ちょっと気になる病気
手足のしこり
私がお答えします!
独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター整形外科医長、骨・軟部腫瘍センター長
森岡秀夫さん Hideo Morioka
独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター整形外科医長、骨・軟部腫瘍センター長。東京医療保健大学大学院臨床教授。慶應義塾大学医学部講師などを兼任。著書は60冊以上
相談
手首にしこりができました。夫は「ただの脂肪の塊だよ」と言いますが、放っておいていいものでしょうか?
答え
良性のものなら大丈夫ですが、まずは専門医を受診して、悪性ではないか診断してもらうことをおすすめします。
手足のしこりとは?
99%は良性。とはいえ悪性の場合もあるので
放置せずに診断を受けることが大事。
ふとした瞬間に気づく、手足にできた「しこり」。特に痛むことがなければ、ただの脂肪の塊だと考えて放置している人も少なくないのではないでしょうか。
しこりの多くは軟部腫瘍と呼ばれ、体の柔らかい組織にできます。大きさは米粒ほどのものから30㎝を超えるものまで。しこりとひと口に言っても種類は140種もあり、そのうちの35種類は悪性です。
しかし、病院を訪れる患者さんの99%が良性で、よくみられる良性のものは、ゼリー状の粘液がたまる「ガングリオン」、脂肪細胞が増殖する「脂肪腫」、疼痛(とうつう)を伴う「神経鞘腫(しょうしゅ)」や「血管腫」などです。
なかでも、比較的40~50代の女性に多くみられるのが「ガングリオン」です。典型的なのは、手首の関節の甲側にできる米粒大からピンポン玉大の腫瘤(しゅりゅう)で、内部にはゼリー状の液体がたまっています。通常は無症状ですが、神経のそばにできるとしびれや痛み、運動麻痺などを起こすこともあります。
捻挫などのケガをきっかけにできる場合もありますが、多くは原因不明で、自然発生的にできます。仕事やスポーツなどで手をよく使う人に多く発生する傾向はあります。
診断では、注射針を刺してゼリー状の内容物を確認します。無症状なら放置してもかまいませんが、痛みがある場合などは注射器で内容物を吸引して排出する治療を行います。これを何回か行なっているうちに治ることもありますが、逆に繰り返し内容物がたまるようなら、まれなケースですが、手術で除去することもあります。
ガングリオンのように良性のしこりの場合、多くは放置しても問題ありません。しかし、なかには悪性のこともあるので注意が必要です。
悪性のしこりは「軟部肉腫」または「サルコーマ」と呼ばれ、発生は全国で年間1300人程度と多くはありませんが、治療が難しく、予後の悪い希少がんに含まれます。
しこりが「大きい」「急に大きくなった」「痛みがある」「患部に熱をもっている」という場合は、悪性の可能性があります。しこりを見つけたら、自己判断をせず、まずは整形外科を受診して、良性であることを確認するのが肝心です。
良性か悪性かの判断は、医師でも困難なことがあります。特に「急に大きくなった」場合には、1カ所の医療機関で良性と診断されても、セカンドオピニオンをとることをおすすめします。
〈まとめ〉
自分で行う対策
悪性の場合は早期発見が重要なので、
しこりを見つけたら、早めに専門医に相談を。
病院で行う治療法
MRI検査や生体検査などで診断を行う。
良性の場合は経過観察、必要に応じて手術で部分切除。
悪性の場合は症状に応じて抗がん剤治療、放射線治療、手術など。
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子