教えてDr.!
相談
朝起きたときに手がこわばります。
最近、それがなかなか治らなくなってきました。更年期症状ではないのでしょうか?
答え
関節リウマチやヘバーデン結節の可能性もありますので、一度、医療機関を受診して、検査してみるといいでしょう。
ヘバーデン結節・ブシャール結節
指の関節が腫れて痛んだり、変形する、一般的な痛み止めが効かない手指の病気です。
手の指の関節に痛み、腫れ、変形などが起こる病気で、第一関節に起こるとヘバーデン結節、第二関節だとブシャール結節と呼びます。発症するのは人差し指、中指、薬指、小指の4本がほとんどで、親指に起こることは稀です。
日本では300~350万人が罹患していて、その90%が女性です。原因ははっきりわかっていません。
レントゲンで見ると、関節と関節の間が極端に狭くなっていて、関節内で骨や軟骨がぶつかり合うようになります。すると、骨が変形して骨棘(こつきょく)と呼ばれるトゲができ、これが神経を刺激して痛みます。症状が進むと、指に力が入らない、思うように動かせなくなるなど、日常生活にも影響が出ます。
最初の症状は朝起きたときの手のこわばりです。更年期症状では数分後には解消しますが、長引くようなら一度、医療機関の受診を。
似た症状に関節リウマチなどがありますが、血液検査やレントゲン検査などで、他の病気の可能性が否定されると、この病気と診断されます。しかし根治に導く治療法がないため、「手を極力使わないように」というアドバイス程度の対応しかしてもらえずに悩む患者さんもいます。
この病気の発症には遺伝的な要素もありますが、手を使う環境因子、女性ホルモン(エストロゲン)因子、頸椎の疾患、片頭痛など、多様な因子が複合的に影響して発症するのではないかと考えられています。
解決策は、血流や痛み信号を発信し続けている神経を正常化することが重要です。それには、まずは痛みを取ることが先決。痛みがあるとますます血流が悪化して、悪循環に陥るからです。
痛みを取る方法として、神経ブロック注射やそれぞれの影響因子に応じた治療薬の処方に加えて、私のクリニックでは自分で行う指の神経マッサージを指導しています。これが痛みの軽減にとても役立ちます。
自分で行うこととしては、日常生活の中で手への負担を軽減する工夫をすることです。例えば、スマホは片手での操作ではなく両手を使う。パソコンのキーボードを軽いタッチのものにしたり、手首のあたりにパッドを置いて、指の角度を調整するといったことなど。
また、手を冷やさないために、寝るときに手を締めつけない、ゆったりした手袋をしたり、クリームなどでしっかり保湿することも大切です。いかに進行を遅らせるかが、治療のポイントになります。
まとめ
自分で行う対策
- ●指の神経マッサージ
- ●指への負担を減らす
- ●手を冷やさない
病院で行う治療法
- ●神経ブロック注射
- ●個々の症状に応じた薬物療法
- ●ひどくなると手術療法
【答えてくれた先生】
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数28万人、総再生数は6600万回超。SNS総フォロワー数44万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子