本人だけでなく、介護をする家族や周囲など、かかわる人全員にとって負担の大きい認知症。どういう病気なのか、そして予防のために今からできることを紹介していきます。
知的好奇心を持って積極的に人と交わり、認知症を回避!
実はMCIになっても、平均で26%の人が症状が改善するといわれています。認知症のタイプにもよりますが、MCIの段階で適切な治療を受けて生活習慣を整えるなどの対処をすれば、認知症への移行を回避、または遅らせることができるのです。
「戻るための秘訣はいくつかありますが、最も効果的なのは知的好奇心を持つことです。いろいろなことに興味を持つ、未知の分野に挑戦する。例えばピアノが得意な人がピアノをやっても刺激にならないので、絵を描いてみるとか。男性なら料理にチャレンジするのもいいですね。人と交わるのも大事です。よく女性がやっている女子会とかランチ会なんて最高ですよ」
運動習慣を持つことも大切です。近所を散歩する、用事のある駅のひとつ手前で降りて歩く。食生活の影響も大きいので、できるだけパンや麺類、ご飯などの糖質を控え、いろいろなものをバランスよく食べるのが理想的です。
「今は炭水化物偏重型の食事をとっている人が多いですが、糖尿病になると認知症のリスクは2倍に、インスリン治療を始めると4倍になるといわれています。とはいえ、高齢になると食事の支度も面倒になってきますよね。そこで私がおすすめしているのが、トッピングで“おにぎらず”です。まず茶碗にのりを敷き、その上にご飯をのせ、サバの水煮やしらす干し、つくだ煮、卵焼きの切れ端など、なんでもトッピングして包んで食べる。たくあんなど歯ごたえがあるものを入れるとゆっくり味わえ、ご飯の食べすぎもセーブできます。のり自体も栄養が豊富ですしね。あとは野菜をたっぷり入れた味噌汁でもあれば文句なしです。ぜひ実家のご両親にすすめてあげてください。また買い物は、そのつどお釣りを計算することが頭の体操になるので、現金での支払いをおすすめします」
毎日の習慣で、認知症は予防できます。親世代はもちろん、MyAge/OurAge世代も心がけておきましょう。
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親のこんな様子が気になったら専門医へ
「認知症と生活習慣の間には深い関係があるので、親の身のまわりに気を配り、変化を見逃さないことが大切です」と朝田先生は言います。
そこでチェックしたいのが衛生面。認知症になると細かいところに意識がいかなくなるので、歯ブラシの毛先が開いているのにずっと取り換えずに使っている、髪の毛を何日も洗わない、着るものに無頓着など、身のまわりのことにかまわなくなったら要注意です。また難聴は認知症になるリスクが2倍になるため、早めの対処を。
「さらに最近の研究で、認知症と歯周病に因果関係があることがわかってきました。歯科医院で歯周病の治療を受ける、定期的に歯石を取ってもらうといったことは、認知症の予防にもつながります。自宅では1日4回の歯磨きと、デンタルフロスでの歯間ケアを習慣にしてください」
イラスト/しおたまこ 構成・原文/上田恵子