歩く速度が遅くなるのは、太ももやお尻など下半身の筋肉の衰えが大きな原因
年齢を重ねるにつれ、歩くスピードが遅くなってきて、若い人と一緒に歩いていると、どんどん遅れてしまったり、青信号の間に横断歩道を渡り切れなくなってきたり。こんな状態は、なぜ起こるのでしょうか?
「加齢とともに歩く速度が遅くなってくる大きな原因は、下半身の筋力低下です。特に、足を上げるときに使われる体幹の腸腰筋や、お尻の大臀筋や中臀筋、前ももの大腿四頭筋などが衰えると歩く速度が遅くやすくなります。加齢とともに、筋肉量は減っていきますが、これらの筋肉は、普段、座りっぱなしであまり歩かないでいることで、ますます衰えやすくなります。
また、歩く姿勢も影響します。普段、膝を曲げてかかとに体重を乗せて歩いている人が多いですが、そうするとどうしても歩く速度は落ちてしまいます。本来は土踏まずにしっかり体重が乗り、足裏のアーチの反発で体幹の腸腰筋を使って足を前に振って、お尻の筋肉を使って体を移動させるとスピーディに歩けますが、これらの筋肉が衰えていると、歩く速度が落ちてしまいます」
歩行速度が遅くても別に問題ないのでは? と思うかもしれませんが、海外のデータで、歩行速度が速い人ほど健康寿命が長い傾向があるという報告があるので、なるべく速く歩けるように維持したいものです。
そこで、澤木さんがおすすめしてくれたのが、以下の3種類の体幹トレーニング。
「以下のような、腸腰筋、大臀筋、中殿筋、大腿四頭筋を鍛えるトレーニングをすることで、徐々に速く歩けるようになっていきます。できるものから、ひとつずつでもいいので、続けてみてください」
<座ってもも上げ>
運動不足の人は、まずはこのトレーニングから始めましょう。座ってももを引き上げる動きで、股関節の奥の腸腰筋を鍛えることができます。

① 椅子に座って、背すじを伸ばし、左右の手で座面を持ち、骨盤を少し前に倒します。

② 片側のももを引き上げます。5cmほど、腰を丸めずに上げられる範囲で上げればOK。これを片側20回。左右とも行いましょう。
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<ヒップアブダクション>
片足で体を支える動きで、歩行のときに重要なお尻上部の中臀筋を鍛えることができます。バランスがとりづらい人は、壁などにつかまって行いましょう。

① 腰幅に足を開き、背すじを真っすぐにして立ち、両手を腰に当てます。そのまま片脚を真横に開いていきます。

② そのまま片脚を真横に開いて2秒キープしたら下ろします。この動きを片側10回。反対側も同様に。できる人は、足を床から浮かしたまま、上げ下ろししましょう。
<スプリットスクワット>
脚を前後に開いてスクワットをすることで、大腿四頭筋、大臀筋のほか、お腹の深部の腹横筋も鍛えられるトレーニング。きつく感じる人は、少ない回数から始めて、慣れてきたら徐々に回数を増やしましょう。

① 足を腰幅に開いて立ち、前後に開きます。前後の目安は歩幅の1.5倍。両手は胸の前で組みます。

② お尻を後ろに引くことを意識しながら、息を吸いながら真下にしゃがみます。このとき、背すじはすねと平行に。次に、前足で床を踏みしめて、息を吐きながら①の体勢に戻ります。これを10回。次に前後の脚を入れ替えて同様に。
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【教えていただいた方】

SAWAKI GYM代表取締役。1991年よりトレーナー活動をスタート。静岡県の整形外科病院で、リハビリ後の患者からトップアスリートまで医学的根拠に基づき指導。その後、専門学校講師を12年、トレーナー団体理事を14年務め、のべ1万人以上を指導。現在はトレーナー活動のほか、講演会やメディアで健康情報を発信。著書は『4週間で姿勢がよくなる! スタスタ歩ける!長寿の体幹トレーニング』(大和書房)など多数。
撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/藤本 希 モデル/山下三輝(SAWAKI GYM) 取材・文/和田美穂


