こんにちは小野アムスデン道子です。お菓子メーカー「グリコ」がアンチエイジングスキンケアを開発するグリコ健康科学研究所訪問に続いて、大阪でヘアとスカルプについての研究最前線をのぞいて来ました。
ヘアサロン向けヘアケア用品と言えば、プロのためにプロが開発している商品。「ミルボン」は、1960年に業務用ヘア化粧品の専売メーカーとして出来た会社。白髪・薄毛・うねりなどヘアの悩みやそれらを改善するための研究成果を「ミルボン」の中央研究所で伺ってきました。
中庭にある大きな木には「美髪の木」という名前がついています。
案内してくださった、開発本部研究開発部基礎研究グループチーフリサーチャーの渡邉紘介さんがこの木の名前の訳を教えてくれました。
「ミルボンのコーポレートマークの由来は“和櫛”なので、美しい髪をとく和櫛の原材料であるツゲの木を植えているのです。実はこのツゲの木は日本一の大きさ。ツゲは日本固有種ですから、日本一ということは世界一でもあるんです」。
白衣の人が分析室で頭皮や髪の毛の成分を分析したり、製品テストをしていたり。研究員は60人以上。毛髪・頭皮・抗加齢などについての研究結果は、多い時は年に10回以上も様々な学会で発表をし、業界で共有もするのだとか。
壁ぎわにずらり学会の成果が貼られていて、中にはとても気になるデータも。
「頭皮臭の実験では300名の頭の匂いを6名のパネラーが嗅いで研究。頭皮臭は加齢臭の元であるノネナールも一つの要因ですが、年齢が高いほど頭皮臭が強いというのではなく、一番頭皮臭の不快度が高いのは40代です。ノネナールだけでなく、それ以外の成分も大きくかかわっていることが分りました」と渡邉さん。
20代から40代では頭皮臭の不快度が右肩上がりで、50代になると不快度は減ってきますが、WAXYという埃や粉っぽく蝋のような匂いは50代も高いのです。OurAge世代として、これは気になる。頭皮の匂いって余り意識したことがありませんでしたが、ミルボンでは匂いを打ち消すカウンターパフュームも研究しています。
基礎研究のための設備がとにかくすごく、ミクロを可視化する電子顕微鏡の倍率は最大10万倍!これは、髪の毛1本を20㎡の大きさに広げて見るのと同じなのだとか。髪の毛の断面が真円に近いほどまっすぐになります。これが年齢を経ると変形してうねりの原因になるそう。
さらに場合によっては国が所有する「SPring—8」という円周が1.5kmという大型放射線施設を使用することも。この施設を使ってタンパク質構造まで視ることができ、50代の髪のタンパク質は最外層のタンパク質が減っているために、毛がペちゃんと倒れてしまう、ということが分りました。
水分状態によって研究結果が左右されやすいのが毛髪。基礎研究室は、日本で過ごしやすいと言われる室温25℃湿度50%に保たれています。ここで、髪の毛をねじったり引っ張ったり、直径を測ったりします。毛髪に熱をかける実験も。
「180℃で3秒以上の熱をかけると毛髪内のタンパク質が変化するんですよ」と渡邉さん。
これがストレートパーマの理論に活きているのだとか。
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最後にOurAge世代が気にしているヘアやスカルプについて伺うと、
「以前から悩みとして上げられた白髪・薄毛に加えて、最近はうねりも問題にされる方が多いですね。50代からショートにされる方が増えるのもうねりが一因です。毛髪に水になじまない(疎水性)のタンパク質が増えるからで、これをエイジング毛と呼んでいますが、カラーやパーマによって加速度的に増加してしまいます。これを予防する特殊なケラチンタンパク質を開発しています」。
「薄毛・抜け毛によって髪のボリュームが減ると、老けた印象を与えます。血行促進によって髪の根元の毛乳頭を活性化させる最先端の育毛技術が開発されつつありますが、頭皮にいる常在菌(スカルプフローラ)のバランスも重要であることが最新の研究で分かってきました。だいたい人間の体重の10%はこの菌で、身体全体で100兆、肌の上には1兆の菌がいます。細毛と白髪についての最新研究では、赤味を帯びた頭皮には、コリネバクテリウムという菌が増えていて、この代謝物が毛根に悪影響を及ぼしていることが確認されました。菌のバランスを元に戻すため、増え過ぎた菌を抑えるのに、シソ科の植物は効果があることが判ってきています」。
「頭皮の菌活が重要」という渡邉さん。
「お肌の曲がり角は25歳といいますが、頭皮の曲がり角は30代中盤と捉えています。そこから白髪も出て来て、エイジング毛になっていきがち。ポイントは“保湿”、なるべく早い段階で頭皮も保湿ローションなどでケアすることが重要です」。
髪の見た目を整えるだけでなく、根本のケアの重要性をミクロの写真で知った1日でした。