日常なにげなくやっていることが疲れの原因になっていることも。
そもそも〝疲れ〟を感じるとき、私たちの体ではどういうことが起こっているのでしょうか?
睡眠に詳しい梶本修身先生にその秘密を伺いました。
自律神経が疲弊すると人は〝疲れ〟を感じる
「私たちは、何らかの活動をして疲れを感じると"体が疲れている"と思いますよね? 例えばランニングをしたら脚の筋肉が疲れた、パソコン作業をしたら目が疲れたなどと、体の使った部分が疲れていると思いがちですが、実はそうではありません。疲れる部分はただひとつ、〝脳〟で、具体的に言えば脳の自律神経の中枢です。例えば運動や入浴をすると呼吸や心拍、体温などを調節しなければならないため、脳の自律神経中枢がフル稼働します。また、パソコン作業などの際に目のピントを合わせるのも自律神経なので、このときも、酷使されるのは自律神経です。こうして自律神経が疲弊すると体内で活性酸素が発生し、細胞が酸化ストレスにさらされます。その結果、細胞が本来の機能を維持できなくなり、思考力や注意力が低下したり、動作が緩慢になったり、目のかすみ、頭痛、肩コリ、腰痛などの症状が現れてパフォーマンスが低下します。これが疲労の正体です。つまり疲れとは脳の疲労のことなのです」(梶本先生)
疲れが生じるメカニズム
1 脳の自律神経中枢で酸素が大量に消費される
運動やパソコン作業、入浴など何らかの活動をすると脳の自律神経中枢が稼働して大量の酸素が消費されます
2 自律神経の細胞で活性酸素が発生
すると自律神経の細胞で活性酸素が大量に発生します。疲れの直接的な原因になる物質は、実はこの活性酸素です
3 活性酸素が神経細胞を酸化させる
大量に発生した活性酸素は、自律神経の神経細胞を酸化させ、サビつかせます
4 神経細胞がサビつき、本来の働きを果たせなくなる
すると自律神経が本来の機能を果たせなくなり、こうして生じるのが疲労。自転車のチェーンがサビると動きにくくなるのと同じです
副交感神経を優位にして疲労解消を
では、疲れを取るコツとは?
「自律神経には心身が活動モードのときや緊張状態のときに優位になる交感神経と、リラックスモードのときに優位になる副交感神経があります。このうち交感神経優位のときは、最大のパフォーマンスを発揮できるよう自律神経中枢はフル稼働状態になり最も疲弊します。ですから疲れを減らすコツは交感神経優位の時間を減らし、副交感
神経優位の時間を増やすこと。例えば激しい運動は交感神経を優位にするので、疲れたからすっきりしようと思ってランニングをすると疲労に疲労を重ねるだけ。このように間違った方法をとっていると〝何をしても疲れが取れない〟という事態に陥ります。また、自律神経機能は加齢とともに低下し、疲れやすくなるので要注意です」
脳の自律神経機能は、10代をピークに年々減少、40代になるとその半分になり、50代になるとさらに20代のときの3 分の1にまで低下。OurAge世代になると疲れやすくなるのはこれも大きな原因
次回以降に正しい疲労解消術をご紹介します。疲れをためない体づくりを。
東京疲労・睡眠クリニック院長 梶本修身さん
Osami Kajimoto
イラスト/いいあい 取材・原文/和田美穂