その便秘、放置していると大変なことになるかも!
更年期の便秘を甘く見てはいけない理由
「どうせ若いときから便秘だし…」とあきらめていませんか? 更年期以降の便秘の背景には、女性特有の骨盤底筋の緩みや、 腟の劣化がかかわっています。放っておいたら大変なことになる便秘の実態を知り、今のうちに対策を!
教えてくれたのは…
山名哲郎さん Tetsuo Yamana
松峯寿美さん Hisami Matsumine
加齢とともに 便秘しやすくなります
「そもそも便秘は病気ではなく、症状です。排便回数には個人差もあり、1日3回から3日に1回までは正常な回数。毎日排便がなくとも、不快感がなければ便秘ではありません」と大腸肛門科医の山名哲郎先生。
便秘には国際的な定義があり、「強くいきまないと便が出ない」「便が硬い」「詰まった感じがする」「自発的な排便が週3回未満」「残便感がある」「手でかき出さないと出ない」という6項目のうち、ふたつ以上が当てはまったときに便秘と診断されるのです。
便秘はあらゆる世代に見られる排便の悩み。しかし、下の「日本人の便秘人口」にあるように、男女ともに60歳以降に便秘になる人が増加します。
これは加齢とともに食事量や内臓の活動が低下すること、腹筋が衰えて便を押し出す力が弱まること、便意を感じる感覚が変化することなどがおもな原因。さらに女性の場合は、骨盤底筋の衰えが関連していると考えられます。
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我慢すると、 便意がにぶるって本当?
女性が便秘になりやすいのは便意を我慢してしまうことが多いため。便意を逃しては排便リズムが乱れるのを繰り返し、便秘になってしまったという人が少なくありません。そして、先ほどのグラフのように、年齢とともに便秘人口が増えていきます。
便秘なのは「仕方がない」と、つい放置しがち。しかし、更年期以降の便秘を放置すると、将来的にトラブルにつながる可能性が大に。〝加齢ととも に便秘だけの悩みにとどまらなくなっていく〟のが問題です。なぜなら、女性ホルモンの分泌が止まる閉経前後は、骨盤底筋や腟が緩み、それに伴って子宮の位置が下がってくるなど、女性の体の変わり目だからです。
「私は20代から便秘だし」などと侮ってはいけません。更年期の今こそ、生活習慣を見直して、便秘を改善する対策を始めましょう。
【排便反射が起こるメカニズム】
食べ物や飲み物が胃に入ると、胃が結腸に指令を出し、大腸のぜん動運動がスタート。これは〝胃結腸反射″と呼ばれる働きです。そして胃で消化された内容物は小腸で栄養分と水分を吸収され、大腸へ。大腸で残りの水分を吸収され、便として固められます。便が直腸に到達した時点で骨盤底筋にある「便意を感じるセンサー」がキャッチ。「排便したい」と脳に信号を伝えるのです
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/大石久恵