更年期女性は、内臓脂肪のほうが皮下脂肪よりつきやすいけれど、実は落としやすくもあります。いつの間にか増えて、取り返しがつかないことになる前に対策を!
内臓脂肪と皮下脂肪、性質が違うことに注目!
内臓脂肪と皮下脂肪は、たまる場所だけでなく性質も異なり、内臓脂肪のほうが落ちやすいとされます。
「脂肪細胞は脂肪をためて大きくなりますが、この変化は内臓脂肪細胞のほうが顕著です。皮下脂肪細胞は、ある程度大きくなると分裂し、あまりエネルギーを供給しない、正常の大きさの細胞に戻ります。この違いが両者の脂肪の燃え方の違いです。
また、内臓脂肪は、脂肪細胞が大きくなると分泌するホルモンが変化し、メタボリックシンドロームにつながり、さまざまな問題を起こすのです」(横山裕一先生)
内臓脂肪は肥大型!
際限なく増えても落としやすい
女性ホルモンが減ると、腸のまわりにある内臓脂肪細胞に脂肪がたまり、細胞ひとつひとつが大きくなります。でも、その脂肪は、体にエネルギーが入ってこなくなったとき、皮下脂肪細胞にたまった脂肪より先に分解されるため、皮下脂肪よりずっと落としやすいのが特徴です。
内臓脂肪
●細胞が大きくなる
内臓脂肪細胞は、脂肪がたまって大きくなっても分裂せず、ふくらみ続ける細胞肥大型。ここからは脂肪を追い出しやすい
皮下脂肪
●細胞が分裂して増える
皮下脂肪細胞は、脂肪がたまると正常細胞に分裂していく細胞数増殖型。数は増えるが正常細胞なので、脂肪は追い出しにくい
内臓脂肪細胞の巨大化が
悪玉ホルモンを増やす
●内臓脂肪が正常のとき増える善玉ホルモン
内臓脂肪細胞が正常のときや、脂肪を追い出して小さくしたときに、インスリンを助け血糖値を下げる「アディポネクチン」などの善玉ホルモンを多く分泌しています。これにより糖尿病も予防されています。
主な善玉ホルモン
インスリンの効きをよくする
アディポネクチン
インスリンの効きをよくし、糖尿病を予防したり、動脈硬化や脂肪肝の進行を抑えるよいホルモン。内臓脂肪が巨大化すると分泌が減り、その結果、糖尿病、脂肪肝などになります。
食欲抑制・脂肪分解促進
レプチン
満腹感を脳に伝えて食欲を抑えてくれるのがレプチンというホルモン。エネルギー消費も高めるといわれます。ただ、これを多く分泌しているのは内臓脂肪より皮下脂肪とされています。
●内臓脂肪が巨大化すると増える悪玉ホルモン
いったん内臓脂肪細胞に脂肪がたまりはじめると、善玉ホルモンのアディポネクチンの分泌は減り、さまざまな悪玉ホルモンが分泌されるようになります。この変化がメタボの元凶です。
主な悪玉ホルモン
- 血圧を上げる
アンジオテンシノーゲン - 肝臓を悪くする
TNF - 動脈硬化を促進する
HB-EGF - 血栓を作りやすくする
PAI-1 - インスリンの効きを悪くする
レジスチン
教えていただいた先生
横山裕一さん
Hirokazu Yokoyama
1959年生まれ。慶應義塾大学保健管理センター教授。医学博士。当初、アルコール代謝を研究、米国留学中、アルコール脱水素酵素(ADH7)の遺伝子解析に従事。本センター異動後は、飲酒を含めた生活習慣、メタボリックシンドローム、脂肪肝などをテーマに数々の研究成果を報告。著書に『こうして落とす! 女性の内臓脂肪』(PHP 研究所)
栗原 毅さん
Takeshi Kurihara
1951年生まれ。栗原クリニック東京・日本橋院長。医学博士。日本肝臓学会専門医。治療だけでなく病気予防にも力を注ぎ、わかりやすい生活習慣指導に定評あり。肝臓専門医の視点を生かした消化器疾患、糖尿病、高脂血症、脂肪肝、内臓脂肪、肥満などに関する著書多数。クリニックは連日、健康を気遣う中高年で満員に。
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イラスト/マイコ センボクヤ(CWC) 構成・原文/蓮見則子