めぐり合いに感謝 、楕円の重箱
初めまして、松田美智子です。
5月から私もOurAge に器のこと、食材のこと、料理のことと思うがまま、感じるがままですが、書かせていただきます。
よろしくお願いいたします。
私は家庭料理を恵比寿のスタジオでお教えして30年になります。
その間に使い手からの思いで自在道具という台所回りの道具や食器を私の目線で作家の方やメーカーの方に作っていただいています。
特に調理道具の素材は木・鉄・土にこだわっている事等、追々、自在道具の事にもふれさせていただきます。
さて、「侈器美食」シキビショクと造語ですが、私のOurAgeでのコーナーの名称です。
素晴らしい器においしい食事、バランスの良い器に美味しい食事はすべての人の幸せにつながります。それには「理」を「料る」という事が不可欠です。このような事を主軸にして進めたいと思います。
よろしくおつき合いくださいませ。
今回は私が今魅せられている漆の器の話をさせていただきます。
輪島に瀬戸國勝さんとおっしゃる作家の方がいらっしゃいます。
以前にも、伊勢丹などで拝見したことがあったのですが、昨年、輪島に行く機会があり、実際にギャラリーにお邪魔しました。
そこで一目惚れした楕円の重箱。
私が求めていたフォルムでした。
モダンで品があり、使い勝手が良さそう。まさに私の道具対しての考えにはまります。そして蓋を取らせていただくと中黒で盛り付けやすい色味です。輪島の漆の素晴らしさは重々存じていたのですが、往々にして、装飾が蒔絵であったり、沈金であったりの装飾が現在の私の住空間にはミスマッチ。若手の方の物は漆の重ね方や色味、形が今ひとつ私にはーーーーーー。使ってみるとすぐに欠ける。剥げる。瀬戸さんの漆は重厚感があるのに、手にすると軽い。漆の重ねも厚そうなのに!
私が調理道具や器を購入する時にまず考える事は、いく通りに使えるかしら、と言う考えです。我が家の住空間を考えると保存のスペースが充分とはいえません。と申しますより、調理道具や食器が多すぎるでしょうが。そこで、食器でしたら少なくとも五通りの使い方が出来ないものは購入には至りません。
たとえは、この3段重ですが、
まず、花を入れてチェストに飾る。
時には一段で前菜を盛ってみる。
3人なら各々皿として盛り付けてもなんて。想像しているだけで
「ウゥ〜お客様したい」最初に三段で蓋をして状態でテーブルに。
おもむろに蓋を外しそれぞれのお客様の前にしつらえる。
絶対、喜んでいただけるでしょうね。
お酒は?お酒のグラスは私のお宝の古いバカラなんか合わせちゃおうかしら。
私はこんな想像でめちゃくちゃ幸せになれるのです。
そして時にはお鍋のザクを盛っても素敵!
お薬味も和紙を敷いてのせれば、漆を傷付ける事もありません。
デザートもいいかしら、と和風アフタヌーンティーのしつらえです。茶器はどうしましょう。
コーヒーを合わせるのか、ハーブティー?中国茶を手の無い古いティーカップでたっぷりもよいかしら、なんて。
軽いおしのぎにおむすびも。
差し入れでお持ちするなら、小倉織りの風呂敷きに包んで
お持ちしたらなんて。
良い道具は和風にも洋風にも、中華風にもと、どん欲な私の食のニーズの表現に答えてくれます。
皆様も新しい道具や食器を購入される時には使い方を1パターンでなく数パターン思いつかれると
あなたの「侈器」になります。
松田美智子
ホームページ http://www.m-cooking.com/