私がお答えします!
半蔵門病院副院長、同院内科・アレルギー・呼吸器内科医長
灰田美知子さん Michiko Haida
東京大学医学部附属病院呼吸器科などを経て現職。日本アレルギー学会認定指導医・評議員。NPO法人 日本アレルギー友の会顧問。講演や執筆などでも活躍
相談
風邪を引くと、2カ月以上咳が治まりません。何かの病気でしょうか? 放っておいてもよいものですか?
答え
咳喘息の可能性があります。放置すると、本格的な喘息になることもあるので、一度、専門医に相談を!
咳喘息とは?
2カ月以上続く咳で、放っておくと
気管支喘息に発展する可能性も!
一度、風邪を引くと、ほかの症状は治まっても、いつまでも咳だけが残る…そんな経験はありませんか? 気になりつつも、放っている人も少なくないようです。
咳は本来、気道に吸い込んでしまった異物や細菌を排除するための生体防衛本能です。咳の原因はさまざまで、その持続期間は原因を探るうえで重要なヒントになります。
3週間程度で治る場合は、風邪などの感染症によるものと思われますが、2カ月以上続く場合には、ほかの病気の可能性があります。例えば、咳喘息、気管支喘息、鼻炎、後鼻漏(こうびろう)、逆流性食道炎、アトピー咳、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など。これらの原因を正しく診断して、治療することが必要です。
まず、咳喘息と気管支喘息の違いはなんでしょう。気管支喘息はヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)がして、呼吸困難を伴います。一方、咳喘息は喘鳴や呼吸困難はなく、咳が唯一の症状です。しかし、治療しないでいると、2~3年のうちに約30%が気管支喘息に移行するといわれているので、軽いうちにしっかり治療することが大切です。
また、長引く咳で意外と多いのが、慢性副鼻腔炎による鼻水や膿(うみ)が喉に回って湿った咳が出る「後鼻漏」。食べたものが食道を逆流して、喉に引っかかって咳が出る「逆流性食道炎」のことも。この場合は胸焼けなどがあります。
咳喘息は、もともとアレルギー体質の人が風邪などをきっかけに発症することが多く、進行すると、タバコ、運動、冷気、飲酒など、ちょっとしたことで咳が出るようになります。特に夜間や早朝に多発し、たんや喘鳴を伴わないのが特徴です。
診断の際は、たんや喘鳴(ぜんめい)の有無、いつどんな咳が出るか、過去の疾患、家族歴、服薬状況などの問診に加え、血液検査やたんの検査、肺機能検査、画像診断、アレルギー検査などを必要に応じて行い、総合的に判断します。初診の診断を間違えると適切な治療がなされず、長期にわたって症状が取れないばかりか、治療そのものが無駄になってしまいます。
咳喘息には、抗菌剤や通常の鎮咳剤(ちんがいざい)は効きません。治療は吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などの、喘息治療薬で行います。処方された薬が効かない場合は、違う病気を疑ったほうがいいでしょう。
自分で気をつけることは、アレルゲンとなるもの(花粉やハウスダストなど)を避け、禁煙やストレスをためない生活を心がけることです。
自分で行う対策
- ●アレルゲンとなる要因(花粉、かびやほこり、ダニなどのハウスダストなど)を除去する。
- ●禁煙。
- ●ストレスをためない。
病院で行う治療法
- ●薬物療法(気管支拡張薬、吸入ステロイド、抗アレルギー薬など)。
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子