OZONE家designが提案する「インテリアコンサルティング」のコースのひとつ、「オーダー家具コース」に正式に申し込みをした私、マドレーヌ。
OZONEのインテリアデザイナーである山田佳代子さんが、私との打ち合わせを踏まえて、最適と考える家具メーカーの方を紹介してくれた。
◆5月●日
OZONEの山田さんが、我が家に、家具制作C社の松本さんとともにやって来る。
C社は「『建築に溶け込む』『インテリアにマッチする』オーダー家具やキッチン作り」を得意とする会社で、最近では「オーダードア」の注文も多いという。
松本さんは、いまどきの建築・設計系のおしゃれな好青年という印象。打ち合わせ中、不思議なタイミングで私の言葉をメモする。オーダー家具の要望の聞き取りというのは、私が仕事でするインタビュー取材に近いものなのかもしれない。何気ない言葉の中に、その人のこだわりが隠れていることがあるのだ。
当然松本さんにも、山田さんに見せた、お気に入りの切り抜きを見せる。松本さんも切抜きを見て、「こ、これは、どうしたものか…」と無言になった気がする。
現実と理想が違って、みなさま、すみません。
山田さんの手配で、同じ時間帯に、二重窓や、ベランダのタイル施工を依頼したOZONE登録リフォーム会社の方も、現地調査に来てくれた。
これは、この後もずっと続くのだが、
OZONEの山田さんが、各企業のスケジュールをきめ細やかに調整してくれた。
家具、ブラインド、窓、タイルなどの複数の打ち合わせや下見、工事を、なるべく同日に重なるように設定してくれたおかげで、本当に助かった。自分で全部の依頼先を探して、スケジュール管理をしていたら、私のことだ、今も工事は完了していなかったに違いない。
さて、打ち合わせ後、みんながメジャーを手に、リビングのあらゆるところを計りまくった。
「見ていいですか」
とすべての引き出しを開け、エプロンやルームソックスが隠してあるかごの中まで確認。
今まで家に人を呼んだことすらほぼないのに、
いきなり、すべてをさらけ出す状況に。
なにが入っていて、どう困っているのかの確認なのだと思う。
こうなったら、まな板の上の鯉だ。なんでも見てもらおう。
キッチンの入り口脇の壁に凹型の隙間があり、入居前にニッチ収納を作ったのだが、使い勝手が悪かった。相当ぐちゃぐちゃに詰め込んでいたが、恥を忍んでそこも見てもらう。奥行きがあるのに、仕切りが少ないせいで、使いにくいという判断で、引き出しを作ってもらうことになった。
なんと全部で3時間ぐらいかけて、じっくり相談した。
◆6月●日
最初のたたき台となる家具設計図のたたき台がメールで届いた。収納したいものが、ちゃんと入るかどうかを、チェックせねば。それは置いておいて、ここまで大きい収納家具だと、アンティーク家具を買ったとしてどこに置くのだ? う~ん。
◆6月■日(翌日)
リビングデザインセンターOZONE 7Fのミーティングルームで、昨夜送られてきた収納家具の設計図をたたき台に打ち合わせ。
送られてきた案は、収納したいものの量を考慮し、また、窓からのルーフテラスの眺めや光をさえぎらないように、窓下に長いL字型の家具を作るスタイルだ。
引き出しは、場所ごとに、扉の有無や、仕様などが変えてある。
効率的にものを収納したいことを汲んでくれている。
しかし、思ったよりずっと大きい。圧迫感はないか?
そして、アンティーク家具を置く位置はどうなる?
今まで、アンティーク家具を買ったら、L字の角に置くのかな、とぼんやりイメージしていた。それに合わせてアンティーク家具を探していたのだが、あいかわらず気に入るものを見つけられていない。
だったら、今使っている食器棚を処分して、そこに置くのか。幅100cmぐらいしかないが…。う~ん。
ちょっと
理想から遠のいた気がしてへこんだ
のだが、引き出しの取っ手の仕様、木の選択などを相談するうちに、
収納家具の様子が具体的に見えてきて、
また楽しくなってきた。
まあ、いいか、アンティーク家具はなかなか見つからなさそうだし。
お得意の
「後回し」にして、
先に収納家具のことを考えよう。
◆6月●日
深夜自宅で、設計図のたたき台をもとに、どこに何を入れるかを、じっくり考える。
収納したいもののサイズを測って書いていく。手書きの要望メモは場所別にA4サイズ4枚になった。
カメラ、CD、ブルーレイレコーダー、PC、プリンター、花びん、アイロン、アイロン台などなど。
それからどうしても作りたいのが、“とりあえず”取って置きたい書類をぱっと入れる引き出しだ。A4が余裕で2列入るサイズを指定する。
そのほかに、山田さんからいくつかの宿題が出ていた。
◆6月▲日
山田さんからの宿題で、製品や建材など、使用するものを、ショールームやサンプルを見て決定していった。
基本的に、私が見に行ったり集めて、自分で決めて、それを(念のために)夫に報告して認定を受ける流れだ。
二重窓のショールーム2ヶ所をまわり、現物を見る。
マンションであとから二重窓にできることをはじめて知ったのだが、驚くほど保温・断熱効果が高く、結露も減るのだそう。結露の気になる3ヶ所の窓に設置することに決める。メーカーは、無垢の木を使ったMOKUサッシ(WOOD ONE)にし、壁やブラインドに合わせて色はオフホワイトに決めた。夫も文句なし。
同時に、大規模修繕で廃棄されたベランダのタイルも、いくつかサンプルを取り寄せて決めた。ここはこだわりすぎず、清潔感があってまぶしすぎず、リビングと一体感のあるベージュに。
さらにペンダントライトの現物を見に行く。
山田さんが、最近の照明の流行やおすすめを教えてくれ、さらにネットで探して、自分の好きな候補をいくつか決める。
世の中的には、ダイニングテーブルの上の低い位置に、小さなものを3つ下げるか、大きいものをひとつ下げる北欧風アレンジが人気だ。だが、低い位置の照明に関しては夫が
「じゃまだからいやだ」と断固拒否。「老眼対策だから」と説得して、
ひとつだけ、それも、あまり低くない位置に下げることにした。
目立ちすぎないよう乳白ガラスタイプがいい。
「高めの位置にする場合は、下から見上げたときに、電球が見えてまぶしい場合があるので、口がすぼまった形のほうが安心ですよ」と山田さんからアドバイス。
デンマークの照明器具メーカーであるルイスポールセンのショールームや、あとはアクタスやザ・コンランショップなどインテリアショップで実際に使われているのを探しては、まじまじとチェック。ひとつのデザインでいくつかのサイズ展開があるものも多いので、それぞれ、我が家だったらという目で確認。
さて、この13年ぶりのリフォームフプロジェクトをスタートさせた直後に、実家の両親がサ高住(サービス付き高齢者住宅。簡単にいうとケア付き賃貸マンション)に引越しし、実家をたたむという大事業が決定した。
マンションの大規模修繕からはじまり、ルーフテラスの植物の大移動&ウッドデッキの一時撤去と再設置、ベランダのタイルの廃棄と再設置、リビングのリフォーム、両親の引越し、実家をたたむあれこれ、たくさんの契約書…。自分の決断のタイミングもあるけれど、忙しいときに、いろんなことがいっぺんに来るものなのだ。
まあ、50代はそういう年代なのだろう。仕方がない。
うちの家系で唯一趣味のよかった父方の祖母が骨董好きで、私は祖母が健在なうちに、たくさんの器を譲り受けた。実家をたたんだことで、母が祖母からもらった骨董や、両親が使っていた花瓶や器などなど、捨てるに忍びないものが、さらに我が家にやってきた。
また、親の家をたたむという経験をしたことで、「好きなもの、必要なものだけと暮そう。好きでもないのに高価だとかもったいないからと、とっておいても、かえってスペースがもったいないだけだ」と悟った。
この時期、家具にどんな木を使うのか、色をどうするのか、決められず悩んでいた。いくつかサンプル板を作ってもらい、床の色との関係を見た。床の薄い木色と、あまりに似た色だと、なんだかへんなのだ。どうしたらいいのだろう。
◆8月●日
OZONE 7Fのミーティングルームで1ヵ月半ぶりの打ち合わせ。
私がサイズ出しした手書きの要望メモの内容を汲んで、松本さんが練り直した家具の設計図を前に、細かい点を詰めていく。ここで、OZONEインテリアデザイナー山田さんの
鋭いチェック機能が発動した。
「この仕様だと、引き出しが目いっぱい出てこず、奥が見えない部分があるが、それはレールの長さの問題で仕方ないのか」「奥にまだ空間があるが、有効に使えないか」「電気コードを通す配線孔は、もっと大きくしたほうが配線作業が楽になる」「動線に対して、この扉の開きは、左右逆のほうが使いやすい」「指をかけやすい扉にするには」「ここの仕様が弱い」「ここには、後ろに立ち上がりをつけたほうがいい」「隙間に紙が落ちる可能性がある」等々、
あとから困りそうなことを、たくさん見つけて、俎上に乗せてくれた。
実際に作ったことがないと気付けないこと、経験からくる指摘ばかりで、
これぞ、まさに「神対応」
だと思った。
後から聞いたのだが、山田さんがこの収納家具の特徴として、確実に押さえたのは2点。
ひとつは、L字の角に電源・TV・PCのマルチメディアコンセントがあり、コードがごちゃごちゃになっているのを内側にすっきりさせること。
もうひとつは、今までの経験で、L字収納は、内部収納が使いにくくなってしまうことが多いのだとか。私は収納したいものが決まっていたので、効率よく入れられる内法(うちのり)寸法を微細に検討した点だという。
これは、本当にありがたかった。すでに「オーダー家具コース」の契約料をはるかに超える恩恵を受けたと、この段階で感じていた。
◆8月▲日
OZONEのミーティングルームで、前回ミーティングの変更点を反映した設計図を元に再検討。
毎回ミーティングに2~3時間程度かかる。もうこれで終わりだろうと思っても、松本さんから、まだ他の確認点が出てくる。OZONE山田さんと家具の松本さんの仕事へのこだわりはすごい。私も仕事でしつこいといわれることがあるが、それ以上かも。仕事柄、ミリ単位の間違いが許されないこともあろうが、こちらの意向を汲もうとしてくれる
誠実さとプロ意識に頭が下がる。
◆9月●日
最後の確認採寸のために、自宅に山田さん、松本さんがやってくる。
私はニッチ収納に関して少し前まで勘違いをしていた。今ある棚に引き出しだけ加えるのかと思ったら、全面作り直しということが判明。だったら、新聞の収集袋を取り出しやすくしたいという要望を追加。その方法について、みんなで1時間以上知恵を出し合う。あの重い袋を持ち上げるのに、今までどれだけ苦労していたか!
これは、かなりの難題で、松本さんも頭を抱える。
あいかわらず、木の種類を決めかねていた。もう決定しないといけない段階になり、松本さんにプロとしてのお勧めを聞いてみた。
「どんな木だとしても、着色せずに木のそのままの色がいいと思います。
丈夫だし、一番、その木のよさが感じられます」。
お~。さすが家具のプロ。説得力がある。
それでは、やはりメイプルだ。
ただし、一般的なハードメイプルだと床の色と近すぎて微妙なのだ。そこで、OZONEのショールームにも使われていて、以前の打ち合わせのときに見て、気になったカーリーメープルを選ぶことにした。色はメイプルと同じだが、少しだけくねくねとした細い木目があるため、床と似すぎず、ほどよいメリハリが出る。
◆9月▲日
二重窓と南ベランダのタイルの下見、最終的な採寸。
◆10月●日
OZONEのミーティングルームで、収納家具の、さらに細かい点を詰める。
なんと、家具制作の松本さんは、私が、購入予定のプリンタの用紙排出の位置を確認するために、家電量販店まで見に行ってくれたそう。
これまた「神対応」!
他にも、花びん収納の引き出しは、底板を厚くして丈夫にするなど、オーダーメイドならではの細かいケアがすごい。
家具の設計図は、打ち合わせのたびに修正され、すでにバージョン6になっている。
工事日程を決める。たくさんの工事を順序よく4日で終了するようにOZONE山田さんが手配してくれた。
◆11月●日 ▲日
工事が始まる。
この2日間ですることは、ブラインドをはずして、工場に持っていき、板を生かしつつ装置を新型に交換(上下動が劇的に軽くなる)、ニッチ収納解体、ペンダントライトの配線、南ベランダタイルを設置、二重窓設置の工事等。
山田さんが工事の挨拶状と粗品を持ってきてくれ、いっしょにマンションのお隣や下2軒にひとこと挨拶に行く。マンションの管理組合には、許可を取ってあったが、戸別のお宅に行くことを思いつかなかった。こういう対応も、きちんとしていて安心だ。
夕方ペンダントライトの配線工事が終わったので、そこに、紙で作ったライトの模型を下げてみる。ライトのコードの長さを山田さんにも見てもらいつつ決定。邪魔にならないよう、最近の流行より短くすることに。輸入業者にコードの長さ指定込みで発注してくれた。
◆12月●日▲日
いよいよ、家具の材料がやってきた。L字型で大きいので、完成させてしまうとエレベーターに乗らないし、玄関も通らない。部分部分を組み立てたものを持ってきて、現場で合体させた。しずしずと、天板を乗せる。
いよいよ、完成だ!
<つづく>
撮影/山田英博 マドレーヌ(説明カット)
インテリアコンサルティング