40代、50代から筋肉を増やすために、本当に必要なこと
40代以降の女性にとって、「筋トレしてプロテインを飲めば筋肉が増える」なんて幻想。女性ホルモンの減少や加齢、それまでの生活習慣、体の使い方のクセも蓄積されているので、ひと筋縄ではいきません。
今回の筋肉を増やすプロジェクトでは、自力の筋活では自信のない読者代表の二人が3カ月チャレンジに参加してくれました。「脂肪は落として筋肉を増やしたい」小川正美さん、「細いけどなかなか筋肉が増えない」安川香織さん。
パーソナルトレーナー・姿勢アナリストのKAORUさん、ボディワークプロデューサーのkyoさん、そして食と健康のエキスパート、管理栄養士の麻生れいみさんが、あれこれ秘策を指南。読者二人とも「頑張りすぎずに頑張って」それぞれの成果を見せてくれました。
そこで、総まとめ。
40代、50代女性が筋肉を増やすためのポイントをピックアップします。
題して「40代、50代女子の筋活の掟7」。
ひとつずつ見ていきましょう。
①先に、ほぐす、緩める、リリースする期間を設ける
筋肉をつけたいからと筋肉のバランスが悪い状態のまま筋トレなどを始めても、正しく体を使うことができず、効果が出ないばかりか新たな痛みにつながりかねません。
例えば、首や肩、腰まわり、脚などに痛みがある人はいませんか? その原因は、筋肉や筋膜がカチコチに硬くなっているせいかもしれません。硬くなっていることで姿勢がくずれていったり、体の歪みにつながることも。
痛みはなくても座る時間が長い人、同じ姿勢でいることが多い人、運動不足の人などは、当然ながら筋肉も関節も硬いはず。
40代、50代は、硬いままトレーニングを始めないことです。実際、小川さん、安川さんの場合も、ほぐす・緩めるという宿題からスタートしました。運動と呼べるような運動をしたのはだいぶたってからのことでした。
どこもかしこも硬くなっていて、フォームローラーでリリースするのが痛くて大変だった、固太り系の小川さん。1カ月以上たって、ようやくエクササイズのできる状態になりました。
②体重が減ったことを単純に喜んではいけない
特に痩せたい人にあるあるなのは「筋肉を増やしたい」と言いながらも、どこかで「体重を減らしたい」と考えていること。注目すべきは体重ではなく、筋肉の量であることを忘れずに。
同じ体積の筋肉は脂肪よりもかなり重いので、筋肉がつけば体重は増えます。その分、脂肪を減らすことができればいいのですが、脂肪を減らす目的でダイエットをしても、食物を控えたりすることで筋肉が落ちてしまうことがほとんど。筋肉が落ちると代謝が悪くなり、ますます脂肪がたまりやすくなります。
加えて、タンパク質をある程度食べても、筋肉を落とさないようにするのが精一杯で、筋肉を増やすことはとても難しいものです。
太っている痩せているにかかわらず、まず必要なのは筋肉量の管理。体重だけでなく、体脂肪や筋肉量、骨量など人間の体の組成を計測するための「体組成計」を使うことです。
測定項目はその機器によって違いますが「体脂肪量」と「筋肉量」がわかると便利。わざわざ新たに買いたくないという人は、最低でも、体重と体脂肪率だけ測定することができる体重計なら、そこから筋肉量と脂肪量は自分でもおおまかには算出できます。
脂肪量=体重×体脂肪率
およその筋肉量(正しくは除脂肪体重)=体重―脂肪量
これで管理してももちろんOK。でも、いちいち計算するのが面倒だし、徐脂肪体重は内臓や骨や水分も含まれている値で、正確な筋肉量ではなく、筋肉量のプラスマイナスの目安なので、やはり自動で表示される体組成計が便利だと思います!
最新の体組成計で表示される項目は多岐にわたります。見るべきは体重よりも筋肉量。加えて体脂肪率が下がると「体内年齢」が若くなります。これは小川さんのデータですが、体内年齢が若くなっていることがわかると、モチベーションもアップします!
③ガチ筋トレは必ずしも必要ではない
美容と健康のために筋肉をつけたい女性にとって、本当に必要なのは「使える筋肉」です。「使える」とは、代謝がよくバランスがいい、しなやかな筋肉。よい姿勢をつくる、見た目にきれい、と言い換えても差し支えありません。
40代、50代の女性が強度の高い筋トレや、昔ながらのつらい反復運動で筋肉を増やそうとするのは無理があります。
座りっぱなしで運動もあまりしていない人が、使いすぎていて固まっている外側の筋肉を鍛えるような筋トレを始めたら、さらにカチコチに体を固めてしまい、血流が悪くなる一方。使えない筋肉が増えていきがちです。
まずは、ほぐしたり緩めたりして筋肉を育ちやすくし、ストレッチなどで筋肉をしなやかに伸ばす、そして正しい動かし方で強化する。
それが今回、二人のエクササイズの専門家が教えてくれたことでした。
実際、筋活に取り組んでくれた読者二人がやったのは、インナーマッスル(外側から触れられる筋肉ではなく、深部にある筋肉)を使うようなエクササイズばかりです。
KAORUさん(左)、kyoさん(右)。二人とも40年以上にわたり女性の体と向き合ってきた経歴を持ちます。ダンス系はしなやかな筋肉を育てるのに効果的!
④正しい姿勢、きれいな姿勢は筋肉をつくる
正しい姿勢とは、横から見たときに耳・肩・大転子(太ももの付け根外側の、骨が出っ張っている部分)・膝の中央・くるぶしが一直線に並ぶ位置にくる立ち姿勢のこと。40代、50代では、これが保たれている女性は1割にも満たないでしょう!
姿勢を保つには、抗重力筋がきちんと働いていることが必要。抗重力筋とは、重力に逆らって姿勢を保つために日常生活を送っているだけで働くインナーマッスルのことです。
人は年齢を追うごとに抗重力筋が衰えるのはもちろん、日常動作のクセが蓄積されることによって、正しく働かなくなっていきます。もし、抗重力筋が正しく働いてくれたら、まだ日常的に筋肉が使われるはず。
これを元に戻すための意識づけは、自分の努力次第。今、自分の姿勢がどうなっているかをしっかり再認識。立っているとき、座っているとき、よくしがちな動作のとき…自分の姿勢を見直すことが大事です。
あごを前に出すクセのある安川さん。そのバランスをとろうとすると、姿勢はどうしても反り腰になります。この姿勢のクセを改善するだけで、正しい筋肉がついていくはず!
⑤タンパク質を強化、特に「朝タンパク質」は必須
どんなに筋肉を増やしたくても、材料がなければ増えるはずもありません。材料、それは言うまでもなくタンパク質です。
「私は食事に気を遣っているほうだ」という人でも、食事記録を見せてもらうと、たいていの女性がタンパク質が足りていません。
管理栄養士・麻生さんが主張するように、成人女性は1日60g以上のタンパク質が必要。肉や魚に換算すると300gです。筋肉を増やしたいと思ったらそれ以上。
タンパク質は体内にためておくことができないので、こまめにとる必要があります。もし足りなくなると、自らの筋肉を使って必要な場所にエネルギーを送り込むようにできています。そうするとどんどん筋肉は減っていくばかり。
しかも、1回の食事で消化吸収できるタンパク質は、わずか20g程度。ということは、1食20g×3食でもギリギリの量。朝食を食べない人もいまだに多いのですが、それではタンパク質がまるで足りません!
だから朝食が大事。前夜の食事から時間がたっているがゆえに、朝になったらもうタンパク質が足りずに体内はスカスカ。
ちゃんとした食事でなくても、簡単にとれるタンパク質でいいのです。時間がかからず、手軽に食べることができるタンパク質をとる習慣を!
小川さんも安川さんも、朝食をとる習慣がありませんでした。それでもこの3カ月で、高タンパクヨーグルトや豆乳などで、なんとかタンパク質摂取をクリア。これはある日の小川さんの朝食。
⑥太ることを怖れずに、しっかり食べる
「野菜中心の健康的な食事をしている」という人は、タンパク質不足が疑われます。特に、太らないようにと動物性の脂質やタンパク質を控えている人はなおさらです。
脂質やタンパク質だけでは太りません。太るのは「糖質」を多くとってしまうから。糖質は控えめに、脂質・タンパク質のほかいろいろなものを食べて、さまざまな必要栄養素をとりたいもの。ビタミン・ミネラルがしっかりとれていれば代謝も活発に行われます。
糖質であるご飯・パン・麺などをメインにせず、「おかず食い」な人になりましょう。
管理栄養士・麻生さんが示したように「今日のおかず、何にする?」ではなく「今日のタンパク質何にする?」という考え方に変えることができたら理想的です。
3カ月のうちに、徐々にタンパク質摂取に慣れていった安川さんの食事。彩り豊かな食卓=いろいろな栄養素をとれているということです!
⑦プロテイン・高タンパク食品・サプリも賢く利用
野菜と炭水化物が中心の食生活だった人、もともと少食の人、朝食を食べる習慣のない人などにとっては、タンパク質をどうやってとるかが大問題。今回の筋活にチャレンジした二人もご多分に漏れず、でした。
今はコンビニでもスーパーでも、ナチュラルフードのお店でさえも、タンパク質をとるための便利な食品が勢ぞろい。ベーシックなプロテインはもちろん、プロテインドリンク、プロテインバー、高タンパクヨーグルトまで。
基本はもちろん食事からとることですが、どうしても難しければ、こういった食品を利用して。おやつの習慣がある人は、これをタンパク質に替えるだけで、体の変化が実感できます。
その日一日の食事で、必要なタンパク質がとり切れないとわかったら、プロテインやアミノ酸で補うことも考えて。
朝食に間食に、運動の前後に、そして足りないとわかったときのためにも、好きな高タンパク食品をチェックしておきたいもの。
タンパク質をまめにとって、固まった筋肉をほぐし、歪んだ姿勢を戻して、しなやかな代謝のいい筋肉を育ててみてくださいね。
【教えていただいた方】
1962年生まれ。アプロ主宰。指導歴40年。 “姿勢で人生を変える”をテーマに指導を行う。姿勢に関する分析をホリスティックに行う独自のメソッドは、多くのファッション誌・フィットネス情報誌で紹介されている。自分の姿勢の現在の状態を把握し、ウェルネスコンサルティングが受けられる「姿勢分析」メニューが人気。自身、還暦とは思えないウェルネスな姿勢美は、まさに日々のエクササイズの賜物。近年、スタジオワークのかたわら、後進の指導や著作活動、オンライングループレッスンやイベントを通して、多くの人たちにそのメソッドを発信中。著書に『テニスボールダイエット』(幻冬舎)、『自分で整体ストラップ』(講談社)、『テニスボールでほぐす!のばす!やせる!』(扶桑社)、『クッションピラティス 内ももを締めれば勝手にやせる!』(幻冬舎)など。
1962年生まれ。ボディワークプロデューサー。「b-i STYLE(ビイスタイル)」主宰。幼児体操の指導を経て、大手スポーツクラブの人材育成やプログラム開発に携わる。1997年より整体や解剖学などを学び、独自の骨盤調整メソッド「ペルヴィスワーク」を考案し、2005年よりスタジオ・ヨギーでレッスンを展開。2015年、自律できるからだづくりをテーマに、日本初の骨盤専門スタジオを東京・青山にオープン。基本の骨盤調整レッスンをはじめ、筋膜ストレッチ、美脚・美尻づくり、筋調律、フローダンス、ウォーキング、整顔など、独自のレッスンで女性の美と健康を応援。骨盤や骨盤底筋に特化した著書多数。
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修了。慶應義塾大学SFC研究所 食・フードサイエンス&テクノロジー共同研究機構メンバー。著書は『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『20kgやせた! 糖質オフ入門 最新版』(宝島社)などすでに28冊に及ぶ。ベストセラーも多数。
人物撮影/藤澤由加 取材・文/蓮見則子