【教えてくれた人】
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修了。慶應義塾大学SFC研究所 食・フードサイエンス&テクノロジー共同研究機構メンバー。著書は『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『20kgやせた! 糖質オフ入門 最新版』(宝島社)などすでに28冊に及ぶ。ベストセラーも多数。
あなたの立ち姿勢、ちゃんと筋肉を使えていますか?
こんにちは、こんばんは。
朝に夕に、食べ物と健康のことばっかり考えている管理栄養士の麻生れいみです♪
「立っていることが多い仕事なんだけど、痩せないなぁ」と不思議に思っている人、いますよね。
ここでの立ち仕事とは、スーパーやコンビニのレジ、アパレル販売員や飲食店などの接客業、あまり運動量の多くない仕事のことを指すとしましょう。
スーパーやコンビニのスタッフ、アパレル販売や飲食店スタッフでも、座ったり立ったり荷物を運んだりの作業が多い…など運動量の多い仕事は除いてね。
活動量が少ない立ち仕事では、思ったよりも消費カロリーは少ないのよ。
残念ながら座って作業をしたときと立って作業をしたときの消費カロリーはあまり変わらないという結果が研究で出ています。
「立っているときの消費カロリーは、座っているときの2倍」 といわれていた時期もあったけれど、数年前のメタ分析(複数の研究結果を集めて分析する手法)で、そうではないという結果が出ていたんです。
それによると、デスクワークなど座り姿勢中心の仕事と、立ちっぱなしの仕事を比べると、消費カロリーは1分当たり平均0.15 kcalしか差がなかったのよ。
1日8時間働いたとして、多く見積もっても約72kcalの差にしかなりません。これ、白米のご飯茶碗3分の1杯にも満たないカロリーです。
仕事内容や個人差もあるので一概には言えないけれど、ずっと立っているだけではダイエット効果は期待できないということ。
しかも、姿勢が悪かったらさらにダイエット効果は薄いわね。
「姿勢が悪い」というのは、一般的には…
- 背中が丸まっている
- 首が前に突き出ている
- お腹を突き出している
- お尻を突き出している
- 腰が反っている
- 肩が前に出ている(巻き肩・前肩)
などのことを指します。
これらの悪姿勢はボディラインのくずれや、肩こり・腰痛・関節痛などにつながるだけでなく、ダイエットにも悪影響。
よくない姿勢は「抗重力筋(姿勢筋ともいいます)」が使えていない、使わなすぎて衰えているからです。
抗重力筋とはこの文字が表すように、地球の重力に抗って姿勢を保つために働く筋肉のこと。体の前後を支えていて、立ったり座ったり歩いたりといった日常動作の要。
よい姿勢をとり続けている人は抗重力筋が使われ、無意識に筋トレをしていることになりますよね! 抗重力筋が自然に育って筋肉量が増え、基礎代謝が上がりやすいともいえます。
一方、よくない姿勢を続けていると重量に逆らえず体形がくずれるわ、抗重力筋が衰えるわで、いいことなし!
立ち仕事の方は、暇さえあれば抗重力筋を思い浮かべて、よい姿勢をとることを忘れずにね。
それができれば、24時間いつでもエクササイズをしているのと同じことになるのよ!
メンタルのお疲れと体の疲労感、混同しないことも大事
また、立ち仕事の中でもコンビニやスーパーのレジなどは、体の運動量的にはたいしたことがなくても頭の疲労感はかなりあるでしょう。
お客さんが列になって待たれてイライラされていたら、気を遣ってそりゃ精神的にも疲れます。
疲れた体には甘いものよ! なんて言って3時のおやつはご褒美ねと、スイーツを食べる。
脳を使う人は甘いものを食べて糖分補給しないと頭が回らないと、昔から教育されてきましたしね、昭和の世代は。
でもこの連載でも言っているように、糖質が高いものよりタンパク質のほうがいいのよ、おやつに食べるなら。
そして冷える場所での立ち仕事は、代謝が悪くなる。ビルの中もそう、スーパーなどのお店の中、特にコンビニやスーパーのレジなどは足元が冷えるのでは?
なるべく温かいものを食べましょう。女子は40歳過ぎたら体を冷やさないことも大事。
違う視点では、立ちっぱなしの仕事はむくみにもつながります。血流が悪くなって水分をため込んでしまうから、実際に体重も増えます。
仕事中に運動はできないとしても、終わったら歩くとか体を動かすことで、その日のむくみを取る努力はできると思う。自転車や車じゃなくて歩きましょうよ。
ただ、地方の方などは日常的に移動が車じゃないと不便なこともありますよね。
地域によっては、ちょっとだけ運動しに行くフィットネスジムなどにも、ちゃんと駐車場もあるということに驚いた私でした。
現代は、なにせ体を使わない生活ですからね。家電なんか超楽ちん。ロボット掃除機に全自動洗濯機に、食洗機だってあるしね。
昔のように体を動かして家事をする機会も減っているので、どこかで“わざわざ”体を動かさない限り、本当に活動量が少ない生活です。
それで痩せないんですけど…、は当たり前と思いましょう。
そうこうしているうちに、この連載も今回が最終回です。
一貫して「痩せないんですけど〜」のお悩みや疑問を解き明かしてきましたが、よく考えれば「そりゃ当然よね」と思っていただけることも多かったのでは?
ただ、痩せない理由はひとつとは限りません。40代以降の女性はホルモンの波も大きく、いろいろな原因が複雑に絡み合っている場合が多いと思います。
そして個人差があることを忘れないでね。持って生まれた素質もあるでしょうし、40年も50年も生きていれば代謝能力にも差が出ます。
体組成(体を構成する成分:筋肉、骨、脂肪、水分などのバランス)は一人一人違うので、ベースとなる基礎代謝量からして違います。
「あの人はそうかもしれないけど、私の場合はどうなんだろう?」または「私はこうだけど、これが全員に当てはまるものでもないわよね」と、いつも自分に置き換えることも大事です。
皆さんが「なぜ私ばっかり太ってるの?」と思わず、自分で解決策を見出せるようになることを祈っていますね!
取材・文・画像作成/蓮見則子 イラスト/カケハタリョウ