見た目ではわからないことが多い歯周病。前回は、チェックリストであなた自身の歯周病の進行度合いを見ていきました。歯周病ってよく聞くのに、どんな症状でどんな病気なのか知らず、見過ごしがちに。今回は、歯周病とはどんな病気かを先生方にお話を聞いていきます。
お話を伺ったのは…
Kenji Wakabayashi
若林健史さん
歯科医師、若林歯科医院院長。日本大学松戸歯学部卒業。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや市民向けの講座も多数開いている
Koufuchi Ryo
梁 洪淵さん
薬剤師、歯科医師。鶴見大学歯学部病理学講座講師。薬学と歯科学の両輪で、口腔のエイジングについて研究および臨床を行う。更年期世代の口腔トラブルにも詳しい
世界一蔓延する病気…
ギネスに認定!
2001年、歯周病は「人類史上、最も感染者数が多い感染症である」ということでギネスに認定されました。
「毎年世界で猛威を振るうインフルエンザよりも感染者数が多いということ。世界中で誰もが感染している病気なのです。日本では30代以上で8割の人が感染しているといわれています。が、治療の現場にいるともっと多いのではないかと思いますね。さらに、問題なのは低年齢化です。子どもですでに歯周病になっているケースもあります。更年期世代ならそろそろ孫のいる方もいるでしょう。口移しなどでものを与えると、孫にも感染するので要注意です。自分は"すでにかかっている"と思ったほうがいいでしょう」(梁先生)
歯周病ってどんな病気なの?
「歯周病は、細菌の感染によって起こる炎症性疾患です。口の中には、300~500種類の細菌が常在し、普段は日和見菌で悪さをしません。でも、歯磨きが不十分だったり、加齢で唾液分泌が低下したり、砂糖を過剰摂取したりすると、細菌は粘着物質を出して、歯の表面にこびりつきます。これがプラーク(歯垢)です。このプラークの中には10億個(1㎎内)もの細菌が存在し、虫歯や歯周病などの悪さを始めます。特に、歯と歯肉の境目の歯肉溝はプラークが付着しやすく、徐々に炎症が起き、腫れて出血します。さらに進行すると、歯周ポケットが深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が不安定になり、最後は抜歯という道をたどります」(若林先生)
歯周病がない健康な歯は、歯と歯の隙間や歯と歯肉の間にプラークの付着がなく、歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)も隙間がなく、キュッとしまっています。歯肉もきれいなピンク色でハリと潤いがあり、下がっていません。
歯周病があると歯と歯の間や歯と歯肉の間にプラークが付着。歯肉は赤くぷよぷよと腫れて充血しています。歯ブラシを軽く当てるだけで出血することも。歯肉も後退。さらに進行すると、歯肉の下にある歯槽骨も溶けて萎縮してしまいます。
実は怖い病気、歯周病。次回は、歯周病が全身病ともいわれる理由についてお話を聞きます。
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/伊藤まなび