体のどこよりも早く老化が訪れるといわれる「口の中」。
そういえば以前に比べて、歯にものが挟まったり、
歯磨きのときに歯茎の下がりを感じたり、たまに出血したり…
なんてこと起こっていませんか?
もしかしたら、それは「歯周病」が進行しはじめているのかもしれません。
サイレントキラーと呼ばれる歯周病。痛みがないからと見過ごしていると、
歯を失い、全身疾患になることも。今こそケアに目覚めて!
お話を伺ったのは…
Kenji Wakabayashi
若林健史さん
歯科医師、若林歯科医院院長。日本大学松戸歯学部卒業。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや市民向けの講座も多数開いている
Koufuchi Ryo
梁 洪淵さん
薬剤師、歯科医師。鶴見大学歯学部病理学講座講師。薬学と歯科学の両輪で、口腔のエイジングについて研究および臨床を行う。更年期世代の口腔トラブルにも詳しい
女性ホルモンと関係する
口腔内の変化
「閉経を挟んだ前後5年の10年間を更年期と言いますが、この間女性の体にはさまざまな変化が起こります。実は口の中も大きく変化する時期なのです」と言うのは、鶴見大学歯学部附属病院の梁洪淵先生。
女性ホルモンのエストロゲン減少から、口腔内の不快感が急増します。
「女性ホルモンは唾液の分泌にも関与していて、更年期から唾液の分泌量の低下を感じる人が増えます。クラッカーやビスケットなど水分の少ないものが食べにくく、口臭が強くなり、ひりひり感が出る人もいます」(梁先生)
天然の浄化作用を持つ唾液が低下することで、口腔内に常在するフローラ(細菌叢)にも変化が…!
「唾液低下で細菌のエサとなる食べかすも口に残るので、細菌にとっては非常にすみやすい状態になります。また、歯茎も肌と同じようにみずみずしさがなくなり、痩せてきます。また、免疫力も下がるため、歯周病や虫歯など口腔内の問題が悪化しやすい条件がそろってしまうわけです」と言うのは、若林歯科医院の若林健史先生。
両先生ともに、40代後半は「口腔内の見直し年齢」だと言います。
「この時期の見直しが今後の歯や歯周組織の維持や状態に影響します。まず関心を持つことが大事です」(梁先生)
次ページでは、40代後半から口の中で起こる4大低下についてまとめました。
口の中で起こる
4大低下
歯茎のハリ・潤い低下
歯茎は肌と同じコラーゲンなどでできています。年齢とともに肌の潤いやハリが低下するのと同じで、歯茎のハリや潤いもダウン。歯茎痩せ、後退などが出てきます。
唾液の分泌量が低下
女性ホルモンの影響を受ける唾液腺。エストロゲン分泌の低下とともに唾液の分泌量も減少。ネバつき、パサつき、口臭が強くなるなどの変化が出てきます。
口中の善玉菌の数が低下
口腔内にはおよそ700種類もの微生物(フローラ)が存在するといわれています。唾液低下などから、そのフローラの種類が変わり、悪玉菌の数が増えやすくなります。
更年期で免疫力が低下
更年期には、体にさまざまな変化が現れます。特に自律神経がアンバランスになり、ストレスなどを受けやすい状態に。それに伴い免疫力も低下しやすくなります。
次回は、口腔内の変化によって影響がでてくる部位についてお話を聞いていきます。
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/伊藤まなび