本人だけでなく、介護をする家族や周囲など、かかわる人全員にとって負担の大きい認知症。どういう病気なのか、そして予防のために今からできることを紹介していきます。
親世代編
認知症にならないための生活習慣
認知症の前段階といえるMCI。認知症と間違えられやすいうつ病。違いをきちんと理解して、早めに対処しておきましょう。
認知症ではないが、健常者とも言いきれない 「MCI」
軽度認知障害(MCI)とは?
「認知症ではないけれども、健常者だとも言いきれないというグレーゾーンの段階の人がいます。この状態を『軽度認知障害(以下、MCI)』といいます」と朝田先生は説明します。
「認知症は、ある日いきなりなるわけではなく、その前段階としてMCIがあります。特にアルツハイマー型認知症の場合は、必ずMCIを経て発症することがわかっています」
日常生活において、もの忘れ以外にもさまざまなサインがあります。それを見逃さないようにすることが大切なのだそう。
「MyAge/OurAge世代の皆さんは、まだ自分が認知症かどうかの心配をする必要はないでしょう。でも、親世代はまさにドンピシャの年齢です。離れて住んでいる人は特に、実家を訪ねた際に、以前とは違う様子がないかどうか気にかけてあげてください」
MCIの兆候は、次の項目でも確認できます。当てはまるところにチェックを入れてみましょう。
□何度も同じ話をする。同じ質問を繰り返す
□「あれ」「これ」「それ」などの言葉を使って話すことが増えた
□今日の日付がすぐに言えない。または思い出せない
□同じ商品を買ってしまうことが増えた
□買い物の会計時、計算が面倒なので小銭を使わなくなった
□外出することが減った
□服装や髪型など、身のまわりに無頓着になった
□趣味が楽しめなくなった
□いつも使っている家電の操作にまごつくようになった
□うっかり水道の水を出しっぱなしにしていることがある
□最近急に怒りっぽくなった。短気になった。こらえ性がなくなった
「3つ以上当てはまる人は、MCIに 該当する可能性があります。ただしこれはあくまでも目安。健常者でも、疲れているときなどは複数当てはまることがあります。ここ数カ月にわたって、3つ以上当てはまる状態が続いているという人は、一度病院を受診してもいいかもしれません」
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認知症とうつ病とMCIの関係
「認知症とうつ病とMCIには、密接な関係があります。まず、MCIの人はうつ病になりやすく、うつ病の人もMCIになりやすい傾向があるのです。ただし、うつ病の人のMCIは治る可能性がありますが、MCIの人が併発しているうつ病は、認知症に移行する可能性が高くなります」と朝田先生。
うつ病は何かきっかけになる出来事があって発症するケースが多く、記憶障害が起こることはあまりありません。投薬など、きちんと治療して症状が改善すれば、認知症に移行することもありません。ただし放置したままでいると認知症になる可能性が高くなるので、注意が必要です。
「よく認知症と間違えられるものに『死別反応』があります。これは配偶者やかわいがっていたペットなどを亡くし、寂しさで呆然としてしまう状態をいいます。簡単に言えばうつですが、このときにご家族が認知症だと勘違いして病院に連れてくることが多いんですね。人間、長年連れ添った大切な相手を亡くしたら、半年くらいぼんやりしてしまうのは当たり前のこと。こういう場合は慌てずに、しばらく様子を見守ってください。半年を過ぎても変わらないようなら医師に相談するとい いでしょう」
(認知症・軽度認知障害 (MCI)・うつ病の関係性)
イラスト/しおたまこ 構成・原文/上田恵子