Q1 病院に行ったほうがいい腰痛と、セルフケアでOKの腰痛の見分け方とは?
A 発熱や激痛を伴う腰痛はすぐ病院へ
腰痛でも、下半身のしびれや痛みを伴うものや、歩行や排泄の障害を伴う痛みの場合は、整形外科を受診しましょう。
また、痛みで身動きがとれない、安静にしていても痛みが引かない、他人の手助けがないと生活できない、日ごとに痛みが悪化し慢性化している、などといった場合も受診するのが望ましいです。
38〜39℃くらいの高熱とともに激痛がある場合は、細菌性の病気の可能性もあるので、この場合は整形外科より内科の受診を優先してください。
セルフケアで改善することが多いのは、あまりつらさを感じない程度の痛みや、日ごとに痛みが軽くなっている場合、たまに痛む程度の症状の場合です。このような症状であれば、セルフケアをして様子を見てもよいでしょう。
Q2 整体やマッサージなどに行ってもOK?
A よくなるなら問題ありませんが、改善しない場合は整形外科へ
医師でなければ腰痛は治せないとは限りません。
人によっては、整体やマッサージなどでよくなることもあります。整体やマッサージでよくなるなら問題ありません。
ただ、改善しない場合や、極端な痛みや下肢の症状がある場合などは、原因を探るためにも整形外科を受診しましょう。
脊椎外科専門医がいて、通院が苦にならない距離にある整形外科が理想的です。
Q3 更年期が原因で腰痛が起きることはありますか?
A あります。気になる人は婦人科の受診を
更年期に女性ホルモンが減少すると、関節の痛みが出やすくなるので、そのせいで腰痛が起きる場合もあると思います。
更年期が原因の腰痛の場合は、鎮痛剤などを用いても痛みが改善しにくいことが多いです。
気になる人は、婦人科で女性ホルモンの数値を測ってみることで、更年期かどうかがわかります。
更年期と診断された場合は、HRT(ホルモン補充療法)などの治療をすることで、腰痛が改善することもあります。婦人科で相談してみましょう。
Q4 体型と腰痛は関係ありますか?
A あります。痩せていても、太っていても腰痛のリスクが上がります
体型は腰痛と関係があります。
「腰痛診療ガイドライン2019」では、“標準(BMI:18.5 ~25.0 )より低体重あるいは肥満のいずれでも腰痛発症のリスクと弱い相関性が認められ”るとしていて、痩せていても太っていても腰痛になるリスクがあることを示しています。
その理由は、まず痩せていると、栄養状態が悪かったり、筋肉や骨が弱くなっている可能性が考えられるので、筋・筋膜性腰痛(第2回参照)や、腰椎椎体骨折(圧迫骨折)などから腰痛を起こすリスクが高いです。
一方、太りすぎていると、体を動かすのがおっくうになり、運動不足になって筋力や体の柔軟性の低下から腰痛になりやすいのです。
ですから、適正な体重を心がけるのも腰痛予防には欠かせません。一定の筋肉量をキープすることも大事です。
Q5 座っているときに腰痛が起きやすいです。腰に優しい座り方って?
A 骨盤を立てて座ると腰に負担がかかりにくいです
座り方は、椅子に深く腰をかけ、背すじを伸ばして骨盤を立てるのが最も腰への負担が少ない座り方です。
時間が長いときには、背もたれに寄りかかるのはかまいません。ただ、お尻がだんだん下がってきて骨盤が後ろに傾いた状態が続くと、背中が丸まって猫背になって腰痛になりやすくなります。
また、逆に骨盤が前傾した状態が続くと、反り腰になって、これも腰痛を招きます。
骨盤はなるべく真っすぐ立てることを意識しましょう。ソファに座るときも、お尻が沈み込んで背中が丸くなりやすいので、長時間座るのはおすすめしません。
また、床に座る場合、骨盤が最も立ちやすく、腰への負担が少ないのは正座です。
脚を伸ばした長座や、あぐらは背中が丸くなるので腰によくないのでなるべく避けましょう。
膝をくずして座る場合は、背中は丸まりにくいのですが、左右のバランスがくずれるので、時々脚をくずす方向を、左右入れ替えましょう。
長座は背中が丸くなりやすく、腰への負担がかかりやすいのでNG
脚をくずして座るのは、腰への負担は少なめ。時々脚をくずす方向を、左右で入れ替えて
Q6 整形外科での腰痛の治療法とは?
A 鎮痛薬、注射、リハビリで治療するのが一般的です
整形外科では、おもに薬や注射、リハビリで治療をします。
腰痛に用いられる代表的な鎮痛剤は、急性期であれば、非ステロイド性消炎鎮痛薬で、「ロキソニン」や「ボルタレン」などはこれに該当します。
高齢者には、副作用が少ない鎮痛薬「アセトアミノフェン」をよく処方します。これらで効果が出ない場合は、「神経障害性疼痛治療薬」や「弱オピオイド」などの鎮痛剤を併用したり、ビタミン剤などの鎮痛補助剤を同時に処方することもあります。
薬で痛みが改善しない場合は、リハビリを行ったり、痛み止めの注射を打ちます。
リハビリは理学療法士の指導のもとに、弱っている筋肉の筋力強化や姿勢の改善を行います。
注射は、筋肉の中で硬いしこりになっている部分に打つトリガーポイント注射と、痛みを起こしている神経付近に麻酔薬を注射する神経ブロック注射などがあります。
これらで改善が見られないときは手術をすることがありますが、手術が必要になるのは全体の10%程度と意外と少なく、まず薬や注射で治療をして改善が見られないときに検討します。
Q7 寒い時期になると腰痛が起きやすいのはなぜ?
A 体温を上げようとすると筋肉が収縮して硬くなり、血流が悪くなるから
体が寒さや冷えを感じると、筋肉を収縮させて体熱を作り出し、体温を上げようとします。これを熱産生と呼びますが、収縮することで筋肉は硬くなり、血流も悪くなります。
その結果、体のさまざまな部位で痛みが生じやすくなるのです。
体熱の多くは筋肉で作られるので、筋肉量があるほど熱の産生が増し、体温が高くなって冷えを防げます。
運動をして筋肉量を増やすようにしましょう。
また、こまめに水分補給をすると、血流がよくなり、血液中の酸素や栄養素を全身に届けやすくなるのでおすすめです。
そのほか、入浴をするのも血流アップに効果的です。
【教えていただいた方】
医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本医科大学卒業後、同大学整形外科入局。帝京大学医学部附属溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、2017年よりアレックス脊椎クリニック院長。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。トレーナーとしての信条は「ケガをしないトレーニング方法を指導すること」。50歳を過ぎてから筋トレでメタボ体型を脱し、ベストボディコンテストに出場、受賞歴多数。著書に『ドクターズスクワット』(アスコム)など。
撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/佐々木 篤 モデル/SOGYON 取材・文/和田美穂