管理士一般指導員」の受験資格
受験資格は、試験日の1カ月前までに「健康管理士一般指導員受験対策講座」(教育訓練給付制度・厚生労働大臣指定講座)を受講すること。
講座修了期間の目安はおよそ4カ月で、通信講座にて課題の提出が必須になります。講座では、健康管理に必要な知識を体系的に学び、病気・栄養・ストレス・運動・環境などについての知識を身につけます。
なお、「健康管理士一般指導員」の試験は「健康管理能力検定1級(文部科学省後援)」の試験を兼ねており、別資格ながら、同一の試験で同時にふたつの試験を受験することができます(ただし、合格基準点が異なる。健康管理能力検定1級のほうが、合格基準点が高く、1回の試験で健康管理士一般指導員に合格する人は60~70%。両方の資格に合格する人は40〜50%)。
また、健康管理士一般指導員の資格を取得後、日本成人病予防協会の賛助会員となって資格の登録をすると、健康に関するさまざまな情報が配信されます。各種講座やセミナーを受講することもできます。そして、これらを受講して単位を取得することにより、上級資格である、健康管理士上級指導員にランクアップすることも可能。信頼性をさらに高め、活躍の場を広げる人もいます。
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産前産後の女性の心と体をサポートする「産後ドゥーラ」
「産後ドゥーラ」とは、妊娠中から出産後1年半までの母親とその家族をサポートするのが仕事。一般社団法人ドゥーラ協会が認める資格を取得することで、産後ドゥーラとして活動することができます。
「産後ドゥーラ」の仕事とは?
主な業務内容は、産前の女性の健康を管理し、産後の身体回復を助け、新生児の育児補助を行うなど、出産前後の女性の心身をケアし、新しい生活が円滑にスタートできるよう手伝うことです。
主に、依頼者の各家庭を訪問して業務を行います。
まずは、サポートプランニングを行うところからスタート。妊娠中の女性から、出産や出産後の育児生活への不安がないかを聞き、女性の心に寄り添いながらその不安を解消する方法を考えます。また産後どのような生活をし、産後ドゥーラがどのようなサポートを行うかといった、産後の生活プランも立てていきます。
そして、出産後は、心身ともにセンシティブな状態にある母親の不安や悩みを受け止めながら、新生児の育児の補助を行います。また、家事(調理や掃除)を担い、新生児に兄や姉がいる場合には、その子どもたちの世話も行います。
資格取得の方法
資格を取得するには、「産後ドゥーラ養成講座」を受講。妊産婦の心身の変化、コミュニケーション方法、乳幼児の保育実習、産後の食事と調理実習、救命救急などを学びます。
講座修了後に試験・面談が行われ、合格すると、「一般社団法人ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ」の認定を受けることができます。そして、保険に加入するなどの準備を行った後に個人事業主として独立して仕事を行います。
活躍の場
1) 個々の家庭と契約して業務を行う
2) 産後ケア・サポート事業の一環として、産後ドゥーラのサポートを取り入れている自治体の仕事を請け負う
3) 提携する産科クリニック、助産院、保育園で働く
4) 産後ドゥーラが活動拠点とする地域で、産前産後の母子を対象に、ドゥーラカフェ(育児相談やランチの会)等のサロンを開催したり、自治体等が開催する子育てイベントに参加したりする
などがあります。
一般社団法人ドゥーラ協会、代表理事を務める宗祥子さんは、助産院の院長として多くの出産に立ち会い、産前産後の母親のケアをしてきました。そんな中、夫が多忙である、あるいは、実家が遠方であるなどの事情から誰からもサポートを受けられず、退院後、心身の不調に陥る女性も多く、常に退院後の女性の健康が気になっていたといいます。
しかし助産師としての業務を行いながら、産後の女性に対して十分なケアをすることは難しいということから、宗さんはドゥーラ協会を立ち上げ、産前産後の女性をサポートするプロフェッショナルの育成に力を入れるようになりました。
こうした産後ドゥーラの活動は、少子化対策、産後うつ防止、児童虐待防止に寄与するということから、産後ドゥーラを活用できる制度を取り入れる自治体も増えつつあります。
また、産後ドゥーラは女性の働き方としての魅力も多くあります。個人事業主として自分の裁量で働くことができる、自分が経験してきた生活のすべてをスキルとして業務に生かせる、健康であれば70代になっても働ける(75歳の誕生日を迎えるまで年1回の資格更新が可能)など。
これらの点が評価され、2024年度の東京都女性活躍推進大賞を受賞しています。
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「介護美容」でいつまでも美しく、高齢者の元気をサポート
超高齢化社会を迎え、注目を集めているのが「介護美容」
まだあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、近年、ぐんぐん需要が高まっています。
具体的な仕事内容は、介護施設などに出向き、高齢者や介護が必要な人に、ネイルやフットケア、ケアメイクなどを行うこと。ケアメイクとは、メイクアップを通して自信や満足感、自己肯定感などを手にすることを目的とした生理的・心理的ケアのことをいいます。そしてこうした介護と美容、両方のスキルを持つ人を、「介護美容研究所」ではケアビューティストと呼んでいます。
ケアビューティストは資格ではありませんが、「介護美容研究所」のケアビューティスト養成コースで学ぶことで、要介護者に美容施術を行うために必要な技術や知識を学び、現場で即戦力として働ける人材になることができます。
受講者の年代は10代から70代までと幅広く、40代は31%、50代は25%。
介護や看護、あるいは美容関連の仕事経験を持つ人もいますが、過半数は主婦や事務職、販売といった、介護や美容とは関係のない職種からチャレンジしています。
ケアビューティストになるためには、美容と介護の両方を学ぶ必要があります。美容に関する授業は、「ケアメイク」「ケアネイル」「ケアエステ」のほか、アロマテラピー、カラーコーディネートなどの授業もあります。
介護関連では、高齢者と美容を通じてコミュニケーションを取る方法や、認知症の人に対する声かけの仕方、介護レクリエーションについて学ぶ授業もあります。在学中や卒業後に、ボランティアとして高齢者施設を訪問し、経験を積むこともできます。
そして卒業生は皆、さまざまなスタイルで活躍しています
個人事業主として起業する人もいれば、副業として活動したり、あるいは介護士の方であれば、自身が働く施設に導入する(美容を提供)など。それぞれが、自分が希望するスタイルを選択し、自分らしく働いています。
なお、介護美容研究所を運営する株式会社ミライプロジェクトは、ケアビューティストを育成するスクール事業に加えて、介護美容の人材紹介事業や訪問美容事業、介護美容商品の物販事業などを手がけ、トータルで介護美容を提供する会社。卒業生の中には、同社が運営する施設紹介サービス「care sweet」 に登録し、提携先の施設に出向いて仕事を行う人もいます。
高齢になり、美容からはすっかり遠ざかっていたという女性も、ケアメイクやネイルをすることで、それまで沈みがちで暗かった表情がパッと明るくなる人も多いそうです。
さらに、社交的になったり、食事の量が増えたり、リハビリにも積極的に取り組むようになったりといった効果もあるとのこと。年齢を重ねても美しくあるための美容には大きな力があるようです。美容を通して、要介護者のQOLを上げ、健康維持に寄与するというのが「ケアビューティー」の目的です。
介護美容研究所は2018年に東京・原宿に介護美容専門スクールとして誕生。現在は東京、横浜、名古屋、大阪・心斎橋、大阪・梅田、福岡と全国に6つの校舎があります。入学者は3年で3.4倍。2024年、介護美容研究所が運営する施設紹介サービスを通して介護美容を取り入れる施設は446施設に増加。今後ますます増えていくと期待されています。
40代、50代からは、身につけたスキルを生かして、誰かの健康の役に立つ。そんな働き方に興味アリという人は、チャレンジしてみては?
取材・文/瀬戸由美子