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老化予防のカギ「サーチュイン(長寿)遺伝子のスイッチ」を押す方法は?

サーチュイン遺伝子の活性化が老化予防のカギ

「サーチュイン遺伝子は細菌から哺乳類まで、多くの生き物に備わっており、老化や寿命の制御に深くかかわっています。そのため別名『長寿遺伝子』と呼ばれています。研究が始まるきっかけになったのが、2000年、マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授のグループによる、酵母のSir2(サーツー)遺伝子の研究からです。この遺伝子が持つまったく新しい機能を高めると寿命が延び、欠損すると短くなることを突き止めたのです。

 

今では7種類のサーチュイン遺伝子が発見されています。しかしながら、この遺伝子は普段はスイッチがオフになっていて、オンにして活性化させる必要があります。その方法として、カロリー制限や運動などが有効だと考えられています。サーチュイン遺伝子を活性化させることで、内臓や脳、運動機能など、さまざまな老化現象が改善されると期待されています」

 

改善が期待できる老化現象

改善が期待できる老化現象

長寿遺伝子は誰もが持っているもの。普段は休んでいるこの遺伝子を活性化させることで、テロメア(下図参照)の短縮を防ぎ、細胞がストレスに強くなり、さまざまな老化を遅らせることができると期待されています

 

●細胞の仕組み

組織 細胞 染色体

私たちの体は細胞からできています。その各細胞にある染色体の中に、遺伝情報が収納されたDNAがあり、その末端をテロメアが保護しています

 

百寿者の長寿遺伝子は21~35歳と同じくらい若かった

「イスラエルの研究グループが行った研究で、健康な21~105歳の45人と、アルツハイマー型認知症の患者24人に、神経の保護に関係する免疫細胞のサーチュイン遺伝子の発現量を測定しました。すると、100~105歳の百寿者の発現量は非常に多く、21~35歳の若者とほぼ同じで、56~82歳の2.2倍ありました。特にアルツハイマー型認知症の人は発現量がとても低く、健康な百寿者との差は8.4倍もあったそうです」。サーチュイン遺伝子の活性化が元気なおばあちゃんになる秘訣に⁉

 

老化の犯人は抗老化ビタミンNADの減少

慶應義塾大学医学部の早野元詞(もとし)先生の研究で、サーチュイン遺伝子を活性化させるためには、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が密接に関係していることがわかっています。

 

「NADは細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギー産生に欠かせない補酵素で、抗老化ビタミンのようなものです。加齢とともに減少し、一般的には80歳を超えると、限りなくゼロに近づくといわれています。その影響が細胞、臓器や筋肉などの機能に及ぶことから、NADの減少をくい止めることで、老化を遅らせることができると考えられています」。実際にマウスの実験ではその報告が多数あり、人を対象とした臨床試験も進められているそうです。

 

column
百寿者にはB型が多い⁉

慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの広瀬信義先生が行った、興味深い調査結果があります。「百寿者には血液型のB型が多い」というものです。東京都の一般人のB型の割合は22.4%なのに対して、百寿者では29.2%でした。その理由として考えられるのは、B型の人の糖鎖が関係していて、これが感染症などの病気を起こしにくくしている可能性があるというものです。

 

また、よくB型の人はマイペースでストレスをためにくい性格といわれていますが、それが影響しているのかも? いずれも、あくまで推測の範囲で、その理由はまだわかっていません。

 

樂木(らくぎ)宏実
樂木(らくぎ)宏実さん
大阪ろうさい病院院長
公式サイトを見る

大阪大学大学院医学系研究科内科学名誉教授。日本老年医学会前理事長、日本高血圧学会前理事長

 

 

イラスト/カケハタリョウ 構成・原文/山村浩子

 

 

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