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「特養」「老健」「サ高住」…目的や予算、家族の事情に合った施設とは

「高齢者向け施設」とひと口に言っても、さまざまな種類があります。目的や予算、家族の事情などに合わせて検討が必要です。まずはどんな施設があるのか、介護者メンタルケア協会代表の橋中今日子さんに教えていただきました。

特別養護老人ホームに申し込みできるのは「要介護3」から

 

セトッチ:橋中さん。自宅介護をしていた方も、要介護度が上がってくると施設入居に切り替える方が多いのかなと思いますが、どうでしょうか?

 

橋中: そうですね。施設入居が現実になってくるきっかけは、「要介護3」に認定されたあたりかなと思います。

というのも、要介護3から特別養護老人ホーム(特養)に申し込めるようになるからです。

 

セトッチ:「特養」に入りたいという人は多いと聞きます。

 

橋中:はい。特養は終身利用できる介護保険で利用できる公的な介護施設で、看取りまで対応してもらえます。比較的費用が安く抑えられるという点でも人気がありますね。

 

セトッチ:人気があるということは、なかなか入居できないということでしょうか?

 

橋中:以前は百人待ちという施設もありました。

 

セトッチ:百人! それでは、なかなか大変ですね。でも最近、立て続けに友人二人から、「親が特養に入ることになって…」という話を聞きましたが、二人とも自宅で介護を始めてから、まだそんなに時間がたってないような気がしますが。

 

橋中:特養の入居というのは、単純に申し込み順に入居できるというわけではないんです。その人の要介護の状態、家族構成、家族の事情などから総合的に判断して、必要性の高い人は、早めに入居ができるようにといった配慮がされています。

 

セトッチ:あぁ、なるほどそういうことですか。一人は結婚して海外に住んでいて、なかなかたびたび帰ってくるのは難しかったようです。あともう一人は、自身も体調を崩して病院通いを始めています。そういった事情を考慮してもらえるということですね。

 

橋中:ケアマネさんにご自身の事情をしっかりと話して、施設入居の必要性を理解していただくことが大切ですね。

 

 

退院後に自宅復帰を目指す施設「老健」や認知症の方向けの「グループホーム」

 

セトッチ:特養以外にも高齢者向けの施設はいろいろありますよね。介護保険が適用される公的なものもあれば、完全に自費になる民間の施設もありますよね。

 

橋中:はい。それぞれに目的や対象が異なるのですが、主なものをいくつかご紹介しましょう。

 

「介護老人保健施設(老健)」。これも公的サービスで、病気やケガで入院した人が退院後、在宅復帰を目指すためのリハビリ施設。3カ月から半年の利用が可能で、対象は要介護1からになります。

 

セトッチ:特養も老健も公的施設ということは、介護保険のサービスで利用できるということですから、費用は比較的リーズナブルなのでしょうか?

 

橋中:特養や老健などの介護保険で利用できる施設では、入所者の所得に応じて、1カ月の支払額の上限が定められています。また、全額自己負担である食費や居住費に関しても、所得や資産などが一定以下の人なら、特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)の申請をすることで、負担額を抑えることができます。

 

セトッチ:それはありがたいですね。施設入居というと、お金がすごくかかる、お金がないと入れないといったイメージがありましたが…。

 

橋中:認定が受けられる基準は市区町村によって異なりますが、経済的に余裕がないから施設は利用できないと心配される方も、諦めず、一度ケアマネや市区町村に相談してみることをおすすめします。

 

セトッチ:体は元気だけれど、認知症が進んで在宅介護は難しいという人もいますよね。

 

橋中:「グループホーム」と呼ばれる施設は別名「認知症対応型共同生活介護」。これは、民間のサービスです。

認知症の人が5~9名程度の少人数で、介護を受けながら共同生活する施設です。要支援2以上の認知症の方が入居できます。ただし、グループホームは「地域密着型サービス」という種類のサービスになりまして、その自治体に住民票がある人だけが入居することができます。グループホームはこれまで、高度な医療が必要な重い病気になった場合は退所しなければならないというのが基本でしたが、近年は看取りまでをしてくれるホームも少しずつ増えてきています。

記事が続きます

「老人ホーム」や「サ高住」で希望に合ったシニアライフを

 

セトッチ:公的施設は費用の面でありがたいですが、やはり、必要に迫られている人から優先的にとなると、条件はかなり高めになってやはり待機状態になることも多いですよね。民間の施設にはどんなものがありますか?

 

橋中:「介護付き有料老人ホーム」というのもあります。これは、24時間体制の介護付き民間施設。介護保険の特定施設の指定を受け、食事から清掃、見守り、介護サービスまで提供。入居一時金(保証金)が必要なところが多く、豪華な設備を持つ施設から、比較的リーズナブルな施設までさまざまです。要支援1から入居できます。また、終身利用できるか? 医療が必要になった場合にはどんな対応をしてくれるのかなど、サービスの内容は施設によってさまざまなので、費用とともに契約前にしっかりチェックしたいですね。

 

セトッチ:要介護認定は受けておらず、まだまだ元気だけれど、面倒な家事から解放されて、安心して暮らすために施設に入るという人もいますよね。

 

橋中:そういった方が入居されるのは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」ですね見守りや食事のサービスが受けられる比較的元気な高齢者向けの賃貸住宅です。賃貸住宅ですので、多額な契約金などは必要ありません。

 

対象は60歳以上の高齢者と、軽度の要支援・要介護者が対象。一般の賃貸住宅だと敬遠されがちな高齢者でも借りやすく、住みやすい環境が整っています。夫婦で入れる広めの物件もあります。

 

入居しながら介護保険のサービスを受けることも可能で、食事や掃除、洗濯のサポートがあったり、介護職員や看護師による入浴・食事・排泄などの介護が受けられたり。機能訓練指導員によるリハビリテーションなどのサービスを行う施設もあります。

 

セトッチ:自宅同様に自由な生活ができて、介護付き有料老人ホームと同じようなサービスがそろっているのはいいですね。

 

橋中:ただし、一般の賃貸住宅よりも家賃は割高ですし、認知症が進んだり身体介護が必要になったりした場合は退去しなければいけないという施設もあります。

介護_第8回サムネイル

 

「小規模多機能型居宅介護」で訪問も宿泊も

 

セトッチ: 入居施設もいろいろあって、ニーズに合わせて選べるのですね。それでも、施設に入るのは絶対にいやだという方もいらっしゃいますよね。長年住み慣れた我が家はやはりいいですもんね。

 

橋中:そうですね。できるだけ今の生活環境を変えずに暮らしたい、あるいは、常に顔なじみの人に対応してほしいという場合には、「小規模多機能型居宅介護」という選択肢もあります。

 

セトッチ:「しょうきぼ、たきのうがた、きょたくかいご」? 聞いたことがないですが、それは何ですか?

 

橋中:ひとつの事業所でデイサービス・訪問・宿泊サービスを提供し、同じスタッフが継続してかかわってくれることが多いのが特徴です。
例えば、夕方に帰宅するデイサービスでは対応が難しい場面(要介護者が夜一人で過ごせない、家族が残業で帰宅時間が遅い場合など)で助かるサービスです。

 

在宅介護の3本柱ともいえる「デイサービス」「ショートステイ」「訪問介護」は、一般に、それぞれ別の事業所が担当しますが、これらの3つのサービスをひとつの事業所で一括して受けられる「セットメニュー」のようなものです。

 

要介護者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて「通い(デイサービス)」を中心に、「宿泊(ショートステイ)」や自宅への「訪問介護」を、臨機応変に組み合わせることができます。いつも顔なじみの職員がケアしてくれること、24時間無休なので、いざというときにも対応可能というのもメリットです。1カ月当たりの利用料が定額のため、毎月の介護費用が膨らみすぎないということもメリットです。

 

セトッチ:ひとつの事業所でお願いできれば、連絡の手間なども少なくできそうですね。

 

橋中:ただし、定員があるので希望日に利用できないこともある、3つのサービスのうちひとつに不満があってもそこだけを別の事業所に頼むことはできないといったデメリットもあります。

 

それでも、上手に利用できると要介護者は自宅で過ごすことができますし、介護をする家族も3つのサービスを組み合わせればリフレッシュの時間をつくれるので、選ぶ人もいるようです。

 

今、在宅介護を頑張っている人も、いつか「もう無理」となったときには、こうした施設があるとわかっていると、気持ちが少しラクになるかもしれません。また、費用についても家庭の事情により、相談ができるということも知っておいていただけたらと思います。

 

記事が続きます

 

【お話を伺った人】

橋中今日子
橋中今日子さん
理学療法士・公認心理師  介護者メンタルケア協会代表
公式サイトを見る

リハビリの専門家として病院に勤務するかたわら、家族3人(認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟)の介護を20年以上にわたって一人で行う。自分の介護体験と、病院勤務の経験、心理学やコーチングの学びを生かし、これまで2000件以上の介護相談に乗る。介護者のケア、介護と仕事の両立、ヤングケアラー問題、グリーフケアに取り組むほか、医療/介護/福祉従事者自身のケアや職場環境づくりにも注力。自身も元ヤングケアラー。

 

 

イラスト/小迎裕美子 取材・文/瀬戸由美子

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