テレビの健康番組でも度々話題になる、カカオ。チョコレートの原料ですよね。その健康効果の実際、ミーナもちゃんとわかってなかった気がします。チョコレートを使った料理レシピとあわせ、2回に分けてお伝えしますね。
高血圧抑制&善玉コレステロール増加…
カカオポリフェノールの注目度が急上昇!
古代より薬として珍重されてきたカカオ。最近は成分の研究が進み、健康効果が認められてきています。 今回は、産学官が一緒に行った研究の中間報告をお知らせします。
大澤俊彦さん Toshihiko Osawa
profile
愛知学院大学心身科学部教授。機能性食品、特に、酸化ストレス制御食品開発の基盤的研究が専門。カカオポリフェノールなど、チョコレート成分の機能性に関する研究も長年行っている
今回の「蒲郡市民講座」のパネルディスカッションに、パネリストとして参加した楠田枝里子さんは、チョコレート愛好家。好きが高じて、『チョコレート・ダイエット』(幻冬舎)、『チョコレートの奇跡』(中央公論新社)などの本を出版しています
カカオの学名の意味は 「神さまの食べ物」
マヤ、アステカといった時代に、王や首長の万能薬だったというチョコレート。ヨーロッパでも最初は薬として売られていたといいます。
「ですから、チョコレートにさまざまな健康効果があることは想像がつくでしょう。何年も前から、海外ではたくさんの論文が発表されています。しかし、日本でこれだけ大規模なヒトでの検証を行うのは、ここ蒲郡での研究が初めてです」
大澤俊彦さんが言う大規模な研究というのは、2014年3月から愛知県蒲郡市で、市民の協力のもとに行われている「チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究」のこと。
蒲郡市と愛知学院大学、そして株式会社明治の産学官が連携して行っているもので、まずは、蒲郡市内外の45〜69歳の347人の男女に、1カ月間、カカオを72%含むチョコレートを1日25g(150キロカロリー)ずつ摂取してもらい、摂取前後の血圧や血液成分などの体の変化を調べました。そして、約半年間の研究の中間報告が、2014年11月に蒲郡市民会館で行われました。
まず、血圧について。被験者(蒲郡市民)を高血圧群と正常血圧群に分け、それぞれチョコレート摂取前後の最高血圧の変化を見たところ、高血圧群は平均5・86㎜Hg 、正常血圧群も平均1・62㎜Hg 低下したそうです。 次に、HDL(善玉)コレステロール値の変化を見たところ、これも有意に上昇しましたが、体重やBMI値には変化は認められなかったとか。
「私は、カカオポリフェノールについて長年研究してきました。マウスによる研究で同様の結果も出ています。そのため、健康効果が期待できるという今回の結果は、カカオの中のポリフェノールによるものと考えられます」
HDLコレステロール値が上昇するという結果が…
今回の実証研究での際立った結果は、血管中のLDL(悪玉)コレステロールを排除する役割を持つ、HDL(善玉)コレステロール値が有意に上昇したことでした。チョコレート摂取前の被験者全体のHDL(善玉)コレステロール値の平均値は67.9㎎/dLでしたが、摂取後には69.7㎎/dLに増加していました。
資料提供/愛知学院大学心身科学部 大澤俊彦教授
カカオポリフェノールが血管を広げる
チョコレートなどで摂取したカカオポリフェノールは小腸で吸収され、血管の内側に入ります。血管の内側に炎症が生じていると、その炎症によって血管が狭まり、赤血球などが通り抜けにくくなります。そこにカカオポリフェノールが作用することで炎症が軽減され、血管が広がる効果が期待できます。そのため、高血圧の人の血圧が下がったと考えられます。
この中間報告は「蒲郡市民講座」として行われ、客席はほぼ満席。この実証研究は、蒲郡市民の健康意識も高めたようです。講座では、楠田枝里子さんがカカオポリフェノールについて造詣が深いことがわかり、会場をうならせる場面も。
「カカオの学名はテオブロマといいます。これは『神さまの食べ物』という意味です。私が病気もせず、いつまでも元気に過ごせている理由のひとつにカカオポリフェノールがあると確信しています」(楠田さん)
毎日の食生活にチョコレートが欠かせない、と言う楠田さんの健康法に、あやからない手はないですね。
次回は、カカオポリフェノールの効果をおいしくとれる、チョコレート・ドレッシングのレシピをご紹介します。
撮影/板野賢治 イラスト/内藤しなこ 取材・原文/宇野美貴子