治る見込みのある認知症症状もあるということは、前回学びましたが、見極めるためにも認知症のタイプについてもしっかり知っておきたいですね。ミーナといえば、認知症=アルツハイマーと思い込んでいたので、ちゃんと知っておきたいです。また治る見込みのある認知症症状も、適切な治療をしないと真性にに移行することもあるとか。とにかく、早めのチェックが肝心ですね。
もしも家族が認知症になったら。
そして、自分も。
認知症にならないために
50代から始めること
OurAge世代にとって、認知症による親の介護は身近な問題。夫や自分自身が認知症になるのでは!? という不安とも直面しています。2014年に発表された、団塊の世代が75歳を超える2025年には認知症人口が約700万人、65歳以上の5人に1人が認知症という推定値を聞けば、なおさら。何か対策を始めるのが賢明です。
認知症の根本的な治療法や予防法が確立されていない今、何よりも大切なのが早期発見、早期治療、そして予防。ここでは、手遅れにならないための認知症の見つけ方と予防法を、認知症の専門医の奥村 歩さんが伝授します。
今回は、「認知症原因のトップ3」と「治る3大仮性認知症」についてご紹介します。
奥村 歩さん Ayumi Okumura
1961年生まれ。「医療法人三歩会 おくむらメモリークリニック」院長。
脳神経外科医の視点から「もの忘れ外来」を中心とした認知症診療を展開。
全国から毎日平均100人が受診。
多数の著書の出版や講演、メディア出演で認知症の予防、早期発見、治療を啓蒙中。
近著に『認知症にならない! 「もの忘れ外来」徹底ガイド』(日本文芸社)
認知症の「原因」と「治る可能性」のある認知症
認知症とひと言で言っても、その原因はさまざま。ほかの病気が原因で、認知症と同じような症状が出ることもあり、その場合、適切な治療で治る可能性も。
専門医の診断を受け、タイプ別に理解することが大切です。
【認知症の原因3大トップ3】
①アルツハイマー型認知症
少し前に見たり聞いたりした出来事を忘れてしまう、記憶障害が特徴的な認知症。記憶障害以外の中核症状(認知症の根本的な症状)には、自分と外界との位置関係が不明瞭になったり、道に迷いやすくなる視空間認知の障害や、段取りに従って行動できない遂行実行機能の障害があります。言いたいことがうまく言えない、相手の言葉の聞き取りが不十分になるといった言語障害が見られる場合も。問題解決能力や判断力が低下するため、日常生活を送るのに支障が生じます。
②レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、第2の認知症と称されています。アルツハイマー型とよく似ていますが、レビー小体型の認知障害、記憶障害の主体は注意力や集中力の低下で、昼間の覚醒度が低下してくる場合も多いため、症状の出方に大きな波があります。リアルな幻視という特有の症状が強調されますが、必ずしも起こるわけではなく、多様な症状のひとつに過ぎません。寝言が多くて寝相が悪い、また便秘や立ちくらみなどを起こすなど自律神経症状が特徴的です。
③脳血管性認知症
脳梗塞やくも膜下出血など、脳卒中の後遺症によって生じるタイプの認知症です。脳の血管が破れたり詰まったりすることで、障害を受けた部分の働きが悪くなります。脳血管障害が進行、増悪し、脳内ネットワークの働きが不具合になることによって認知症を発症します。身体機能低下のため、意欲の低下やうつ状態を合併することも多いです。
適切な治療で治る可能性のある「治る3大仮性認知症」については次ページで
【治る3大仮性認知症】
①うつ病性仮性認知症
脳で神経伝達物質に不具合が起こり、集中力や注意力、記憶力、実行力が低下し、上の空状態に。もの忘れやうっかりミスがひどくなり、頭痛などの体調不良や不眠、食欲不振などを併発します。薬と休養などの治療で改善する可能性が高いのも特徴的。
うつ病は服薬しないでも自然治癒することもあり、うつ病が治ることで認知症状も改善しますが、加齢などによって、真性認知症へ移行するリスクが高くなることも最近わかってきました。そのため、うつ病性仮性認知症は、認知症予備軍とも考えられています。
②特発性正常圧水頭症
認知症に似たもの忘れのほかに、ぺったんぺったんと歩き、転びやすくなる歩行障害が特徴的な病気です。歩幅の減少、足の挙上低下、左右の足幅の拡大が顕著で、座った状態から起立したり、歩行時の方向転換がスムーズにできないなど動作の開始や転換が困難になります。
また、尿意を覚えてからトイレにたどり着くまでの排尿抑制ができなくなります。ただし、これら3つの症状がそろわないケースも多々あります。手術で劇的に治る可能性もあるのに、診断が難しいために多くの症例が見逃されているのが現状です。
③薬剤性認知症
風邪薬や、花粉症対策などの抗アレルギー剤、胃薬、高血圧の薬、安定剤、睡眠薬などの常用により、いかにも認知症のような症状に悩まされる状態。服用している薬の量や処方をコントロールすることで症状は軽減します。今まで常用していた薬でも、疲れや老化による体の変化で、予期せぬ副作用として認知機能が低下することがあり、複数の薬を長期連用することで、薬剤認知症のリスクが高まります。
ドクターショッピングや薬が好きな方は要注意。本当に必要な薬だけを最小限、最短期間のみ服用する姿勢が大切です。
次回は、最近注目を集めている「MCI(軽度認知障害)」、いわゆる「認知症予備軍」の状態の早期発見が認知症予防になるというお話をご紹介します。
取材・原文/蕨 康子