華やかな風味の奇跡の完熟胡椒
カンボジア産クラタペッパー
こんにちは、北村美香です。
料理上手への近道として、上質の調味料を選ぶことは、いまや当たり前ですね。でも、塩や醤油、油選びに気を遣うことは多くても、胡椒にこだわる人はまだまだ少ないようです。
胡椒は、体を温め、血液循環をよくし、摂取したカロリーをエネルギーとして消費させる働きがあります。代謝がよくなるので、ダイエット効果もありますね。冷え性の方、代謝が落ちて体重が気になる方には特におすすめです。
私自身、料理の腕をカバーするために、ここ十数年、調味料探しに余念がありません。ただ、おいしい胡椒にはなかなかお目にかかれず、残念に思っていました。でも、ついに出合いました。挽きたてを口に含めば、華やかに匂い立つ香り、さわやかで甘みさえ感じる味わい。うっとりです。
それは、カンボジアで日本人が作っている胡椒です。作り手の倉田浩伸さんにお会いするチャンスがありました。
カンボジア産の胡椒は、中世から「世界一おいしい」と称賛されてきましたが、内戦で木も技術も途絶えてしまいました。二十数年前、NGOの活動でカンボジアを訪れた倉田浩伸さんは、カンボジアの復興のために、人々が自立する産業として、胡椒作りに興味を持ったと言います。しかし、戦闘のため、農地は荒廃し、胡椒の木もなくなってしまっていました。2年にわたる調査の結果、奇跡的に残っていた3本の木をみつけ、現地の人たちと共に復活させたのです。
紆余曲折を経て、いまは5.8haの胡椒園で、胡椒を育て、首都プノンペンに胡椒専門店をオープン。カンボジア土産の「クラタペッパー」として人気を博しています。胡椒作りをカンボジア各地で広め、彼の地の胡椒産業を陰で支えているのも倉田さんです。
「クラタペッパー」のHPから黒胡椒、白胡椒などを購入できます。私がこれだ!と惚れたのが「完熟胡椒」。樹上で真っ赤に熟した実を手摘みし、天日干しにしたもの。倉田さんが独自に作っていて、1房に実る二十数粒のうち、数粒だけを選んで作る希少品です。ほかの胡椒と異なり、風味の華やかさ、爽やかさが格段に違うので、料理の仕上げに使うのがいいでしょう。
私が気に入っている、クラタペッパーの完熟胡椒を使ったメニューをご紹介しましょう。イタリア料理「カチョ・エ・ペペ」。ペペ(コショウ)とカチョ(チーズ)だけのシンプルな風味です。
作り方はシンプルです。
パスタ(スパゲッティーでも、少し太めの麺のほうがおいしい)をゆでます。その間に、フライパンでオリーブオイルとバターを温め、好みでにんにくのみじん切りを加え、ゆであがったパスタを投入します。ゆで汁適量を加えて乳化させ、すりおろしたペコリーノチーズの半量を加えて和え、器に盛ります。残りのペコリーノチーズと、あれば、すりおろしたパルメザンチーズもふりかけ、完熟胡椒をたっぷり挽きかけます。
他に、ご飯にバターをのせ、完熟胡椒をガリガリ。バニラアイスクリームにもガリガリ。胡椒の美味しさを堪能できます。
また、我が家のお酒の〆の定番は「胡椒ご飯」。炊きたてのご飯に熱々のだしをかけ、割り胡椒もしくは挽いた胡椒をかけます。これは、ある料理屋さんでいただいて、すっかり気に入ったもの。料理屋のご主人は、江戸時代のやり方だと教えてくれました。
調べてみれば、胡椒は700年代に鑑真が日本に伝えたとされています。そんなに古くから日本でも使われていたとは、驚きです。体を温め、食欲増進効果もある薬効豊かなスパイスとして大切にされてきたようです。江戸時代の料理書「名飯部類」1802年(享和2年)版に「胡椒飯」が登場しています。炊きたての白飯にだしをかけ、割り胡椒をかけたもの。
完熟胡椒で作ってみたら、後口さっぱり、いつもの胡椒ご飯が数ランク上のお味になりました。
KURATA PEPPER
http://www.kuratapepper.com/index.html