運動不足でも筋トレのしすぎでも膝下は硬くなる
「体が硬くなっているのは、運動不足の人だけではありません。私は数多くのアスリートのトレーナーも務めてきましたが、筋トレのしすぎで体中が硬くなっている人をたくさん見てきました。トレーニングをやっている人は常に力を入れることには慣れているのですが、力を抜くのがヘタなのです。
特に膝下のふくらはぎや足裏、足指が硬直していることがとても多いです。ここの筋肉を柔軟に保っておかないと、血流やリンパの流れが悪くなって、むくみをはじめ手足の冷え、肩こり、便秘、疲れやすいといった症状が出たり、脳への血流が悪くなるので頭痛や不眠などにもつながります。つまり膝下の筋肉の力みが全身に影響を与えるのです。
スワイショウとは中国語で『腕を放り出す』という意味で、太極拳や気功で行われる準備体操のようなものです。通常は腕を振るだけなのですが、私が考案した『脱力スワイショウ体操』では、脚や足も行います。
普段あまり動かない人も、筋トレやランニングなど運動習慣のある人もぜひ試してほしいのが足の「脱力スワイショウ体操」です。スワイショウ体操は基本的にすべて裸足で行うことを推奨していますが、特にこの足の脱力スワイショウ体操は裸足で行ってください」(鈴木亮司さん)
足を前や左右に放り出すだけで脚や足は脱力する
足を脱力させる方法は簡単。足を片足ずつ前や左右に振るのです。まずは前に向かって、次に左右に足を振ってみましょう。
足を前に振る「脱力スワイショウ体操」
【1】
左足で立ち、右足を少し床から上げます。よろける場合は椅子の背やテーブルなどに手をついて、体を安定させます。
【2】
上げた右足を正面に放り出して、元に戻します。子どもの頃にやった靴飛ばしのように、履いている靴やスリッパなどを放り出す要領です。これを1分ほど繰り返します。
同様に右足で立って、左足を放り出します。これを1分ほど繰り返します。
「簡単そうに見えますが、膝が硬くなっている人は、できない人が多いんですよ。しばらく続けていると、自然と膝から下の力が抜けて、スムーズにできるようになります。足は左右どちらから行ってもかまいません」
足を左右に振る「脱力スワイショウ体操」
【1】
左足で立ち、右足を少し床から上げます。よろける場合は椅子の背やテーブルなどに手をついて、体を安定させます。足を左右に振るので、足が家具にぶつからないように注意してください。
【2】
右足を左斜めに放り出して、元に戻します。今度はボールを蹴るような要領です。これを1分ほど繰り返します。
同様に右足で立ち、左足を右斜め前に放り出します。これを1分ほど繰り返します。
「この体操では、ふくらはぎと同時に、一日中靴を履いて縮こまっていた足裏や足の指を開放して緩める効果があります。
これらを一定のリズムで繰り返すことで、脳がリラックスした状態になり、膝下だけでなく、全身の脱力にもつながります。座りっぱなしで脚がだるくなったときに行ったり、筋トレやランニングなどで脚や足を使ったあとの整理体操に組み込むのもいいでしょう」
【教えていただいた方】
「頑張らない筋トレ『体芯力®』」パーソナルトレーナー、日本体芯力協会会長、認知動作型トレーニング指揮者、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会認定トレーナー。高校卒業後、トレーナーの専門学校入学とともに格闘技を始め、総合格闘技やK-1などで活躍。選手引退後の2010年、トレーナー活動に専念。東洋医学や武術を研究し、体育学の権威である東大名誉教授・小林寛道氏による理論の裏付けを得て、独自の「体芯力」を考案。プロのアスリートから90歳以上の高齢者まで数多くのパーソナルトレーナーを務める。著書に『「脱力」はなぜ体にいいのか』(青春出版社)など多数。
撮影/フルフォード海 取材・文/山村浩子
★鈴木さんのメソッドをもっと詳しく知りたい人は・・
鈴木亮司 著/青春出版社 1,254円