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腰痛は、ストレスなどメンタルの不調が原因でも起こる! それを改善するには?

40代、50代に多い悩みに「腰痛」がありますが、ストレスなどのメンタル的な不調が原因で起こることも。更年期でメンタルの不調が起きやすいOurAge世代にとって気になりますね。そこで、その理由や、対策を脊椎外科専門医の吉原潔先生に伺いました。自分の腰痛がメンタルの不調も関係していると思ったら、実践してみて!

メンタルの不調から、自律神経が乱れたり、痛みに敏感になって起こる「心因性腰痛」

まず、ストレスなどメンタルの不調が原因の腰痛とはどういうものなのかを、吉原潔先生に伺いました。

 

「ストレスやうつなどのメンタルの不調が原因で起こる腰痛を“心因性腰痛”と呼びます。

一般的な腰痛は姿勢や体勢で痛み方に変化があるのに対して、このタイプの心因性腰痛の場合は、どんな姿勢をとっても痛みやすい傾向があります。

また、骨や筋肉に問題がないので、レントゲンやMRIでは異常がなく、原因が特定しにくいというのも特徴。

神経ブロック注射や鎮痛剤があまり効かないという傾向もあります」

 

では、なぜメンタルの不調によって腰痛が起きるのでしょうか?

 

「メンタルの不調が腰痛と結びつくメカニズムはいくつかあります。まず、ストレスや不安感、イライラなどメンタル的な不調があると、自律神経のバランスが乱れて交感神経が優位な状態が続きます。

すると、痛みに敏感になったり、筋肉が緊張しやすくなるので腰痛が起きやすくなるのです。

また、痛みを抑えるドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質は、メンタルの不調があると分泌されにくくなるので、わずかな痛みでも強く感じるようになるため、腰痛も感じやすくなるというのも原因のひとつです(痛覚変調性疼痛)。

 

そのほか、過剰なストレスがあると脳にある前頭葉の一部の、DLPFC(痛みの回路を抑制する指令を出し、ネガティブな感情をコントロールする背外側前頭前野)が誤作動を起こし、痛みがなくても痛みを感じるようになってしまう場合もあります。

 

おもに自律神経のバランスの乱れが原因で起こる場合が多いように思います。特に慢性の腰痛は、心因性の要因も強いことがわかっています。

ストレスフルな生活をしている人や、真面目で几帳面な人、うつなどの精神的疾患がある人は、心因性腰痛が起きやすい傾向があります」

 

 

心因性腰痛は、自律神経のバランスを整えるのが改善のポイント

では、心因性腰痛はどのような方法で改善できるのでしょうか?

 

「整形外科の一般的な治療で使う薬や注射はほぼ効果がありませんが、心理的な問題の原因がなくなったり、環境の改善で、よくなってしまう場合がほとんどです。

それとともに、自分でできることで大事なのが、自律神経を整えることです。交感神経が過剰に優位な状態が続くと痛みを強く感じやすくなるので、副交感神経が優位になる時間を多くつくることです。

 

例えば、ゆっくり入浴をしたり、質のよい睡眠をとったり、深呼吸をしたり、アロマテラピーをするなど、リラックスできる時間をつくって副交感神経を優位にしましょう」

 

吉原先生がおすすめしてくれたのが以下のような方法。

 

<心因性腰痛の改善に効くお風呂の入り方>

「自律神経を整えるには、ゆっくりお風呂につかるのが効果的、お湯の浮力だけでも、筋肉や関節のほか、心や脳の緊張を解きほぐしてくれます。

お湯の適温は38〜40℃。ややぬるめのお湯に10〜15分ほどつかることで副交感神経が優位になり、心と体がゆったり癒されます。

温度が42℃を超えると交感神経が優位になってしまい、寝つきも悪くなるのでおすすめしません。

 

お風呂に好きな香りの精油やバスソルトを入れると気分がやわらぐので、おすすめです。また、お湯につかって軽くストレッチをすると体の緊張もほぐれやすくなります。

 

お風呂に入るのは、寝る1時間前くらいが最適。人間の体は体温が下がるときに眠気を感じるので、お風呂で温まって体が冷めていくときが入眠のチャンス。そのタイミングが入浴からおよそ1時間後だからです。

シャワーですませず入浴の習慣をつけましょう」

 

 

<腰痛を改善するための睡眠のポイント>

「個人差がありますが、成人の場合、健康によい睡眠時間は7時間前後とされているので、この時間はしっかり確保するのが理想的。

また、体内時計を整えるため、毎朝日光を浴びる習慣をつけると、夜に睡眠を誘うホルモン、メラトニンが分泌され、寝つきやすくなります。起床後1時間以内に朝食を食べることも体内時計の調整に欠かせません」

 

 

<腰の痛みを感じにくくするストレスマネジメント>

「ストレスがあるとイライラが怒りになることが多いと思いますが、そうするとさらにストレスがたまるという悪循環に陥ります。

でも、イライラが怒りに変わる前に感情をコントールできれば、余計なストレスがたまりません。そのために、怒りをコントロールする3つのポイントを覚えておきましょう」

 

 

以下がその3つのポイントです。

 

・自分の「〜するべき」を他人に押しつけない

「時間は守るべき」など「〜べき」という考え方は人それぞれ。

遅刻を何分まで許容できるかも人によって異なります。自分の「〜べき」に固執すると、それが裏切られたときに怒りやストレスが生じます。

つまり、自分の「〜べき」を他人に押しつけるのはNGで、許容範囲を広げましょう。

 

・心の中で6秒カウントする

怒りの感情は、湧き上がってから6秒間が最も強く、そのあとは理性が介入して徐々に収まるといわれています。イラッときたら、グッとこらえて心の中で6秒数えましょう。次第に心が落ち着いていきます。

 

・怒りに点数をつける

感じた怒りを10段階で数値化して、これまでに経験した怒りと比較すると、目の前の怒りを客観視でき、怒る必要があるかないかを判断できます。

 

<貧乏ゆすりで自律神経を整える>

「自律神経を整えるのによいのが“貧乏ゆすり”です。

貧乏ゆすりというといいイメージがないかもしれませんが、近年では健康法として医療現場でも注目されています。

貧乏ゆすりはかかとを小刻みに上下させるリズム運動のひとつで、医学的には“ジグリング”といいます。この小刻みのリズムには神経伝達物質のセロトニンの分泌を増やす作用があります。

 

セロトニンには痛みを抑制する作用や、自律神経のバランスを整える作用があるので、分泌が促されると心因性腰痛の改善効果が期待できます。

血流を改善する効果もあるので、デスクワークなどの合間に時々取り入れてみてください」

①股関節と膝の角度が90度になるように腰かけます。

 

②膝から下を前に出しすぎないようにし、一定のリズムを守って、つま先は床につけたままかかとを小刻みに上下させます。かかとは床から2cmほど上げるだけでOK。これを1分繰り返しましょう。

 

上記のような方法を生活に取り入れて、心因性腰痛の改善を。

 

 

【教えていただいた方】

吉原 潔
吉原 潔さん
脊椎外科専門医、スポーツドクター、フィットネストレーナー
公式サイトを見る

医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本医科大学卒業後、同大学整形外科入局。帝京大学医学部附属溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、2017年よりアレックス脊椎クリニック院長。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。トレーナーとしての信条は「ケガをしないトレーニング方法を指導すること」。50歳を過ぎてから筋トレでメタボ体型を脱し、ベストボディコンテストに出場、受賞歴多数。著書に『ドクターズスクワット』(アスコム)など。

 

撮影/藤澤由加 イメージ写真/Shutterstock ヘア&メイク/佐々木  篤 モデル/SOGYON  取材・文/和田美穂

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