本人だけでなく、介護をする家族や周囲など、かかわる人全員にとって負担の大きい認知症。どういう病気なのか、そして予防のために今からできることを紹介していきます。
何が原因なの?
認知症の原因となる病気には、前回挙げたように、いくつかの種類があります。そのうち約半数をアルツハイマー型認知症が占め、続けてレビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症など、となります。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は、早期のうちに適切な対応をすることで、進行を緩やかにすることができます。
「今、認知症の薬は、世界に105種類あ ります。けれど特効薬はいまだになく、この28年間、新しい薬も開発されていません。公式に成績が発表されたものだけでも、すでに30連敗以上しているのが現状です。それくらい厄介な病気なのです。そして、日本では認知症患者の8割が女性。もちろん女性のほうが男性より長生きだからという背景はありますが、女性にとって決して他人事ではない問題といえるのです。
それだけに早いうちから、認知症になりにくい体にするための、よい習慣を身につけておくことが大切。この機会にぜひ、自身の生活を見直してください」
(原因となる4つの病気)
〈アルツハイマー型認知症〉
認知症の原因となる病気のなかで、最も多いのがアルツハイマー型です。前段階とされる「軽度認知障害(MCI)」を経て、ゆっくり進行していきます。記憶障害、抑うつ、意欲の低下、不安などの症状を経て、徐々に幻覚や妄想、徘徊などの問題行動が増加。脳の萎縮により運動機能が低下し、最終的に寝たきりの状態になります。
〈レビー小体型認知症〉
大脳皮質の神経細胞内に、レビー小体(特殊なタンパク質のかたまり)が蓄積することで、神経細胞が変性、死滅。それにより認知機能に障害が起きる病気です。初期の代表的な症状は幻視で、実際にはいない人物が見えることも。被害妄想やうつ症状を伴うこともあります。また、脳幹にもレビー小体がたまっていくことで、多くの人がパーキンソン病を発症します。
〈脳血管性認知症〉
脳の血管が詰まったり破れたりする、脳の血管障害が原因となって起きます。代表的なものは、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出 血)。自分でも気づかない間に小さな脳梗塞を繰り返し、それが原因で認知症を発症することも少なくありません。障害部位が局所的で、その部位の機能だけが最初に低下するため「まだら認知症」とも呼ばれます。
〈前頭側頭型認知症〉
脳の前頭葉と側頭葉の障害が原因となって起こります。もの忘れというより、万引きや痴漢行為、大声を出す、暴言など、社会のルールを無視するような行動をとるようになりがちです。相手の言葉にオウム返しで話をしたり、同じルートで徘徊したり、同じものばかり食べたがることもあります。
イラスト/しおたまこ 構成・原文/上田恵子